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熊さんとパードとレイデと、なのじゃ

遅くなりました。

先週更新するつもりだったのですが京アニ襲撃のニュースなどで執筆モチベーションを削られてしまっておりました。申し訳ない。

怒りや悲しみと言ったネガティブな感情を執筆モチベーションに転化出来ないタイプなのです。

楽しい気持ちでほえほえと楽しいものを楽しんで書きたいのです。


世界が平和で幸福でありますように。


何はともあれ更新が間遠い当作品ですがよろしくお願いします。

 オルンが楯の修練を始め、双子等と連携の訓練をする様子なぞが裏庭で見られるようになって数日が経ったのじゃ。


「今日は試食会の準備のために熊さんが来るのであったの。それとパードとレイデの二人がオルン等と話すために訪ねて来るのじゃ。うむ、今日も色々とあることなのじゃ」

 メイドさんが作ってくれた朝餉を摂りながら当日の予定を確認するのが最近の日課なのじゃ。分かっておるつもりでも確認したほうが安心確実なのじゃ。


「仕立屋から完成した衣裳の納品があります。それと同時に子ども用とオルンさんたちの普段着用の古着を預かってきてくれるようです」

「石屋からカットした試作品を見ていただきたいという面会依頼が来ています。ミチカさんが伝授された多色摺りの宣材が菓子店用、遊戯大会用双方とも生産に入りました。見本が来ております。試食会に関しては調理用の魔法具に関連しておりますのでエインさんが夕刻に面会においでになります」

 メイド長のレーレッテさんとわらわの秘書のような気がして来ておるミルケさんが今日の予定に付け加えてくるのじゃ。

 ミルケさんは他にも大量の面会依頼が届いておることも教えてくれるのじゃ。その大方はミルケさんの段階でお断りしてくれておるというわけなのじゃ。


 それにしてもせわしないのじゃ。

「仕事を増やして忙しくしてるのはミチカ自身だからね」

 わらわの内心が顔に出たのかモリエからツッコミが入るのじゃ。むう。

「あの色付きの版画とかスゴかったね!」

「あれで役者絵とか出だしたら買うよ!」

 双子等が言うておるのは前世の体験学習のことを思い出しつつ伝授した錦絵、所謂浮世絵の技法なのじゃ。

 今生の世間一般に流通しておる版画は単色の簡単なものしかあらぬようであったゆえ職人をまとめて呼び出してもろうて複数の版木を使う多色摺りをじっくりと教えたのじゃ。


 最初は包装紙や広告を刷る気があったのじゃが、版木の劣化が早いのも特徴であることを途中で思い出したのじゃ。そういうことで高級品用のパッケージと宣伝用の看板パネルを発注することになったのじゃ。

 確かにモリエが言う通りいらぬ仕事を己で増やした一例になるのじゃ。最初の目論見も外れておるしの。

 職人等は大きく盛り上がっておったゆえサーデやマーセが喜ぶような錦絵が売り出されるのも近いと思うのじゃ。手間はかかるゆえ価格の上昇は避けられぬと思うのじゃがの。


「技術を見せるための素材として神話物語から場面を選んだ絵をそのニシキエにしてもらうよう頼んでおきました。要路に贈るほか神殿や修道会本部に飾る分も、ですね」

 ベルゾから先にもう発注しておるが後で書類に承認の署名をしておくようにと言われたのじゃ。


 そう、朝にその日の予定を確認するようになって屋敷に住み込んでおる雪の椿のメンバーの他ミルケさんとベルゾも朝餉に同席するようになっておるのじゃ。

 今日はおらぬがアイラメさんが「朝ご飯食べれるますぅ?」なぞと言いつつやってくることもあればベルゾとともにジーダルとセイジェさんが来ることもあるのじゃ。

 うむ、賑やかな食事は嫌いではあらぬのじゃ。


「あたしたちとオルン兄ちゃんはパードやレイデと一緒に訓練するから今日の護衛はモリエだけだよ」

「一緒に訓練というか互いの実力を確認しとこうって話なんで裏庭でしばらく修練や模擬戦だな。子ども等は御者の練習は無しで普通に工房内の作業の手伝いの予定だ」

 サーデの説明をオルンが補足するのじゃ。

「女の子は古着の補整などの繕いものを手伝ってもらうことになっています。裁縫も出来たほうが良いかと思いますので」

「そうじゃの。よろしく頼むのじゃ。あと二人との稽古の模様はわらわも見物に行くのじゃ」

 メイドさんに子ども等のことを頼み、オルンには裏庭での訓練を見に行く旨も伝えておくのじゃ。


「二人を加えて仕事を頼むことも増えるでしょうし今の実力を確認しておくのは必要なことですね」

 今日は神殿のほうに詰めておくと言うておったガントなのじゃ。確かに実力のほどは気になるところなのじゃ。今のパーティが分裂状態という二人の行く末に関してオルン等と合流せぬ場合でも修道会総長として多少の責任があるのじゃ。

 そのわらわの気持ちを汲んだのか修道会メンバーのまとめ役であるベルゾが二人について話すのじゃ。


「二人はおそらく問題が起こる前にパーティで借りた宿から出ることになるかと思います」

「ふむ。屋敷に空室は多くあるのじゃが、余りに簡単に人を入れていっては満室になったのちに困るのじゃ」

 少し思案してベルゾが応えるのじゃ。

「そうですね。それはお勧めしません」

「修道会本部のほうも空き部屋は多くあるのじゃ。あちらを使えるようにすると良いかの。他のものも希望するなら入れるようにするのじゃ」

「そうですね。神殿の敷地には余裕がありますので場合によっては工房内の子ども達の住居のようなものを建てて寮にするのもいいでしょう」


 そのまま予定とその他に雑談を交えて賑やかながらゆっくりとした朝餉の時間を過ごしたのじゃ。

 食事は時間をかけて食する主義なのじゃ。無論、それだけの余裕がとれるときだけの話なのじゃ。

 朝餉を終えれば先ず書類や届いたものの確認なぞをミルケさんとベルゾと共にバリバリとこなすのじゃ。そうしておるとパードとレイデ、そして熊さん一行がやって来たとの知らせを受けたのじゃ。

