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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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ギルマスの登場なのじゃ

こんにちは。

今日も一話更新です。

成人の日はいい天気だとよいですね。


「どうしてそんなことになっておるのじゃ?」

「どっかからの入れ知恵で見習いの悪い使い方をし出した奴らがいるのよ。その中心的な奴がジーダルに反感を持ってる奴でね」

 うんざりしたようにセイジェさんが言うのじゃ。それを継ぐようにレグドスが続ける。

「入れ知恵をした野郎は協会から追放された元冒険者で、こいつは明確に協会とジーダルに敵意を持っていやがる。あんとき後腐れなくぶっ殺しとくべきだったな」

 ジーダルが気にする理由は分かったのじゃ。しかしまあ面倒そうな話なのじゃ。


「その人は最初ジーダルさんと競い合うぐらいの冒険者だったんですが、ジーダルさんの階級が文字になる頃から差がついて、なにやらひね曲がってしまったんです」

 メーレさんのカウンターでなにやら話しておった男が少し悲しそうな声色でそう言いながらこちらに来たのじゃ。それに対してセイジェさんは厭そうに顔をしかめたのじゃ。

「そうやって良いライバルだった時代を知ってる人はなんか思うところがあるみたいだけど、知らない私にとってはただの厭らしいクズだわ」

「なるほどのう。わらわも面倒な連中に絡まれぬよう気をつけるのじゃ」

 そう言うとなぜか皆から視線を逸らされたのじゃ。ぬう。

「で、其方は?」


 その男はジュストコールのような上着を着込み、首にはクラヴァット、そして頭には綺麗な巻き毛の鬘をかぶっておるのじゃ。髭も品よく整えられておるの。まずもって身分のある男なのじゃ。年の頃は六十前と言うところであろうかの、この世界ではそこそこなお年なのじゃ。

 なにかを見定めるような目でわらわを見ながらその男は口を開いたのじゃ。

「当支部の支部長、所謂ギルマスのノーヌート=フォルグスです。よろしく頼みますね、新米くん」

 差し出された手を握りわらわも挨拶しておくのじゃ。

「先ほど登録したばかりのミチカ=アーネヴァルトなのじゃ。こちらこそよろしく頼むのじゃ」


「ギルマス自らミチカを見に来たのか? 暇そうだな」

「僕としてはせめてバカどもが見習いに暴力を振るうのだけでも抑制したいと思いましてね、そう言う兆候があったら連絡するように伝達していたんです。そうしたら執務中に連絡が来たので慌てて訓練場に急行したんですが、そこではバカどもの方が一人救命活動中で一人は地面を掘り返す救助活動中、と言う有様で正直僕はどうしたらいいのか分からず途方に暮れることになったんですよ」

