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鶏肉を調理するのじゃ

こんにちは。

熊本で地震がありましたね。皆様はご無事でしょうか。

現地の方々にお見舞い申し上げます。


本日も二話更新予定です。こちらは一話目(1/2)。

二話目は21時更新予定です。


 翌日の旅は全く大過なく過ぎたのじゃ。石造りのアーチ橋なぞと言ったこの世界では先端技術の結晶となる建造物を観れたのはよいことなのじゃが、本当にただの観光なのじゃ。


 夕には最後の饗応なのじゃが前日カツを揚げたため余りがっつり作る気がしないのじゃ。

 と思ったらなのじゃ、もうマインキョルトにほど近いこの宿場では船乗りのパン、そう酵母パンがあったのじゃ! まずはつまみ食い、もとい味見なのじゃ。

 や、柔らかいのじゃ。小麦の質は余りよくないのじゃが、パンの甘みに涙が出そうなのじゃ。パンが柔らかく、膨らんでおるだけでこんなに幸せだとは思いもせんかったのじゃ。マインキョルトでは絶対パン種を入手せねばなのじゃ。


 よし、やる気が出たのじゃ。とは言ってもパンで泣きそうになるほどの気持ちは余人と共有できぬ気がするゆえそこは抑えて鶏肉でも調理していくのじゃ。

 まずはモリエと一緒に大量の鶏の解体なのじゃ。一人なら収納空間で瞬殺なのじゃが仕方ないのじゃ。

 リバーは後で使うゆえ血合いを除いて臭み抜きに牛乳に漬ける。そしてガラを野菜やハーブと一緒にじっくり煮込むのじゃ。


 鶏ガラスープを煮込みながら他の準備を進めるのじゃ。

 湯を沸かして塩を入れ、それを準備した小麦粉に注ぐのじゃ。

「まずはヘラで混ぜての、触れるぐらいになったら手で捏ねるのじゃ」

 これはモリエと双子等にも一緒にやってもらうのじゃ。こねこねと生地を無心に捏ね、一旦棒状にしたのち端からちぎって丸くしていく。出来上がった小球状の生地に打ち粉をまぶしておいていくのじゃ。

「おもしろいねー」

「これなにー」

 粘土細工をする子供めいた絵面なのじゃが双子等も熱心にやってくれておるのじゃ。

「これはまだ完成ではないのじゃ。どうなるのかはお楽しみ、と言うやつなのじゃ。<経時>を使ってもよいのじゃが四半刻程度ゆえそのまま寝かせておくのじゃ」

「了解ー」

 ちゃんと頼んだ通り同じくらいの大きさの小球になっておるの。よしよし、なのじゃ。


 では生地を寝かしておる間にガラや内臓を切り分けた後置いておいた鶏肉にかかるのじゃ。まずは<経時>で熟成具合をちょうどよく調整するのじゃ。そして鶏料理をいくつか作る予定ゆえメインに使う胸肉を大きく切り分け、蒸し鶏にするもも肉も取り分け、残った部分を叩いて鶏ミンチにするのじゃ。


 鶏ミンチに刻んだ野菜とハーブ、塩を混ぜて練り鶏の餡の出来上がりなのじゃ。

「前に焼き干しでとったスープにそんなのを丸めて使ってたよね」

「今回もスープに使うのじゃがあれとはまた別の調理法になるのじゃ」

 吸い物風スープに鶏のがんを使ったことをモリエはきちんと覚えておるようなのじゃ。あの吸い物風スープも悪くなかったゆえまた作るのじゃ。焼き干しは買っておいたしの。


「さっき丸めた生地を使うのじゃ」

「どんな風な使い方なのか想像もつかないよ」

 生地で餡を包むのじゃよ。そう、餃子なのじゃ。ピエロギやラビオリも似たようなものと考えると前世での餃子の分布はユーラシア全体に広がっておるのじゃが今生では食べた記憶がないゆえ少なくともこのあたりの地方では珍しい食べ方になるはずなのじゃ。


 今回は鶏ガラでとったスープに入れて水餃子にする予定なのじゃ。焼いたり揚げたりもよいのじゃが今回は他の鶏料理との兼ね合いじゃの。餃子の受けがよければ餃子パーティという手もあるのじゃがの。

