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討伐の慰労会なのじゃ

こんにちは。

本日更新二話目です(2/2)。

後書きに追記。


 快適な旅なのじゃ。

 街道は馬車二輌が余裕を持ってすれ違える幅があるのじゃがたまに街道巡回騎兵の隊とすれ違ったり追い越されたりするくらいですいすいと進むのじゃ。

 わらわたちが最初に着くはずのジープラント王国側の国境の城市、ゴンゼイキョルトにもストールベリ王国内の街道での危険が街道巡回騎兵の連絡で伝わっておるはずゆえ状況が分かるまでこちらに向かってくる交易商はおらぬのであろう。


 最初に宿泊する村では豚鬼オーク討伐の慰労会が軽く行われたのじゃ。わらわも戦闘に参加しておるので当然参加なのじゃ。

 大人数を泊めるときには宿屋兼食堂にもなる村の集会所のような所でエールと塩漬け肉中心の立食パーティなのじゃ。わびしいのじゃ。

 その質のよくなさそうなエールもまだ護衛の任務中ゆえ最初の乾杯ともう一杯だけの計二杯のみと言う決まりなのじゃ。わらわや双子たちは最初から飲まぬから関係ない話なのじゃが荒くれ者の類のはずの冒険者たちも素直に受け入れておったのじゃ。流石にプロフェッショナルなのじゃ。


「こういう討伐の後の飲み会の初めによ、死んだ奴らの弔いが必要ねーのは幸せなことだ。俺たちの勝利と幸運の女神に乾杯!」

「乾杯!」

 ジーダルが乾杯の音頭をとり、皆木製のジョッキを掲げる。ああ、本当に乾杯するゆえ一杯ではなく二杯なのじゃな。

「いえー、ミチカ女神!」

「ミチカちゃん、幸運の女神だってー」

「うえっ、わらわのことかえ?」

 モリエもこくこくと頷いておるし、他の冒険者たちもジョッキをわらわに掲げて挨拶しおるのじゃ。安い女神なのじゃ。


 最初の挨拶回りの時に比べて熱の入った挨拶攻勢なぞを受けたり、魔術を使える数人と魔法のことを話したりと女神もなかなかに忙しいのじゃ。

 悪い気分ではないが面倒でもあるのじゃ。ん、なにやらジーダルが話し始めたのじゃ。


「飲み食いしながら聞いてくれ」

 ジーダル自身もジョッキを持ったままなのじゃ。

「魔漿石の取り分は三割ミチカで残りは頭割りだ。いいか?」

 貰いすぎではないかと思うのじゃが他の冒険者もそんなもんだと言っておる。貰わぬ理由も思いつかぬゆえ受け取るしかなさそうなのじゃ。

「馬に乗ってメイゼルキョルトへ向かってるサルダンの分はゴンゼイキョルトの協会で受け取れるようにする。その時馬も返して貰わなきゃならんからな」

 向こうから調査団が出るまでは帰って来れねえだろうがな、と付け加えつつ続ける。メーセルキョーで足止めされるサルダンも大変なのじゃ。


大尉カピタン軍曹サルゲントの角と魔漿石は倒した奴のものでいいな。パーティ内で喧嘩すんなよ」

 そう言うと流石にこれは配り歩かずに各パーティのリーダーを呼んで分配し始める。何というか、こんな仕事までやるとはご苦労なことなのじゃ。こういう世話役としての能力も含めて評価と人気が高いのかも知れんの。

軍曹サルゲント殺しになったって調子には乗るなよ。作ってくれた地形とあの疲れねー魔法のおかげだからな」

「はいっ、わかってます」

 オルンや他の若手にはそんな釘も刺しておる。オルンはまだ酒になれておらぬのかかなり真っ赤じゃな。


 モリエ曰く、わらわは気にも止めておらんかった豚鬼オーク軍曹サルゲントがここいらで言う普通の指揮個体で、これを仕留めることが出来るようなら初級者を脱して一人前と見なされるようになるらしいのじゃ。確かにハードルとするなら土壁と壕なしでやれんといかぬの。

