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マインキョルト到着! なのじゃ

こんにちは。

本日二話投稿の二話目です(2/2)。


これでとりあえず第三章完となります。

明日から新章にはいるか閑話めいた番外編を書くか悩んでいます。


 翌朝には他の交易商やその護衛等と別れの挨拶を交わす。マインキョルトでは馬車停めに馬車を置いて入城するのではなく馬車のまま入れるのだそうなのじゃ。ゆえに流れ解散というわけなのじゃ。

 またも交易商二組からは紹介状をもらい、そのうちお店に顔を出すと言う約束もするのじゃ。長らく一緒に旅したゆえ無碍にはしにくいのじゃ。

 護衛の冒険者たちとは冒険者協会での再会を約す、会ったらよろしく、程度なのじゃが。


 握手したり手を振ったりして出立すると直ぐにマインキョルトに入るのじゃ。しかし、まだ城市の門ではないのじゃ。

 呆れたことに城壁の外側に建物が建っておるのじゃ。そしてその城外市の端あたりに入城改めの警備の兵の詰め所があるのじゃ。物理的には城外じゃと思うのじゃが入城改めがここで行われる以上そこも城市に含まれておると言うことなのじゃ。

 すごいのう。肥大化する大都会なのじゃ。


 聞いておった通りそのまま馬車で城市内を進むのじゃ。城市門も馬車に乗ったまま通り過ぎる、ただこれは流石に南の門だけだとリーエさんから教えて貰ったのじゃ。

 馬車で進むのじゃが、城市内での馬車運行は通れる街路が定められておるし、交通ルールに相当する決まり事もしっかりしておるそうなのじゃ。

「城市の中で御者をするには資格が要るんだ。御者匠合(ギルド)か市政庁舎で手数料を払って研修受けて試験に合格する必要がある。そう難しくないけどな」

 オルンがそう言いながら首から下げた革紐を引き出し、馬車の意匠の紋章が焼き印された木の札の鑑札を見せてくれたのじゃ。同じ紐に下がっておる真鍮の板が打ち付けられた鑑札が冒険者協会の身分証じゃの。

 なるほど自信を持って御者をするわけなのじゃ。


「城市内で馬車を動かすような仕事もあるし、こういう荷馬車の護衛も御者の鑑札を持ってりゃ優先的に回してもらえるんだ」

 他の城市からマインキョルトの入り口まで馬車で来たものの城市内の御者資格がないと言う人のための雇われ御者も仕事としてあるそうなのじゃ。まあこれは冒険者の仕事ではないのじゃが。

「あ、兄さんのは御者匠合の鑑札だから王都でもそのまま使える。市政庁舎で貰う方が簡単だけど王都で使うにはまた手数料が要るの」

「王都にいく予定はあんまないけどな」

 王都にいく馬車は主要街道を行くゆえ護衛の依頼はほとんどないのじゃそうな。


「身分証明の鑑札以外に免許や許可の鑑札を受ける場合は気にしないといけないわよ。役所で受けるのが王国内で通用して組合や匠合だとその城市内、と言う御者とは逆の鑑札もあるし、王国内で通用する代わりに中央組合に納める登録費が高いこともあるわ」

 そう言うリーエさんに色々聞いてみたのじゃ。普通は見習いに就く十二歳にならねば色々な鑑札は受けられぬのじゃが、冒険者協会が特例で十二歳より前に見習いの鑑札を出すのであればその鑑札を基に他の鑑札も受けれるようになるやも知れぬが前例は聞いたことがあらぬ、と言う結論なのじゃ。

 有益とは言い難い結論なのじゃが、順番的に冒険者協会に行ってから商業組合で間違いはなさそうと言えるので良しとするのじゃ。


 城館という意味での旧ジックキョルトを改装した市政庁舎などの目立った建物について教えて貰いつつ城市内を馬車で揺られるのじゃ。当然馬車が通る街路は石畳なのじゃ。

 ちなみに二つのキョルトを合併するなぞと言ったことが出来るのはジープラント王国の体制が中央集権に向かって整備されておるからなのじゃ。

 ストールベリ王国だけでなく多くの国で領主さまはその領地における小さな王様のようなものなのじゃ。ゆえに合併なぞできようがないのじゃ。

 対してジープラント王国では王国から派遣された役人としての領主さまが城市や領内の行政を司っておるのじゃ。ゆえに制度区分の変更のみで合併ができるわけなのじゃ。


 マインキョルトはその重要性から王族が領主に任命されておるそうなのじゃ。これはマーリィから講義として聞いた記憶があるのじゃ。まあ、わらわが関係することはないじゃろうがの。

