旅の終わりも近いのじゃ
こんにちは。
こちら本日二話目です(2/2)。
翌日の旅は街道の往来の多さに驚く程度で過ぎるのじゃ。街道の横を流れる川で貨物を乗せた平底船が行き来しておるのも昨日最初に見た折りは驚いたのじゃがもう驚きはないのじゃ。
「ゴンゼイキョルトまでの護衛とマインキョルトまでの護衛でほとんど依頼料は変わらないからな」
「無駄飯ぐらい、なぞという目では見ておらぬのじゃ」
「見てるじゃねーか」
暇なので御者をしておるオルンをからかうくらいしかすることはないのじゃ。
「オルンくんは御者をしてくれるからわたしは楽が出来て助かるわー」
「兄さんは変なとこだけ小器用」
「マインキョルトはダンジョンがあるわけじゃないからな。駆け出しの冒険者は何でも屋みたいなもんだ。やれることは多い方がいいのさ」
肩をすくめてオルンはそう応える。なるほどのう。わらわも駆け出し冒険者になる身としては為になる話なのじゃ。
頷くわらわをオルンがジト目で見ておるのじゃ。
「ミチカはそういう心配はいらねえだろ。あっても料理だけで大丈夫だ。ああ、今回の護衛はミチカのおかげで食事がすっげーよかったんで俺たちが得をしたのは間違いないな」
「あたしは料理の勉強ができてうれしい」
「その分、マインキョルトで何ぞあったら助けてもらおうと思っておるからの」
「ミチカが何か困ってるって言う想像ができない」
「だがミチカに俺たちが困らされてるのは想像できるからな。覚悟はしておくさ」
一応恩を着せておくわらわにオルンが笑いながら応える。まあ本当に恩を着ねばならぬのはわらわに夕食を作らせておるエインさんと商人たち相手なのじゃがの。
今日の夕食は旅の締めくくりゆえ調理代を支払ってでも作らせてよかったと思ってもらえるよう少しはがんばるかの。
「しかし、本当にマインキョルトと目と鼻の先なのじゃな」
本日の宿場町からは天気が良ければ遠くマインキョルトの城壁が見えると聞いてちょっと呆れたのじゃ。一食食べるためだけに宿泊を選んだようなものなのじゃ。
「ああ、マインキョルトは莫迦みたいに広いからな。城門が閉まるのに間に合っても交易商の店は大体北の方にあるから相当に時間がかかるぞ」
元々はマインキョルトから少し南の川沿いにジックキョルトと言う城市があったのじゃが、海洋交易の拡大と共に発展し続けるマインキョルトに飲み込まれたそうなのじゃ。ここから見えるマインキョルトの南端はかつてのジックキョルトの南側と言うことなのじゃ。
「ジッケ川を使った水運が便利だから川沿いは発展しやすいのよ。何年か後にはこの町もマインキョルトの一部になってるかも知れないわね」
とはリーエさんの談なのじゃ。昨日の段階で荷馬車を川船に積んで川を下れば日程は短縮できうるのじゃが人ならともかく荷馬車分の運賃を考えると宿泊費の方が安いそうなのじゃ。
色々あるものじゃな。疑問も解消されたゆえすっきりとした気分で調理に取りかかるのじゃ。
お読みいただきありがとうございました。
今日から仕事始めの方も多かったと思いますが、まだまだ寒い日が続きますのでお体に気を付けてお過ごしくださいませ。