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メーセルキョーの孤児院で一泊するのじゃ

こんにちは。

本日も二話更新予定です。

こちらは一話目(1/2)。

二話目は21時更新予定です。


 ノイテさんに報告しに商業組合に戻ったら喜んでくれた上にマインキョルトの商業組合への紹介状を準備してくれておったのじゃ。ノイテさんは「うちの国の貴族が迷惑かけたんだからその罪滅ぼしにもならないんだけど」と言ってくれたのじゃが、本来関係なぞあらぬゆえ本当の善意からなのじゃ。

 ありがたいことなのじゃ、と頭を下げたら「やっぱり中央風なのね」と笑われたのじゃ。お辞儀はマーリィの礼儀作法講座にも含まれておった気がするのじゃが、確かに他でする人を見たことがなかったのじゃ。


 あとは今晩の宿なのじゃが、子どもひとりで宿屋はちょっと不安があるのじゃ。となると、なのじゃ。

 と言うわけでわらわはこの城市の正神殿に来ておる。城市の規模が小さいのは分かっておったが神殿はその段ではなく小さい上に数もないのじゃ。イセンキョーにはわらわの育った孤児院のある神殿のように街区ごとにある勢いであったというのに、このメーセルキョーでは三つしかないと言うのじゃ。そして孤児院は正神殿付属の一カ所のみなのじゃ。


 そう、ちょっとした喜捨と森の中の旅の間に獲った山鳥の肉二羽分を対価として孤児院に泊めてもらうことにしたのじゃ。場所は変わっても慣れたところなのじゃ。

 もう話し慣れた設定で子どもの一人旅の理由も納得してもらい、ついでに一年ちょっとでも孤児院におらぬかと言う誘いも丁重に断り半日だけの孤児院生活なのじゃ。

 マードたちのお手伝いをするのもなにやら懐かしい気持ちなのじゃ。


 しかし、マーリィの厳しい教育が行き届いておったイセンキョーの孤児院に比べて子どもたちは騒がしいのじゃ。見たことのない新顔のわらわと山鳥の一羽を使った食事でテンションがあがっておるのじゃろうが。

 イセンキョーの孤児院との大きな違いがもう一つあってあちらでは男性聖職者たちは孤児院に一切関わりを持たなかったのじゃが、ここではリーディンも一緒に孤児院で食事を摂り食前食後の祈りを捧げるのじゃ。よいことのようじゃがロリコンの疑いもあるゆえ評価は避けておくのじゃ。


 このわらわが密かにロリコン疑惑を持った司祭リーディンと夕食を摂りながら色々話をしたのじゃ。先ずは神殿の規模が小さい理由じゃな。これは西方域で神殿組織に反発した宗教改革めいた動きがあり、とは言っても百年単位の動きなのじゃが、西方域との関係が深いジープラント王国もその影響で神殿組織の力が弱いそうなのじゃ。そしてジープラント王国との関わりが深いこの城市でも余り流行らない、と言う玉突き事故みたいな話なのじゃ。

 しかし、西方域の宗教改革であれば俗に西方聖堂会と呼ばれる組織が主導しておるので神殿の代わりに聖堂とやらが建っておるはずなのじゃが、半端に伝わっておるのじゃろうな。


 そう言う土地に配されるリーディンはやる気に溢れた伝道師気質のものか閑職として配流されるものか、まあこの穏やかそうなおじさんは後者かのう。

 このおじさんからもう一つ、重要なことを教えてもらったのじゃ。ここの教会は一応ストールベリ王国の大司祭の教区に含まれておるゆえ神殿組織の位階を持たぬものに祈祷書を見せることは出来ないのじゃが、ジープラント王国内の神殿であれば相応の喜捨で見せてくれるそうなのじゃ。

 ジープラント王国に行く楽しみが増えたのじゃ。


 ちなみに持ち込みの山鳥の肉はよく熟成しておって美味だったのじゃ。エイジング完璧、と自画自賛なのじゃ。こういう鳥のエイジングは非常に重要なのじゃ。

 猟をする人間に言わせれば鴨は軒に吊して目にウジがわく位が食べ頃とのことなのじゃが、聞いただけではいまいち分からぬわらわや弟たちのために父さまが鴨肉の半分を鴨鍋にして、その肉の残り半分をしっかり熟成させて一週間後にまた同じ鴨鍋にしてくれたことがあったのじゃ。

 最初の鍋はまあこんなものじゃろう、位の肉であったのじゃが次の鍋は同じ肉であったはずなのに全く別物の美味しさだったのじゃ。いやさ、熟成大事なのじゃ。

 魚は新鮮な刺身の方が好みなのじゃが、肉系はこれ以来エイジングを気にするようになったのじゃ。


 父さまありがとうなのじゃ。そして<経時>を気兼ねなく使える魔力があることにも感謝なのじゃ。

 山鳥の肉に関してはリーディンも手放しで褒めておったし、子ども等も大騒ぎだったのじゃ。うむうむ、もう一羽も大事に食べて欲しいものじゃ。


 食後もしばらくリーディンと茶を喫しながらおしゃべりしたのじゃ。やっぱりロリコンかのう。少し気をつけるのじゃ。

 まあ、ジープラント王国に関しての話は有り難いのじゃ。今から向かう土地の生きた情報は値千金なのじゃ。それ以外の話もなかなか興味深いのじゃ。ものをよく知っておるし、見識も確かなのじゃ。こういう辺境に配流されるのも当然じゃな、との偏見を新たにしたのじゃ。

 同時にこういう知識人とやりとりできるほどの詰め込み教育を受けておったことに愕然とするのじゃ。マーリィ恐るべしなのじゃ。


 夜は喜捨をしておるゆえマード用の部屋で、と言われたのじゃが固辞して子どもたちと寝たのじゃ。ロリコン対策というわけではなくてじゃな、森の中を一人で駆けておる間誰ともしゃべらず誰とも触れあわずにおったことが案外辛かったのじゃ。その最中は気にしておらんかったのじゃが、会話したことで揺り返しが来たのじゃ。

 ここしばらくの柔らかい寝台とは比べものにならぬ固い寝床であったのじゃが、他の子ども等の寝息が聞こえる十年来の慣れた環境にわらわは熟睡したのじゃ。



読んでいただきありがとう御座いました。

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