 さて、寝かせた生地で皮作りなのじゃ。

 作業台に打ち粉を振って小球を一つずつ麺棒で丸く延ばしていくのじゃ。麺棒は四本もなかったゆえに丸い棒を探してきておるのじゃ。

「薄くし過ぎて穴をほがさぬようにの。あと数は余裕を見てあるのじゃが、皮の使い道は多いゆえとっておくのじゃ」

「まかせてー」

 うむ、どんどん餃子の皮が出来上がってゆくのじゃ。人力があることは正義なのじゃ。


「で、このように餡を乗せて包むのじゃ。生地を単純に広げて四角く切り分けても構わぬのじゃが、わらわは丸い皮をこうやって襞をつけながら包む方が好きなのじゃ」

 実演しながら説明するのじゃ。これもモリエだけでなく双子等にもやってもらうのじゃ。

「おもしろーい」

「やるよー」

「これを茹でるゆえ、口が開くとタネが外にこぼれ出るのじゃ。しっかり閉じるのじゃぞ。指を濡らす水も用意してあるからの」

 モリエは真剣な表情、双子等は面白そうな顔でどんどん餃子を作っていく。わらわも負けてはおられぬのじゃ。


 直ぐにでも焼いて食べたいのじゃが、茹で時間を考えて先に蒸し鶏とソースを作るのじゃ。マインキョルトでは蒸し器を作らねばの。

 鍋に土台の器とザルを置いた簡易蒸し器を使って蒸すのじゃ。ソースはあっさり目、と言うか今までに何度か作ったサラダ用のドレッシングでよいのじゃ。

 サラダの上にほぐした蒸し鶏を置いて、ドレッシングをかけるだけの簡単料理なのじゃ。


 蒸しておる間に水餃子も茹ではじめ、メインの鶏胸肉のポワレ風も作りはじめるのじゃ。鶏肉には塩をもみ込み、少し小麦粉をまぶして準備するのじゃ。モリエに説明しながら調理を始めるとするのじゃ。

「油をさっとひいてつぶしたにんにくと刻んだタマネギも放り込むのじゃ。にんにくとタマネギは香りが立ったら取り出してハーブと一緒に肉を入れるのじゃ」

 フライ返しはないゆえ木のヘラで肉を押さえつけるのじゃ。

「肉を上からヘラで押さえてぱりっと焼くのがコツなのじゃ。そして肉からも脂が出るゆえここで葡萄酒を少々と味の調整にちょっとだけ鶏ガラスープを入れるのじゃ」

 水餃子に使うスープなのじゃがちょうどよいので使っておくのじゃ。

「量は?」

「カンなのじゃ。この脂の混じったソースをじゃな、こう匙ですくって鶏肉に流しかけるのじゃ。焼き色がつくまでしっかりやるのじゃ。ついたら蓋をして火を遠めにしてしばし蒸し焼きにするのじゃ」


 蒸し焼きにしておる間に皿や他の料理の準備を済ませるのじゃ。水餃子のスープをちょいと味見なのじゃ。

 うむ、美味なのじゃ。皮はいい茹で具合でつるりと食べれるのじゃ。タネの鶏肉の餡は刻んで入れた野菜類の食感も上々でスープと絡んで鶏の旨さがよく出ておるのじゃ。

「これ、すっごいすきー。ミチカ最高だよ!」

 サーデの食いつきが過去最高なのじゃ。

「ちょっと熱くてびっくりした。でも確かに美味しいね」

 マーセはサーデほどではない様子じゃな。そして真剣な顔で水餃子の椀を見ていたモリエが顔を上げたのじゃ。

「これって中身は」

「うむ、タネは別に鶏肉でのうても構わぬのじゃ。あとスープに入れる以外にも焼いたり揚げたりしても美味しいのじゃ」

「そうだよね」

 モリエはいろいろ考えておるようなのじゃ。


 双子等に水餃子のスープと蒸し鶏のサラダを順番に給仕してもらい、ポワレ風の方を完成させるのじゃ。

 鶏肉を取り出して皿に置き、残ったソースに刻んだタマネギを戻しバターを少し入れて煮詰めるのじゃ。

「さっきの量なのじゃが、この完成するソースの味のイメージ次第なのじゃ。今回は鶏の旨みを前面に押し出すことにしたゆえ鶏ガラのスープを入れたのじゃが甘いソースや酸っぱいソースの時はそれに合わせるのじゃ」

「それはまた別に作って見せて欲しいなあ」

「ふむ、任せるのじゃ」

 そんなことを言いつつソースの味を見ると鶏の脂の味が良く出ておるのじゃ。炒めたタマネギの食感もいいアクセントになるはずなのじゃ。

 問題なしと言うことで皿の鶏肉にソースをかけて出来上がりなのじゃ。


「では三つか四つずつまとめて調理するのじゃ。ソースの仕上げもまとめてするゆえそのつもりで頼むのじゃ」

「うん、がんばるよー」

 さっき出来上がった試作はスープとサラダを置いて帰ってきたマーセに切り分けてもらい、わらわたちの試食に供されたのじゃ。うむ、いい焼け具合なのじゃ。

「あたしはこういう鶏なら鶏って感じの料理のが好きかなー」

 マーセはこちらがお好みのようなのじゃ。双子でも好みが微妙に違うものなのじゃ。


 ポワレした鶏、蒸し鶏のサラダ、鶏肉の水餃子のスープ、と調理法を変えた鶏三昧メニューであったゆえ好みの違いがあった方が楽しめようと言うものなのじゃ。うむ、何というか今回は作って満足なのじゃ。

 いやまだデザートがあったのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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