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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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ジーダル等との再会なのじゃ

こんにちは。

今日も一話更新です。


少しでも楽しんで読んで頂けるなら幸いです。


 ん、っと。そうじゃった。森林狼の毛皮を入れた袋は<念動>のアシスト付きで持ち上げておったのじゃ。

 脳内で魔法陣を構築し、魔力を流すのじゃ。言葉と魔法陣の構成要素を関連づけることで魔法陣を構築する、魔法名だけで魔法陣をまとめて構築する、この二つが通常の魔法発動なのじゃ。どちらにせよ魔法陣の構成要素を言葉で引き出す構造になっておるのじゃ。

 が、なのじゃ。魔法具の構造なぞを考えれば魔法陣こそが魔法の本質なのじゃ。であれば魔法陣を間違いなく記憶し、そして自力で構築することが出来得るならばそれだけで発動させることが出来る筈なのじゃ。


 脳内の魔法陣のみで発動した<念動>のアシストで袋を持ち上げ買い取りカウンターへと進むのじゃ。

 この脳内発動は魔法陣の描画をかなり訓練した成果なのじゃ。詠唱、というのは魔術の方の用語なのじゃが魔法陣だけであれば祈祷も魔術も区別がないゆえ仮に無詠唱と呼んでおくのじゃ。

 この無詠唱魔法は魔力の消費効率が祈祷に比べて悪いのじゃ。逆説的に祭文には魔法陣との関連づけ以上の意味があるのじゃな。

 おそらくこの無詠唱の修得でマーリィの宿題が完了なのじゃ。


「すまぬのじゃが、買い取りの査定をお願いしたいのじゃ」

「おう、なにを持ってきた」

 年の頃は五十と言ったあたりであろうかの、分厚い身体と太い首に髭面が乗っておるのじゃ。引退した歴戦の冒険者と言った風格なのじゃ。刀瘡の走る頬を笑いの形に歪めて名を名乗りおるのじゃ。

「まず、俺はレグドス。買い取りと解体部門の一応主任だ。見ての通りの引退した元冒険者だから丁寧な言葉遣いは不要だ」

「わらわはミチカなのじゃ。中央の交易商の娘ゆえわらわの言葉遣いは気にせんで欲しいのじゃ。そして解体の主任とはなにをするのじゃ?」

 何となく仲良くしておいた方がいい職員と見たのじゃ。ついでに話も聞いておきたいところなのじゃ。


「自分らで解体できねえ獲物を代わりに解体してやるのさ。手数料は掛かるぜ。解体場は裏の方で冒険者は外を回って専用の入口を使う方が早ええ。こっから行く場合は訓練場の奥の射撃訓練場の更に奥の倉庫から裏庭に出る」

 め、面倒じゃのう。確かに外を回った方が早そうなのじゃ。

「解体場に武器防具の修理改装をする作業場、錬金術の工房と言ったきたねくせえうるせえって施設と倉庫の類が裏庭に面して揃ってらあ」

 まあそう言った施設をまとめるのは合理的ではあるのじゃ。

「俺はどっちかってえと解体場や倉庫にいることが多い。正体不明の魔物やら珍しいものを持ち込んだときは呼び出してくれ。ああそうだ、基本的な解体ができねえなら見習い相手には材料費だけで講習してやることになってるが」


「わらわは調理もするゆえまあ大丈夫なのじゃ。魔鼠程度が教材なのであろ」

 実際は収納空間内で済んでしまうしの。しかしその講習の話は聞いておらぬのじゃ。

「そうだ。んでだがよ、窓口の綺麗なお嬢ちゃんたちは解体やらの汚れ仕事のことはよく説明し忘れんのよ」

 レグドスはわらわの疑問を察して苦笑しながら小声で教えてくれたのじゃ。


「で、持ってきたのは森林狼の毛皮なのじゃ」

「ほう、こいつは立派な毛皮だな。ちょいと拝見するぜ」

 そう言うとわらわが買い取りカウンターへ広げた毛皮を確認しだしたのじゃが、そこに大声で呼びかけられたのじゃ。


「おお、ミチカじゃねーか。もう冒険者登録したのか?」

 ジーダル等なのじゃ。ジーダルは今日は革鎧ではないのじゃの。皮の上着は複雑な紋様が型押しされておるし、銅のボタンと組み紐細工の留め紐がついておる。こじゃれた高級な街着という奴なのじゃろう。

 それでも剣はいておるのが冒険者というものなのじゃ。

「うむ、登録を終えて荷馬車に積んでよいと言われておったので持ってきた森林狼の毛皮を査定して貰っておるところなのじゃ。ジーダルにセイシェさんとベルゾも久しぶりと言うほど間はあいておらぬが再会できてうれしく思うのじゃ」