 ジーダルのツッコミに大仰に手を広げて応えておるのじゃ。まあ災難じゃったのじゃ。


「一応事情を確認しておきたいわけです」

「うむ、構わぬのじゃ」

「それとジーダルさん、国境付近の豚鬼オーク討伐の報告書にあった祝祷師と言うのは彼女ですね」

「そうだぜ、年齢とか省いてたのは書いてあっても信じねえだろうからな」

 ジーダルが笑みを含んでそう言う。ギルマスも鼻を鳴らして渋々賛意を示したのじゃ。

「百聞は一見に如かずですね。報告書についても少し尋ねたいところです」


「あー、ちょっと待て。こっちの仕事の途中だ」

 レグドスがやり取りに異議を差し挟む。確かに査定の途中だったのじゃ。

「時間はかからねえから先にこっちだ」

「とっとと解体場に戻りたいという顔をしておるし、よいのではないかの?」

「僕も早く執務室に戻りたいのですが、まあいいです」

「なんか俺が我が儘な子供みたいな扱いになってねえか?」

 いやその通りなのじゃ。わらわとギルマスはそっと視線を外して答えの代わりとしたのじゃ。

 っと、思い出したのじゃ。


「思い出したのじゃ。買い取って貰いたいものがあと一つあったのじゃ」

「おう、なんでえ」

 開包しておらぬ包みをそのまま取り出すのじゃ。豚鬼オーク戦の慰労会の時受け取ったわらわの取り分の魔漿石なのじゃ。あとカピタンの角も入っておるのかの。

「説明が面倒そうだったゆえジーダルかオルンがおるときに出そうと思っておったのじゃ。丁度良いのじゃ」

「ああ、確かにそうだな。出所は確かだ。問題ねえ。問題ねえのが問題だがよ」

 ジーダルの言葉に首をひねりながら包みを開けて、レグドスは絶句したのじゃ。見ておったギルマスも固まっておるのじゃ。


「魔漿石が百七個、クズ魔漿石が三十二個、それと豚鬼オーク大尉カピタンの魔漿石と角ですね」

「よく憶えておるものなのじゃ」

 ベルゾが内訳を言うのじゃが、よく憶えておったの。数字が得意なのじゃろうか。

「ジーダルが自分で数えると思いますか?」

「ああ、ベルゾが全部数えて全員分を分けて包んだのじゃな」

「そう言うことです」

 苦労しておるのじゃな。ジーダルだけでなくセイジェさんも目を逸らしておるのじゃ。


「ちょっとした街が滅ぶくらいの軍勢じゃねえか」

 レグドスは復活したのじゃがギルマスは固まったままなのじゃ。さっきの話では報告書を読んでおるはずなのにのう。

「これはちゃんと査定しなきゃなんねーから担当に回して金を支払えるのは明日だな。急ぎで金が入り用ならある程度先払いをしても全く問題ないが」

「ああ、それは全然構わぬのじゃ。明後日の昼前にここで約束しておるゆえその前に来て受け取るのじゃ」


 レグドスはやり取りしながら書類を出してきてわらわに渡してきたのじゃ。査定の依頼と魔漿石の預かりに関する控えでレグドスもなにやら別の書類に書いておるようなのじゃ。

「この書類は良く出来ておるのじゃ。数字が読めて名前だけ書くことが出来れば大体分かるようにしておるのじゃな」

「考えたこともなかったが確かにこれで困ってる奴は見たことねえな。先人の知恵って奴だな。てことで明後日の朝にこの割り符を無くさず持って来いよ」

 肩掛け鞄に大事に入れたように見せつつそのまま収納空間送りなのじゃ。これで無くすことはあり得ぬのじゃ。


「それでよ、この毛皮は状態が非常にいいんで高く買い取れるぜ。ただ、ここまで疵がねえなら多分商業組合の方が喜んで高く買ってくれるんじゃねえかな。よければこっちで引き取りてえがな」

 なかなか正直なのじゃ。どうするかのう。

「商業組合にも行く予定なのじゃがの。うむ、ここで六枚売って残りを持って行くとするのじゃ。値段を聞いてこっちがよければまた持ってくるぞえ」

「おお、ありがてえ。これは即決だ。こっちの受け取りに署名しておいてくれ」

「ふむふむなのじゃ」

 やはり冒険者協会の書類は読み書きが怪しい冒険者に優しく作られておるのじゃな。確かにこれは書式を定めた先達に感心するのじゃ。


「おう、いい取引だった。あと明後日の受け取りを忘れんなよ。じゃあな、ミチカ」

「こちらこそ感謝するのじゃ。度々世話になるかも知れんからよろしく頼むのじゃ」

 レグドスは代金を渡してくれるとそのまま立ち去るのじゃ。会いたければ解体場の方に、と言うのは間違いない事実のようなのじゃ。

「面白い男じゃの」

「もうちょっとちゃんと書類仕事をして、報告と連絡をもうちょっとでいいからしてくれて、あと部下を育てて欲しいものなんですがね」

 お、ギルマスはやっと復活したのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

少しでも楽しんで読んで頂けていたら幸いです。


※魔漿石の数のメモを間違えていたので訂正。

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