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雪の椿なのじゃ

こんにちは!

大晦日ですがいつものように二話投稿予定です。

こちらは一話目(1/2)。

二話目は21時更新予定です。


 わらわたちの賄いのメニューは当然出したものとほぼ同じなのじゃ。モリエが不思議そうな顔で麩を食べておる。まあ不思議な食べ物であるのじゃ。どれをどう使うかいろいろ試したゆえ鱒と岩魚の焼き干しの茹でたものと炙ったものが結構あるのじゃが、双子はそれにアイオリソースをつけて食べるのがお気に入りのようなのじゃ。どれ、わらわも。うむ、よい味なのじゃ。


「焼き干しは重とうもないし、明日立つ前に時間があれば自分用に買っていくかのう」

「あ、おやつ用にあたしも買おうかな。ソースが美味しいけどなくても充分美味しいし」

 モリエの言葉に双子も炙った岩魚の焼き干しをかじりながら頷く。アイオリソースに関しては卵黄を使っておるのを見ておるゆえおやつ用に自作するのは自重するようなのじゃ。


 マインキョルトでバニラが入手できたらよいのじゃがの。手に入らなんだら南方へバニラ探しの旅に出るのを将来の目標にするのもよいのじゃ。

 いやさ、クレーム・アングレーズ、所謂カスタードソースじゃな、これが作れるとデザートの幅が広がるのじゃ。

 アイオリソースに卵黄を使ったゆえ、残された卵白に砂糖を加えつつ固めのメレンゲを作る。で、丸く取ったメレンゲを沸騰前の温度で調整したお湯で茹でて固める。これをクレーム・アングレーズを流した皿の上に取ればウ・ア・ラ・ネージュと言うデザートなのじゃ。


 ないものは仕方ないゆえ今回はクレーム・シャンティイを土台として少し置き、茹でたメレンゲを乗せる。白の上に白で面白味がないのじゃ。

 ウ・ア・ラ・ネージュであればカラメルをかけたりするのじゃが今回は色味を足すために赤スグリのジャムをゆるめて作ったソースを使うのじゃ。市場でジャムを売っておる人がおって荷物持ちについて来ておった双子が試食で捕まったゆえ幾つかあがなったうちの一つなのじゃ。

 町や村の普通の人が煮たジャムゆえ使ってあるのは砂糖ではなく蜂蜜なのじゃが余りくどさを感じぬゆえかなり上手に煮てあるのじゃ。それに鮮やかな赤の発色がよいのじゃ。


「この白い雪玉を置いたような状態で持って行っての、このように客の前でこの赤いソースをかけるのじゃ」

 自分たち用に取ってある分で実演してみせる。赤いソースが白地に映えるのじゃ。

「このデザートの名前は、そうじゃの。其方等の故郷にあやかって雪の椿とするのじゃ」

 雪の中で赤い椿がきれいだと以前言っておったのじゃ。

 するとモリエがくすくすと笑ったのじゃ。なにゆえかの。

「あたしたちのパーティの名前と一緒だよ。でも、素敵……」

 モリエはキラキラした目で雪の椿を見ておる。うむ、それだけでもう満足なのじゃ。

 しかし冒険者パーティには名前なぞがあるのじゃな。雪の椿とはなかなか風情のある名を付けるものなのじゃ。

 機会があればジーダルらなぞのも聞いておくのじゃ。


「オルンたちや護衛どもにはソースをかけてから持って行って構わぬのじゃ」

「うん、めんどくさいしねー」

「兄ちゃんたち食べ過ぎー。このデザートはあたしたちが代わりに食べてあげてもいいくらい」

 うむ。うどん風パスタを各自二度おかわりしておるので護衛チーム担当の給仕をしておった双子の好感度が下がっておるようなのじゃ。


 ちなみになのじゃがわらわの考える普通の細長いパスタはここいらでは案外珍しいもののようなのじゃ。考えてみればわらわも孤児院で食べたのは出来の悪い四角いパスタやスイトンみたいな丸く捏ねて潰したようなものだけだったのじゃ。

 つまり乾麺で手に入るのはラザーニャっぽい四角いものか、それを丸めたようなものぐらいと言うことなのじゃ。輸入品を調べてみる必要がありそうなのじゃ。


 下げられてきた食器類はきれいに空になっておる。そしてモリエたちが聞いてきた感想も大好評なのじゃ。

 商人たちの方にだけ準備しておった軽い酒肴を送り出して、最後に一応わらわも挨拶して今日のお食事会完了なのじゃ。絶賛されたのじゃが話に捕まると面倒ゆえ後片づけを理由にわらわはとっとと退散したのじゃ。


 うむ、満足。やりきった感があって悪くない気分なのじゃ。

 まあ後商人たち三組を今日のように饗応するのかと思うと面倒な気分もするのじゃがの。


お読みいただきありがとうございました。


♯三千香は最初、麩とネージュがパッと見似て見えるのでそれで混乱させてやろう、という意図でデザートを選定したのですが作っているうちにそれを完全に忘れたため文章中で言及されることがなかったのです。

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