汝は人狼なりや? なのじゃ
こんにちは。
本日も二話更新予定です。こちらは一話目(1/2)。
二話目は21時更新予定です。
※人狼のリプレイ要素はありません。
わらわは完全に満足モードなのじゃがまあ最後の酒肴の準備なのじゃ。
と思い鶏のリバーを臭み抜きに漬けておいた牛乳から取り出し水洗いしたところで気づいたのじゃ。フードプロセッサーなしでリバーのパテなぞ作ってられぬのじゃ。面倒すぎるのじゃ。
<回転>で、と考えたのじゃがやはり出来ることと出来ないことがあるのじゃ。<回転>で回す用の刃物なぞを特注せねばなるまいの。
ハツも残っておるゆえハツとリバーをショウガと共に煮ただけのものを出すのじゃ。手抜きなのじゃが、<経時>でしっかり味はしみさせておるゆえ充分なのじゃ。
まあわらわが満足モードであるゆえでもあるのじゃがの。
今日の食後も皆で遊ぶのじゃ。皆気がゆるんでおるようなのじゃ。急げば明日の夜にはマインキョルトに着く、余裕を見てももう一泊だけと言う状況ゆえ仕方ないと言えば仕方ないのじゃ。
遊戯盤を準備しようとするガントに呼びかけるのじゃ。
「今日はわらわの知っておるゲームをせぬか」
「いいですよ。どんなゲームです?」
「ふむ、悪い人狼に狙われた村のゲームなのじゃ」
そう、前世の名作ゲームがここでも通用するか検証第一弾は『汝は人狼なりや?』、いわゆる人狼ゲームなのじゃ。
準備するのが役割を割り振るカードなり駒なりだけで済むのがよいところなのじゃ。ただ今回は薄い木の板に手順なぞを書いたものも用意しておいたのじゃ。
チェスタイプの対戦ゲームではないコミュニケーションゲームもいけるかどうかも知っておきたいのじゃ。
「うわー、マーセが人狼だったなんてー」
「サーデが最初に殺されて、許さない仇討ちだーとか言ってたのが嘘だったとは。兄として不覚」
「ふふふ、うそはおんなのたしなみ。セイジェからおそわったー」
うむ、盛り上がっておるのじゃ。他の護衛パーティからも人数を加えて何回かメンバーチェンジしながらやっておったのじゃが、もう他のものも司会できるであろうから二卓立てるのじゃ。
酒を飲んでからやってきた交易商の面々も興味深そうに見ておるしの。
悪い人狼、狩人、占い師、村人、そして司会役のシンプルなルールでやっておるのじゃ。人狼に悪い、を付けたのはこの世界には良い人狼がおる可能性を加味したゆえなのじゃ。
「例えばこの役割を割り振るカードをセットで作って遊戯のやり方を書いた板と一緒に売れば売れると思うかの?」
処刑されてしまいゲームから退場したエインさんに尋ねてみたのじゃ。
「ふむ、魔道具工房を押さえると言ってたがのう、ああ言うところは鍛冶や細工の工房と提携しているんだよ。道具としての部分が必要なことも多いのでな」
ゲームでやられたって感じの顔から一瞬で真面目な商人モードになって答え始めるのじゃ。目が真剣なのじゃ。
「なので作るのは木工細工の工房などを使っていける。初動で売り抜けるためにはゲームの周知と販売を間を置かずしかし広めることが必要だな」
いけるかどうかではなく、既にどう売るかの段階に入っておるようゆえほっておいて後でお任せすることにするのじゃ。
「みんなでわいわい遊ぶのがいいな、これ」
「戦略性もあるね。そして商人さんたちはホントに嘘が読めない……」
うむ、概ね好評なのじゃ。簡単な木版程度までしか印刷技術があらぬゆえ印刷すべきものが多いゲームは再現できぬのじゃが、その範囲で出来そうな名作ゲームは何があったかの。感想を聞いたりプレイを眺めてみたりしながらそんなことを思っておったらエインさんと他二名の商人さんたちがやってきたのじゃ。
「ミチカちゃん、ちょっといいかな」
「うむ、どうしたのじゃ」
「明日は急げば夜にマインキョルトに入れるが無理をするまでもないと思ってなあ」
なるほどなのじゃ。何を言いたいかは大凡わかったのじゃ。
「用件は明日の夕食という訳なのじゃな」
「まあそういうわけだ」
苦笑混じり返すとエインさんもにやりと笑って返してくるのじゃ。
「前の慰労会のような感じで雑に宴会盛りをした料理でよいならやってもよいのじゃ」
「ああ、私たちの食事は気を使って作ってくれてたことはよくわかるよ。ありがとう」
まあこの苦労をわかってくれておるならよいのじゃ。
「護衛たちも一緒にぱーっとやって翌日朝からマインキョルトへ入りましょう」
「了承したのじゃ。任せておくがよいのじゃ」
護衛たちも腕を上げて喜んでおる。まあ断る気はなかったゆえ構わぬがはしゃぎ過ぎなのじゃ。
双子等を中心になぜか始まった喜びのダンスの輪の中にモリエを探して呼びかけるのじゃ。
「モリエー、唐揚げなぞは結構モリエに任せるのじゃー」
「まかせてー」
うむ、モリエの手を確保しておけばあとは大丈夫なのじゃ。
お読みいただきありがとうございました。