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酒に別腸(べっちょう)あり、なのじゃ。

いらっしゃいませ。

こちら本日二話目です(2/2)。



 サーデとマーセの戦況報告では流石の冒険者たちも腹がくちくなってまったりモードのようなのじゃ。腹一杯と言いつつも皿の上の最後の一個争奪戦は激しいものであったなどと聞くと無論嬉しいのじゃ。

 調理はまあ趣味程度の技前だと自認しておるのじゃが、美味しく食べてくれると嬉しいものなのじゃ。父さまはわらわに甘い父親であったのじゃが、同時に食べ物に関して煩いグルマンでもあったのじゃ。

 食べ物で父さまから満足を引き出すのは至難を極めたものであったのじゃ。


 ふと懐かしい気分に浸っておったのじゃが、この結構大変であった戦いはまだ終わりではないのじゃ。これまでは相手方の猛攻に防戦一方だったわらわなのじゃが、ここからが反攻開始なのじゃ。

「マーセよ、林檎オージをいくつか貰ってくるのじゃ」

「はーい、食後に果物だねー」

「さっぱりしたオージは確かに良さそうね」

 ふふふ、少し違うのじゃ。

「あまりさっぱりはせぬかも知れぬのう」

「ミチカ悪いかおー」

「あら、なにをする気かしら」


「出来上がってのお楽しみなのじゃ!」

 先ずは生地を準備するのじゃ。ひまわり油を混ぜて捏ねるのじゃ、とやっておったらまたジーダルが厨房にやってきおった。落ち着きがない男なのじゃ。

「おうまだなんか作ってるのか。みんなもう腹一杯になってるからありがとよ、って言いに来たんだが」

「ふむ、考えが甘いのじゃ。酒に別腸べっちょうあり。甘いものは別腹と言うであろ」

 ふんっと胸を張るわらわをジーダルが呆れた目で見る。

「いや、聞いたことないが」

「んー、なんか別の言い回しで聞いたことあるかしら」


 甘いものがあまり普及しておらぬゆえであろうかの。必ず似た言葉があると思ったのじゃが。まあよいのじゃ。

 仕方ないのう、と流し、オージを剥いていちょう切りにし出すとジーダルが話を聞かせろとか言いおるのじゃ。面倒ではあるのじゃが、まあよいのじゃ。

「昔々遠い国でのお話なのじゃ」

「おお、昔話っぽいな」


 小麦粉が余りそうゆえ蜂蜜を混ぜた生地も作るのじゃ。ベーキングパウダーがあればよいのじゃがなあ。いかぬ、ないものを考えてばかりおる気がするゆえ気をつけることにするのじゃ。

 マインキョルトでパン種を手に入れればある程度まで出来ることも増えるのじゃ。こっち方面で考えるのじゃ。

 そんな感じで作業は進めつつお話をしてやるのじゃ。


「ビンの国にオウギと言う王さまがおったのじゃ」

 悪い王さまではなかったのじゃが酒飲みでのう。酒癖も余りようなかったのじゃ。

 悪酔いして一緒に飲んでおった家臣を投獄しろだとか首を刎ねてしまえだとか命ずることもあったのじゃが周りのものも心得たものでそう言われた家臣を酒席から退かせてそれで済ませておったのじゃ。

 翌朝王さまはそう命じたことを覚えておったら青い顔をして本当に投獄したり首を刎ねたりしておらぬか聞いたものなのじゃ。そして酒席から下がらせただけと聞けばその判断を褒めたのじゃ。本来は王命に逆らっておるゆえ大罪なのじゃがの。

 ただ、前日の酒席のことなぞすっかり忘れておることの方が多かったのじゃ。


 そんな王さまの家臣にシュウと言う小男の学士がおったのじゃ。背丈も身体も小さいのじゃが酒が強くての、深酒をする王さまにつき合って延々と大酒を飲むのじゃ。

 他の大柄な男たちが潰れておるのに平然としておるシュウに小男のくせによく飲む、と王さまが絡んだのじゃがそれに対して「酒に別腸あり。長大を必せず」と答えたのじゃ。

 その屁理屈めいた返答に立腹した王さまは刀を以て腹を割いてその酒腸を見てやろうか、と脅したのじゃが、王さまの深酒につき合って最後まで飲めるのはシュウくらいゆえ殺してしまったら寂しい酒になると諭されてその返答を良しとしたのじゃ。


「これが『酒に別腸あり』の故事なのじゃ。これに由来して甘い菓子なぞは普通の食べ物と入る腹が違うのじゃ、と言うのが『甘いものは別腹』なのじゃ。わかったかえ」

「なんか共感するところも感心するところもないが、面白いな。全く聞いたことのない種類の話だ」

「ふふ、まあそんな話じゃの。役に立つ話ではないのじゃ」

 細部は適当なのじゃが唐末の五代十国時代の話なのじゃ。なのじゃが、酒飲みエピソードなぞは三国志の孫権に全く同じようなものがあったりするゆえ南方の君主に対する偏見があるように思うのじゃ。どうでもいいのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

自分が一体何を書いているのかが自分でよくわからなくなりました。

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