 角は錬金術の素材ともなるのじゃが冒険者協会に納品して昇級査定の評点に加えて貰うのじゃと。冒険者協会の仕組みももう少し調べておくべきかの。


 ちなみにモリエは酒も飲める歳なのじゃがわらわや双子等と一緒に茶を飲んでおる。双子等に蜂蜜入りのハーブティーを強請ねだられたゆえ、その要求を更に越えてやるのじゃと林檎オージの皮をハーブと一緒に入れ蜂蜜も加えた贅沢な林檎風味の香草茶なのじゃ。

「このお茶おいしー。オージのかおり好きー」

「でも食べ物はあんまりー。ミチカちゃんの料理の方がいいー」

 お茶は好評なのじゃ。どうやらお茶も二杯まで、と思っておるらしく今お代わりを頼むか食後にするか悩んでおるようなのじゃ。


「ほう、ミチカは料理も出来るのか」

 他に魔漿石を分配し終わってやって来ておったジーダルが尋ねてくる。あー、肩が凝った、なぞと言っておるのはご苦労様なのじゃ。

「普通程度なのじゃ。他の地方の料理のやり方ゆえ物珍しいのであろ」

「いや、そう言うの抜きでホントにおいしい」

「ええ、技法も珍しいですがおそらく味に関する理解が深いのではないでしょうか」

 わらわは軽く流そうと思ったのじゃが、モリエとガントが驚く勢いで褒めてくる。興味を引きすぎると面倒と思ったのじゃのう。

 と言うかガントはかなり気に入っておったのじゃな。妹の双子たちに押されて自己主張が弱いゆえ、わらわの方はガントだけ味の好みがわかっておらぬと言うのに。


「ここの厨房は使えるようゆえ、其方が薪代と油代を出すなら作ってやってもよいのじゃ。ただ油をたっぷり使うゆえ高いぞえ?」

「おお、いいぜ。それくらい出してやる。皆に行き渡るくらいな」

 まあ確かにこの切った塩漬け肉しか見えぬようなテーブルでは宴とは呼べぬのじゃ。とはいえ手の掛かるものを作る気はないのじゃが。

「サーデとマーセは油を貰ってくるのじゃ。鍋になみなみ入るくらいの。そしてもし売ってくれる分があったら鶏肉も貰ってくるのじゃ。料金はジーダルに回しておくのじゃぞ」

「はーい。ミチカの料理たのしみー」

「まかせてー。すぐもってくるよー」


 双子に油は頼んでおくのじゃ。さて準備、いかんいかん。

「わらわは自分の荷物から調味料や道具を取ってくるのじゃ。鍋はそこにあるのを使うがの」

 危うく収納空間から調味料なぞを取り出すところだったのじゃ。気をつけねばの。

「ああ待て、ほらよ」

「ん、なんなのじゃ?」

 そこそこの大きさの包みを渡されたのじゃ。


「ミチカの取り分とカピタンの角と魔漿石だ」

「カピタンは其方らのであろう」

「倒した奴、って言っただろ。あきらめて受け取りな」

 ぬう。貰いすぎな気がするのじゃがのう。せめてもの抵抗なのじゃ。

「サーデ、マーセ、料金はやっぱりジーダルではのうてわらわにつけておくのじゃ。あと野菜があればそれも頼むのじゃ」

「がはは。気にすんなって。俺につけとけよ」

「はーい、おっさんごちー」

「おっさんふとっぱらー」

 双子等はジーダルの言うことの方を聞いて行きおったのじゃ。

「代わりに旨いくいもんを頼むぜ」

 ふんっ、任せておくのじゃ。



お読みいただきありがとうございました。

次回から料理回連打になります。

料理回連打についてお詫びと言い訳を活動報告に記しました。いや本当に申し訳ない。

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