 セイジェさんは街でよく見るブラウスとスカートに上着、そして季節的に防寒用のコートを着込んだ完全なる街着なのじゃ。裾の刺繍なぞを見るにかなり良いものなのじゃろう。剣を帯びておらぬが、肩から提げておる鞄が細長いのはそこに愛剣二振りが入っておるゆえであろう。

 旅の間は髪を後ろでくくっておったが今はしっかり結い上げておるのが新鮮なのじゃ。

 ただ服装はすっきり清楚な感じなのじゃが本人に色気があるゆえ余り似合ってはおらぬのじゃ。まあ口は出さぬがの。


「うふふ。充分久し振りだわ、ミチカちゃん。あと何か言いたそうなのは分かるわよ」

「むぎゅっ。はなっはなすのじゃ」

 ほっぺたをむにむにされたのじゃ。カンのいい女なのじゃ。

 そしてセイジェさんはちょっと困ったように自分の頬に手を当て微笑んだのじゃ。

「正直、余り似合ってないのは分かってるのよ。なんだけど私も若い頃からずっと冒険者でドレスより鎧って生活だったから服を買う余裕が出来てもよく分かんないのよ」


「明後日、オルン等に革鎧なんぞを扱う店を紹介してもらう予定なのじゃが、その次の日にはわらわたちが同道しておった交易商のエインさんの息子さんのお嫁さんに仕立屋を案内してもらうことになっておるのじゃ」

 関係の説明が長いのじゃ。

「モリエも一緒に行くゆえ、セイジェさんも来るかえ?」

「いいの?」

 セイジェさんはわらわの手を取ってそう問い返すのじゃ。無論、構わぬであろう。むしろ仕立屋にとってはわらわとモリエより良いお客様なのじゃ。

「構わぬであろう」

「と、それよりだ」

 ジーダルが空気も読まず割り込んできたのじゃ。


「いや女の服以上に重要なことは少ないのじゃ」

「うっ、そうかも知れん。じゃなくてよ」

「そして悪りいんだが、こっちは仕事だ。というかミチカはジーダルと知り合いなのか」

 ジーダルの話の腰をさらに折ってレグドスが声をかけてきたのじゃ。

「カウンター前で騒がしくしてすまんかったのじゃ。ほれ、ジーダルも謝っておくのじゃ」

「お、おう、すまねえ。レグドスが表にいんのも珍しいな」


「そりゃミチカを見物しによ」

 どういうことなのじゃ、と首を傾げるわらわの前にレグドスは森林狼の毛皮を広げる。立派な毛皮なのじゃ。

「立派な毛皮だ。立派すぎる。全く疵がねえ、これはまああの水の魔法かなんかでやったのか。それは聞く必要はないが価値が下がる要素は全くねえ」

 収納空間のおかげなのじゃが、まあ問題ないのじゃ。それと訓練場での一幕を見物しておった野次馬の一員じゃったのじゃな。疑問も解消なのじゃ。


「水の魔法? ってもうすでに何かやらかしたのか?」

「なにゆえまず何かやらかす前提なのじゃ。まあちょっと可愛らしい小競り合いを起こしてしまっただけなのじゃ」

「やらかしているではないですか」

 言いがかりをつけてきたジーダルに言い返すとベルゾが肩をすくめて応えたのじゃ。そう言えばベルゾもおったのじゃ。


 ベルゾは影は薄いのじゃが街着は他の二人よりよく似合っておるのじゃ。質の良い長衣を二着重ねた上に更に丈の長い上着を着ておる。そして外套ではのうてショールのような布を巻いて垂らしておるのじゃ。布を贅沢に使った金持ちの商人の道楽息子と言った風情じゃの。その衣裳を着こなしておって違和感があらぬのが他の二人との違いなのじゃ。

 指には目立つように魔漿石の指輪がはまっておるのじゃが、魔術の焦点具なのじゃろう。それで兼業戦士ではなく魔術師のように見えるのじゃが、おそらく重ね着した服の内側に剣を吊しておるのじゃ。


「何とか言う三人組をよ、生活魔法だけで遊んでやるとか言って実際シメてたぜ」

 ニヤリと笑いながらレグドスが続ける。ジーダルは額を押さえ、ベルゾは肩をすくめておるのじゃ。

「未成年の見習いの見習いに手を出す連中は流石にルール違反でもぶちのめしておくしかねえかってんで呼ばれたんだが俺の出番は無しさ。代わりに面白れえものが見れたがよ」


「えっ! レグドスさんやギルマスが対応したんじゃなくてミチカちゃんがやったんですか!」

 驚きの声が思わぬ方からあがったのじゃ。メーレさんなのじゃ。

 ジーダル等との話が気になったのかこちらを窺っておったようなのじゃ。そして考えてみれば訓練場から戻ったわらわと話をしておったゆえ野次馬陣との情報共有がなされる暇がなかったのじゃな。納得なのじゃ。

 しかし、わらわには別に一つの疑問が残ったのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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