組立ケーキなのじゃ
こんにちは。
今日で三賀日も終わりですね。帰省などで移動なさる方はお気をつけてよい旅を。
ありがたい感想を頂き今後の展開などに悩むところがあります。
明日分は半分くらい書いてあるため代わり映えしないですが色々考えてみようと思います。
こちら本日二話目です(2/2)。
折角の柔らかいパンゆえこれをデザートに使うのじゃ。
スポンジ代わりじゃの。本当のスポンジケーキの土台とは比べものにはならぬのじゃが、酵母パンが最近入ってきた舶来品だという土地でそんなケーキを食べたことがあるものなぞおらぬゆえ問題ないのじゃ。パンの柔らかい中身を取り出して角切りに、ガワの部分はちぎって牛乳と蜂蜜を混ぜた液に浸して柔らかく、っと。
干した果実は市場で結構な種類が手に入っておるのじゃ。そのわらわのおやつ用コレクションから干しぶどう、干しイチジク、干しアンズを刻んで砂糖を入れた葡萄酒に浸して<経時>なのじゃ。
ジャムでないのが珍しかったゆえあがなっておったスモモの蜂蜜漬けと金柑の蜂蜜漬けから身を取り出し細かく刻むのじゃ。金柑の方は種を外しての。
クルミもおやつ用に確保しておったものがあるゆえこれを砕いてパンの中身と混ぜて、ドライフルーツを取り出した砂糖入り葡萄酒をかけて更に混ぜるのじゃ。
クリームをゆるめにとかためにの二種類つくるのじゃ。<回転>で混ぜ棒を回すハンドミキサー状態ゆえ気楽なものなのじゃ。
当たり前なのじゃがケーキ型の類はないのじゃ。適当な小ぶりの鍋を<洗浄>して使うとするのじゃ。
「ここまでの準備はわらわのを見ながら一緒にやってもらったのじゃが、大丈夫かえ」
モリエたちに確認をとるのじゃ。
「うん、大丈夫。その混ぜる魔法はうらやましいね」
「干したくだもの美味しかったー」
「蜂蜜漬けもー」
「つまみ食いは真似せんでもよいのじゃ。ここからはわらわが仕上げるのを見ておくのじゃ。金属のヘラはわらわの手持ちしかないしの」
小ぶりな鍋に薄くバターを塗り、パンの中身とクルミ、ゆるめのクリーム、ドライフルーツと蜂蜜漬けと言う順番で入れ、その上からまたパン、クリーム、フルーツなのじゃ。パンの隙間にクリームを流し込むように詰めていくのじゃ。ドライフルーツと蜂蜜漬けはバランスよくの。数段繰り返して鍋に詰めた最後はパンのガワを蜂蜜牛乳につけておった奴を敷き詰めて底面にするのじゃ。
ちょっとばかり<経時>をしての。うむ、ひっくり返して鍋から外すと火を使わぬケーキっぽいものになったのじゃ。
金属のヘラでかためのクリームを塗っていき真っ白に仕上がるとケーキっぽさも高まるのじゃ。デコレーション用のクリームを準備して置くのじゃったな。絞り袋の口金はチュロスの時の奴でよいのじゃから単純にうっかりなのじゃ。
スモモの蜂蜜漬けを今度は刻むのではなく形よく切ってケーキ上面に丸く並べ、真ん中には多少残っておったドライフルーツを散らしてデコレーションと言うことにするのじゃ。
「よし、簡単ケーキの出来上がりなのじゃ。これは商人さんたちには一旦このまま見せてきて、そして切り分けて給仕するのじゃ」
「了解ー」
「味見も早くー」
食べたことがなくとも美味しそうなことはよくわかるらしく双子等はうずうずしておるのじゃ。まあわらわもなのじゃが。
「モリエと其方等が準備しておる分を今から作るのじゃ。護衛には最初から切り分けて出すゆえ残った分がわらわたちの取り分なのじゃ」
構造的には不安定な適当ケーキゆえ切るのは慎重かつ果断にやらねばならぬのじゃ。その場で切り分けてサーブするような演出は楽しいのじゃが失敗の元ゆえ今回はパスなのじゃ。
うむ、断面もよいのじゃ。クリームなしで溶かしバターをつかってぎゅっとスポンジ代わりのパンを詰めたバージョンも浮かんでおったのじゃがあくまでパンであることを考えてクリームたっぷりにしたのがよい効果を産んでおるのじゃ。
さて試食なのじゃ。なのじゃが。
「其方等何をやっておるのじゃ」
双子等が不思議なダンスを踊っておるのじゃ。
「カンタンケーキ美味しいのダンスだよー」
「ミチカちゃんとモリエもおどろー」
「お、おぅ。なのじゃ」
くるくると踊っては簡単ケーキを食べるのじゃが、踊り出すほど美味しい、のかのう。いや踊り出すほど美味しいのじゃ。そういうことにしておくのじゃ。
今度はちゃんと生地から用意してケーキを焼くのじゃ。
お読みいただきありがとうございました。