 中央集権の最大の利点がそれぞれの領主が編制した領民軍の寄せ集めではなく指揮系統が一貫した国軍を編制できることにあるのもまあもはやわらわには関係ないのじゃ。

 わらわに関係するのはもっと卑近な事柄、そう例えば今日からの宿をどうするか、なぞなのじゃ。


 北に進むにつれ海風に強い石壁や漆喰の塗り壁が目立つようになってくるのじゃ。何となく空気にも潮の香りが混じっておるような気がしてくるの。

 エインさんは護衛は途中の冒険者協会の近くまででよいと言ったのじゃがオルン等は倉庫で荷下ろしを手伝うところまでつき合うと応えたゆえ終点まで皆一緒なのじゃ。

 倉庫はエインさんの商会は船荷も扱っておるゆえ港湾地区にあるそうなのじゃ。


「おー、海なのじゃ! しかし、黒い色をしておるの」

 わらわは馬車の上で立ち上がって叫んだのじゃ。海なのじゃ! 北方の海らしい暗い色の海なのじゃ。

「黒い?」

「南の海はもっと青いらしいわね。わたしも見たことはないけど」

 確かに土地のものにはこの海が海であって色の違いなぞ旅せぬ限りわからぬのじゃ。

「確かこの海は詩的にクローディスメル、黒き人魚の海とか呼ばれておるはずなのじゃ。まあ海を区別する必要のあるものによってなのじゃが」


 見えてきた港には色々な船舶も浮かんでおるのじゃ。初期のキャラック船やキャラベル船に似通った雰囲気の帆船がおそらく西方船やその模倣で造られた船であるのじゃ。コグ船のような船が元からの北方船であろう。マーリィから簡単過ぎる図説で説明されたことがあるのじゃ。

 ここには見えぬがロングシップのような軍船もあるはずなのじゃ。

 当然なのじゃが、大砲が未だないこと、魔法があること、海や空の魔物が存在すること、と言った諸条件によって前世の船と似通ってはおるのじゃがやはり別物なのじゃ。舷側に梯子を組んだような壁がついておったりするのじゃ。


 面白いのじゃ。

 そう思いながら眺めておるうちに終点の倉庫なのじゃ。エインさんは商会に声をかけてから商業組合に報告、そして戻ってくるそうなのじゃ。

 それまでにリーエさんの差配で荷物を下ろすのじゃ。

 潮の香り、波の音、海鳥の声、海の気配を感じつつわらわは己を知っておるゆえ軽い荷物を中心に運ぶのじゃ。双子等は案外筋力があるのじゃ。侮れぬの。


 ここではっと気づき<念動>で重い荷物のサポートなぞを開始なのじゃ。<念動>はゆっくりしておるゆえ細かなものをポイポイ動かすのは手の方が早いのじゃが重いものを支えたりするのには便利なのじゃ。

 すいすい動かすには魔法陣の改良か別の魔法が必要なのじゃろう。<回転>は相当早く回せるゆえ改造が可能なのだと思うのじゃが。


「それも便利な魔法ですね」

「うむ。これは残念ながら生活魔法としては教えておらぬはずなのじゃ。マインキョルトの神殿のことはわからぬゆえしかとは言えぬのじゃがの」

 ガントが<念動>に興味を持っておるのじゃ。

「似た魔術を師匠が使っているところを見たことはありますね。魔法陣はわかりませんが」

 改造の参考になりそうゆえ興味があるのう。ガントの師匠にはそのうち紹介して貰う約束があるゆえ楽しみにしておくのじゃ。


 そうこうしておるうちにエインさんとリーエさんの息子さんが荷物を運ぶための下働きの人を伴ってやってきたのじゃが、そのときには大凡作業は終わっておったのじゃ。息子さんはエインさんによく似ておるのじゃ。

 その息子さんを紹介されたところで、リーエさんから今日は家に泊まっていくよう進められたのじゃ。なんなら住むところが決まるまでおって貰っても良いと言ってくれるのじゃが、断るのも角が立つゆえ一泊だけお言葉に甘えることにしたのじゃ。


 そして戻ってきたエインさんがオルンたちを含めて打ち上げ、わらわの料理ではなくマインキョルトらしい海鮮料理の店で食べようと言ってくれてマインキョルトでの初めての食事となったのじゃ。

 双子等と踊って喜びと感謝を表現したのじゃ。


「明日から始まるミチカちゃんのマインキョルトでの新生活が実り多きものであるよう祈って乾杯」

 料理屋で席につき、最初の挨拶をエインさんがしたのじゃが旅の慰労ではなくわらわの明日からを祈ってくれたのじゃ。

「ミチカの行く道に幸運があるよう」

「法と智慧がその道を照らしますよう」

「ミチカ、いぇー!」

「やーやー」

 オルン等もそれに合わせ、ええい双子等が果汁入りの杯を当ててくるのじゃ。

「感謝するのじゃ!」


 こうしてわらわのマインキョルトでの生活は始まったのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。


正直、孤児院から始まってマインキョルトで冒険者になる。というこれまでの部分が当初の目算では5,6話程度の序章だったのですがね。恐ろしく長くなりました。深く反省。

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