 二組とも三の鐘に合わせてやってきた為か別口なのにほぼ同時の来訪となっておるのじゃ。

 パードとレイデはオルンの客とは言えわらわの屋敷ではあるし修道会に属しておる立場から先ずわらわに挨拶、と言うことで面会を待っておるらしいのじゃ。


 先ずはこちらが招いた客である熊さんとの挨拶なのじゃ。既に来客を迎える応接室の調度も整っておるのじゃ。螺鈿の細工で飾られた小卓の上にはメイドさんが淹れてくれた茶と工房で量産しておるクッキーが出ておるのじゃ。

 来ておるのは熊さんと前に店でうたハトコさんの二人なのじゃ。

「熊さん、直接会うのはちょっとお久しぶりなのじゃ。忙しそうじゃの」

「ああ、ミチカの料理のおかげでな。忙しいのはありがたい話さ、忙しすぎるがな」

 熊っぽい容貌から人懐っこそうな笑みをこぼして熊さんはわろうたのじゃ。


「呼び出しておって悪いのじゃがちょっと他の来客に顔だけ出して来ねばならぬのじゃ」

「ああ、玄関で一緒になった若い連中だな」

 冒険者OBである熊さんなのじゃが、面識はあらんかった様なのじゃ。

「オルン等と組むことになるようなのじゃ。修道会で祈祷を修得しておるゆえ有望株なのじゃ」

「ほう、そうなのか。修道会と言えば<洗浄>は本当に凄いな。重宝してるぜ、ありがとうよ」

「そうであろう。ふふん」


 わらわは左右にベルゾとミルケさん、そして護衛のモリエを引き連れた集団で更にそこにメイドさんもおるのじゃがその中からベルゾが一歩踏み出して熊さんに話しかけたのじゃ。

「そうだベアル。オルンが楯を扱う修練を始めてるんだが私やジーダルでは有用な助言をしてやれないんだ。心構えだけでも教えてやってくれ」

 ベルゾがそう言うたのじゃ。そう言えば熊さんはそれこそ楯戦士であったのじゃ。ジーダル等の仲間であったという以上一流の楯戦士と言うべきであるかの、何はともあれ本職であったのじゃ。

「もう俺は現役じゃないが、それでもいいならな」

 少し退いた物言いなのじゃが表情はやる気なのじゃ。


「それではそちらは厨房でメイドさんの仕事を見たりその上で訊きたいことがあったら訊いておくなりすると良いのじゃ。試食会についての話は昼餉を摂りながらにしていくつかの実作は午後にするのじゃ」

 ハトコさんにメイドさんをつけて厨房へ送り出し熊さんを伴ってパードとレイデに会いに行くのじゃ。メイドさんは減ったのじゃが熊さんが加わったゆえ大所帯な道行きなのは変わりなしなのじゃ。むしろ熊さんの巨躯で体積は増えておるのじゃ。

 熊さんは片足義足なのじゃが安定した足の運びなのじゃ。よく訓練したのじゃろうの。

 戦いはもはや出来ぬと引退したとは言え厨房で活躍するには不足あらぬ身体能力を残しておるようなのじゃ。


 パードとレイデは熊さん等の通されておったのとはまた別の応接室で待っておったのじゃ。二組の来客であったゆえ、なのじゃ。一組ならば玄関ホールでちょっと待ってもらうだけの話なのじゃ。

「ご機嫌よう、マーティエ。今日の日に祈りと諸神の祝福を」

 二人はさっと跪き神殿風の挨拶を行うのじゃ。こうしてみると冒険者と言うより修道会の聖職なのじゃ。

 最初にうたときはもっと冒険者らしい雰囲気であったのじゃがの。面白いものなのじゃ。

 しかし今日は冒険者として来ておるはずなのじゃがの。


「よく来たのじゃ。話はいろいろ聞いておるのじゃが、伴う諸事はベルゾに訊くと良いのじゃ」

 宿房を修道会本部に準備する話なぞをベルゾに丸投げなのじゃ。

「ただ、直接聞きたきこともあるゆえ先ずは話でもしつつ屋敷の礼拝所に参ってみるかの。双子等はやる気に溢れておったゆえあまり長くは待たせられぬがの」

「はい、是非!」

「リーディンとベルゾさんが褒めておられたので興味があります」

 本心から興味がありそうなのじゃ。この一点を見るだけでも神殿や修道会への興味が深そうなのじゃ。

 或いは他者から見ると洗脳されておるかのように見える可能性もあるのじゃ。パーティの分裂もそのあたりに理由があるのやも知れぬのじゃ。


「では熊さんはベルゾと先に裏庭に行ってオルンをみてやってたもなのじゃ」

「応、任せておけ」

「では先に行っておりますね」

 裏庭に向かうベルゾと熊さんと別れてパードとレイデの二人と話をしつつ礼拝所に向かうのじゃ。

 話は聞いておる話の再確認程度のことゆえまあ良いのじゃがオルン達との稽古の見物は楽しみなのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

誤字報告などもありがとうございました。

次回更新未定です。

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