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デザートも作って満足なのじゃ

こんにちは。

今日も二話更新予定です。

こちらは一話目(1/2)。

二話目は21時更新予定です。


 話をしながら準備はほぼ終わらせておいたのじゃ。ひまわり油を混ぜて捏ねたシュトゥルーデル生地は打ち粉をふった台の上で薄く延ばして切り分けてあるし、具の方はオージシュトゥルーデルを焼いたときと違って加熱時間が読めぬゆえ林檎オージもパン粉と蜂蜜と一緒に鍋で火を入れてあるのじゃ。食感を変えるために炒めるのは半分にして残りは生のままにしておいた方が良かったかも知れぬの。


 生地を切り分けておるサイズは春巻きの皮程度、そして林檎の具を置き実際春巻きのように巻くのじゃ。

「こんな風に中の具がこぼれぬよう巻いていくのじゃ。やってくれるかの?」

 そう言うと双子たちがやる気になったのじゃ。

「うん、やるー」

「このオージ、甘い匂いがするー」


「つまみ食いは出来上がってからにするのじゃぞ」

 モリエとセイジェさんもやり始めたゆえお任せしてなのじゃ、別口で混ぜておいた蜂蜜入り生地なのじゃ。本来なら蜂蜜ではなく砂糖で、そしてベーキングパウダーを入れるのじゃがまあ何とかなるじゃろう。空気をよく含むようにざっくりとしか混ぜておらぬのじゃ。

 油温を少量の生地を落とすことで確認し、木べらで生地を掬って油に投入なのじゃ。菜箸でひっくり返したりしつつ何となく揚がったあたりで取り出す。いびつな球形の揚げドーナツ、あるいはサーターアンダギーなのじゃ。


 とりあえず揚がった試作の一つを包丁で割る。サックリ感は足りぬがそれは仕方ないのじゃ。火はきちんと通っておるの。

「サーデ、マーセ、味見なのじゃ」

 半分に割った揚げドーナツを片方ずつ双子に食べさせる。あーんと口を開ける双子がなにやら鳥の雛のようでかわいいのじゃ。

「おいしい! 蜂蜜味!」

「外側も内側もおいしい!」

 うむ、まあ膨らまぬゆえ密度の高いドーナツではあるのじゃがとりあえず成功なのじゃ。


 揚げドーナツを大量に揚げた後は皆が巻いてくれた春巻き型揚げアップルパイなのじゃ。味見せずとも確実に美味しいのじゃ。しかし味見するのじゃ。あふあふ。

「具が熱いゆえ気をつけるのじゃぞ」

 水を飲みながら皆に注意を喚起するのじゃ。外側はぱりっとした層構造の生地で、中身は具を暖めるとき少し小麦粉を入れておったのでとろみのある美味しい揚げアップルパイになっておるのじゃ。

 あとは勿体ないのじゃが揚げドーナツと揚げアップルパイの両方に粉砂糖をふるって化粧しておくのじゃ。これでおなか一杯でも手が伸びること必定なのじゃ。


「うむ、甘くないハーブティーも酔い醒ましに淹れてやるのじゃ。気をつけて持って行くよう頼むのじゃ」

「なんかすげーな」

 集会所のでかい薬缶に入れたお茶を呆れたような顔のジーダルに持たせ、それぞれ揚げドーナツと揚げアップルパイの皿を盛った双子と共に送り出す。


「さて、と。あとは<洗浄>を使って後片づけゆえ其方らも食堂に戻ってよいのじゃ」

「<洗浄>の後、片づけるくらいは手伝うよ」

「戻って酔っぱらいの相手をする方が面倒だわ」

 ふむ、ありがたいのじゃ。ちゃんとつまみ食いしておったゆえわざわざ食堂の残り物を見に行く必要がないと言うのもあるのじゃろうが。

「とりあえず今ある調理に使ったものじゃとかをひとまとめにするよう頼むのじゃ。今出ておる皿なぞはまた後で<洗浄>するゆえ今ある分を先にやってしまうのじゃ」

「了解ー」

「はいはいー」


「油はどうするの?」

「村のものが再利用して使いそうじゃの。調理に使わぬでも灯明なぞには使えるであろう。そこらの空いたかめにでも入れて書き付けを残しておくのじゃ。鍋は他のものと一緒に<洗浄>なのじゃ」

 セイジェさんもモリエもてきぱきと片付けていく。頼もしいことなのじゃ。女子三人ゆえおしゃべりもしながらなのじゃ。

「それにしてもお料理にあんな魔法を使いまくるなんてすごいわ」

「<経時>は時間短縮になるゆえ便利なのじゃ。とはいえ逆に時間をかければ<経時>は不要ゆえ、モリエは作れるようになったのではないかの」

「うん、今度試す。でも油を抱えて冒険は無理」

「確かに道理なのじゃ。次の機会には少ない油で済むようフライパンで揚げ焼きでもやってみせるのじゃ」


「わらわたちも油や粉が身体についておるゆえまとめて<洗浄>してしまうのじゃ。あ、これはついでゆえ無料じゃぞ」

「んー、まあ今回はお手伝い料のお釣りってことでいいわね」

 思い出したのじゃ。調理器具、返ってきた皿や器、そしてわらわたち三人を<洗浄>で洗い、片付けながら話す。

「そう言えば商人さんたちが途中から調理依頼ってことにしておったゆえ報酬があるはずなのじゃ。もろうたら手伝った人数で割るのじゃ」

 条件を特に言っておらんかったゆえ大した報酬ではないじゃろうがの。食材の代金もかなり嵩んでおるはずなのじゃ。


「手伝ったのは事実だから貰うけど、ミチカが七で私たち三ね」

「報酬の話もちゃんとしておらぬが面倒ゆえわらわが六で其方らがおのおの一じゃな」

「冒険者になろうって言うのだから契約や報酬はもうちょっとちゃんとしようねー」

「うっ、面目ないのじゃ」

 そんな話をしておったら皿の類を持って双子たちが帰ってきたのじゃ。大好評だったと伝えてくれるのじゃが、まあそれは空っぽの皿が雄弁に物語っておるのじゃ。


 まあ皆慣れない揚げ物を大量に食べた食べ過ぎで苦しむとよいのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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