宴会料理をまだまだ作るのじゃ
こんにちは。
こちら本日二話目です(2/2)。
ちょっとここから結構な修羅場となったのじゃ。半分以上休んだり気絶したりしておった豚鬼戦よりしんどい戦いであったのじゃ。
わらわは厨房で戦い続けておったゆえ食堂の状況は伝聞なのじゃが、護衛たちの宴会に雇い主の商人たちが合流したのじゃ。揚げたてが美味しいという重要な情報をモリエがリークしたゆえなのじゃ。
雇い主が一緒では気を使うであろうと言うことに対する気遣いで、雇い主たちの許可を得てエールのお代わりが条件付きとは言え解禁されたのじゃ。条件は明日の出立は予定通りゆえその時自力で馬車に乗れない者は置いていく、ということであったそうなのじゃ。
甘やかしおって。
護衛の冒険者や傭兵たちは二杯目のエールもほぼ飲んでしまっておったゆえ少し食べ物を与えればよいと思っておったのじゃがこの目算が根本から崩れたのじゃ。
つまみとして大量に消費されることが約束されたのじゃ。此奴ら身体が資本の荒くれ者どもゆえよく食らうのじゃ。
そして商人たちなのじゃ。食後に酒でも飲みながら話をするついでにつまむ程度と思っておったらわざわざ揚げたてを求めて厨房のそばの食堂にやってきておるのじゃ。食う気なのじゃ。食材を提供すれば追加で作るなぞと軽々しく言うものではなかったのじゃ。
「モリエは逃さぬのじゃ。作るのは見ておったであろう。<経時>をかける前の段階まで仕込みを進めておくのじゃ」
「わかった。まかせてー」
モリエは自分で狩ってきた鳥や兎を捌いて調理できるのじゃ。調理の内容的には焼くだけ煮るだけであったというのじゃが、基本的な部分は任せることが出来るはずなのじゃ。
「マーセは商人さんたちと話をして鶏をもう二三羽貰ってくるのじゃ。あと小麦粉もわらわの手持ちでは足りぬゆえ頼むのじゃ。それとあれば卵、そしてまだ柔らかい平焼きパンがあればそれも、なのじゃ」
「うんー、おぼえた」
マーセは記憶力がよいのじゃ。わらわが言ったものを復唱して確認しておる。
「あ、野菜もあればお願いするのじゃ」
「サーデはテーブルに残っておる塩漬け肉を回収してくるのじゃ。塩抜きした後薄切りにし直して再利用するのじゃ」
サーデはマーセほど記憶力がよくないのじゃ、とは言え一卵性の双子ゆえ能力的なものではなく性格の問題なのじゃ、おそらく。代わりにコミュニケーション能力は高くて気は利くのじゃ。
「はーい、まかせてー。あと空いたお皿とか下げてくるねー」
揚げたり<経時>をかけたり、肉を切ったりとバタバタしておったら食材を抱えたマーセが同じく食材を抱えたセイジェさんと共に戻ってきたのじゃ。ふむ、親切心が仇となるのじゃ。
「親切心を出すとつけ込まれるのが世の常なのじゃ。セイジェさんも手伝っていくとよいのじゃ。報酬はあつあつのうちに味見という名のつまみ食いをする権利なのじゃ」
「あらあら。その報酬は魅力的ね」
人手ゲットなのじゃ。仕込みをモリエに教えてもらい、任せることが出来るようになればモリエは油の方で揚げる係をして貰うのじゃ。
衣の生地を塩漬け肉用の塩なしと山菜用の塩を入れたものの二種類別に作り、任せることが出来るようにしてっと。皿を持って行ったり戻ってきたりする双子の様子ではまだまだ出した分だけ食べ尽くされておるようなのじゃが、少し目先を変えるものも必要なのじゃ。
ちなみに戻ってきた皿は時折<洗浄>を飛ばしておるのじゃ。わらわの仕事はかなりめまぐるしいのじゃ。
手持ちの大事な乾燥モルケッラを<経時>を使って戻し、戻し汁を葡萄酒と鶏の胸肉と合わせて煮立たせる。ダシを取った鶏は外して塩で味を調節するのじゃ。味見用にちょっと取り分けてフリッターを浸けて食べるのじゃ。うむ、美味なのじゃ。代用天つゆと言う訳なのじゃ。
ついでに塩に乾燥ハーブを砕いて混ぜたハーブ塩、フェージと言うオレンジみたいな柑橘類の皮をすり下ろしたものを混ぜたフェージ塩、同様にニンニク塩を作る。
「このつゆはフリッターや天ぷら風を浸けて食べるとまた別の味わいなのじゃ。この塩は唐揚げでも天ぷら風でもどちらにつけても合うはずなのじゃ。好みで試すがよいと伝えるのじゃ」
「よーし、もってくー」
「こぼさないよう気をつけるのよ。それにしても同じ料理につけるもので味を変えるって面白いわねー」
「冒険に出たら同じような食事が続く冒険者こそ味を変える調味料を大事にすべきではないかのう」
「そうかも知れないわね」
一応他の準備なぞをしつつもおしゃべりする程度の余裕は出てきたのじゃ。
鶏は更に追加したりしたのじゃが、まあこのままわらわの完全勝利なのじゃ。と思っておったのじゃが、のう。
お読みいただきありがとうございました。
料理回は書くのは楽しいのですが一切話が展開しないという問題が大きいですよね。