更に宴会料理を作るのじゃ
こんにちは。
今年もあと少しですね。
皆様にとって良い年末年始でありますように祈っております。
さて本日も二話更新予定です。
こちらは一話目(1/2)。
二話目は21時更新予定です。
敵の増援なのじゃ。
いや、夕になってから鶏を何羽分も買い取っていく様に疑問を感じた村の長役たちが集会場の食堂に話を聞きにやってきたらしいのじゃ。わらわは厨房に詰めておったゆえ実際はどういう話であったのかわからぬのじゃが商人たちが結果としてそのやって来た長役数人を席に招いたそうなのじゃ。
ここに至って追加なのじゃ。
流石にこの時点で商人たちから正式に報酬のある依頼として調理を頼まれたのじゃが、今更逃げることがあたわぬのを依頼と言ってよいのじゃろうか。
「サーデよ、冒険者たちはまだ食べそうであったかえ? もういい加減腹もくちくなっておると思うのじゃが」
「まだまだ食べそうだよ。あのお塩がよかったみたいー」
恐るべし、冒険者どもなのじゃ。此奴らはいい加減倒してしまいたいのじゃ。増援は今までと同じメニューで迎撃すればよいとしての。
<経時>以外はかなり任せることが出来るようになったゆえ、本当は初めの頃に作るつもりであったサラダを今更作るのじゃ。野菜を貰ってきておるのじゃが、葉物はあまり天ぷら風に向いておらぬゆえ残り気味なのじゃ。
平焼きパンを賽の目に切り油で揚げる。クルトンっぽいものなのじゃ。塩漬け肉も極めて小さい角切りにして素揚げにするのじゃ。これをわらわ特製ドレッシングと和えた野菜の上に散らして出来上がりなのじゃ。
ドレッシングは油、葡萄酢、塩の簡単なものなのじゃが油はわらわの手持ちからひまわり油なのじゃ。
よし、お次なのじゃ。
鶏肉を唐揚げ用に捌いて行く上で小さい端肉が出るのじゃ。これを集めて叩いてじゃ、少し小麦粉と塩を入れつつ刻んだ野菜類と混ぜるのじゃ。さっき戻したモルケッラも刻んで使っておくのじゃ。うむ、作っておったつゆも少し味付けに入れて、全体的には固めの餡に仕上げるのじゃ。
平焼きパンの端を切って切れ目から広げるとポケット状になるのじゃ。その内側に卵液を少々塗って、鶏肉の餡を入れて口を閉じる。これを油で揚げるのじゃ。
惣菜パンの類なのじゃ。揚げた平焼きパンの部分が腹に溜まるゆえ大食いの冒険者どももこれで倒せるのじゃ。
提供は二つに切って断面から中の具が見えておる方が受けがよいかの。なぞと思っておったらまた違う調理法であったゆえかセイジェさんとモリエがじっと見ておったのじゃ。モリエが興味を引かれておるゆえ双子等も見ておるの。
「うむ、鶏の切れ端は少ないゆえこれはわらわたちで味見をするとして余の者等用には塩漬け肉で餡を作るとするかの」
「さんせー」
「わーい」
うむ。賛意も得られたゆえ食べるが美味なのじゃ。揚げたパンの威力は間違いないものじゃし、鶏も唐揚げとまた違う凝縮された旨みを感じるのじゃ。しかし、軟骨を入れたりした方が食感が面白かったかのう。塩漬け肉バージョンは歯ごたえのある野菜を大きめに切ってみるかの。
「これって何と言う料理なのかしら」
「カリャーゲやテンプラフーとも違うよね」
双子等はおいしーとしか言っておらぬが残り二人はかなり真剣に食べておったのじゃ。しかし、料理名を訊かれても少し困るのじゃ。正直に言うと謎の創作料理なのじゃ。まあ作るときにはエビの擂り身をトーストで挟んで揚げる、長崎や東南アジアの料理ハトシが頭にあったゆえ、この世界ではこれをハトシと呼ぶことにするのじゃ。
「うむ、これは鶏のハトシなのじゃ。今から冒険者どもの腹を満たすために作るのは塩漬け肉のハトシとなるのじゃ」
本来ハトシはシュリンプトーストなのじゃが、長崎では魚の擂り身や豚の角煮でもハトシを作るゆえこれがハトシでも問題ないのじゃ。そう思うのじゃが、ハトシと口に出した後ピロシキの方が近かった気がしたのじゃ。
まあ忘れておくのじゃ。
揚げたパンの力で腹に溜まるのも間違いないゆえこれで勝負は決まったのじゃ。と思っておったら給仕に行ったサーデが鶏肉で作った鶏のハトシが美味しかったなぞと口を滑らせたらしく要望と共に鶏がもう一羽追加されたのじゃ。なぜなのじゃ!
お読みいただきありがとうございました。