お風呂回なのじゃ
こんにちは。
お久しぶり? です。
土日には、と言っておりましたが土曜出勤になりました。変わりに短いのを投稿です。
技能訓練が終わったばかりで暫く戦力とは見なされないと思ってたのに早速休出って奴ですよ。と言うことで土日更新は可能ならと下方修正です。申し訳ない。
何はともあれよろしくお願いします。
広い湯船は神君好みなのじゃ。本式には檜なのじゃがきちんとメンテナンスをせねばならぬのじゃ。その点で石造りならば<洗浄>だけで運用できるのじゃ。
と言うわけでこの浴室の第一の湯船は大理石造りなのじゃ。
<創水><加熱>それと<保温>の魔法具を贅沢に使用した最先端の魔法浴室なのじゃ。
と言うわけで概ね全員で入浴なのじゃ。
なのじゃがメイドさん等は専用のエプロン、入浴介助に使う前掛けと言うべきかも知れぬのじゃ、をつけてスカートの裾をからげ、足下はサンダルというスタイルでお世話に着くのじゃ。
正直<洗浄>がある世の中でそう言うお世話は要らぬと思うのじゃが、まあ好きにさせるのじゃ。後で自分等でも互いに世話しつつ入ると言っておったのじゃ。
<洗浄>で身体を清めてから湯船に入ると言う作法が基本なのじゃ。
転移者もしくは転生者と思しき初代皇帝、神格化されて神君と称されることが多いのじゃが此奴の広めた作法では実は混浴なのじゃ。
<洗浄>で清めて入る作法からはタオルの類を持つことのう浴室に入ってくるのが神君の望みであったと推測できるのじゃ。
ちなみに神君は複数の女性を同時に娶ってハーレムを築いた恥知らずなのじゃ。それに相応しき作法と言えるのじゃ。
わらわはその形式に反して男女を別に分けたのじゃが、中央でも男女を分けておるところの方が多いらしいのじゃ。
そう言うた異世界生活者の先達に対する不満や怒りの情も湯船に浸かって一呼吸で霧散するのじゃ。
うむ、幸せなのじゃ。
「本当に気持ちいいねえ」
「寝ると溺れるゆえ気をつけると良いのじゃ」
「それはミチカが気をつけてね」
ここまで気を抜いておるモリエを見ることは珍しいのじゃ。双子等と身体を並べて湯船の縁に顎を乗せて顔を出しておるゆえカピバラっぽいのじゃ。
モリエは入ったことはあらぬと言うておったのじゃが、天然の温泉に入る動物を見たことがあったのやも知れぬのじゃ。
モリエと違うていつでも気を抜いておるアイラメさんは半分溶けたようになっておるのじゃ。しかし、あれなのじゃ。うむ、浮くのじゃな。ちょっと凄いのじゃ。
意図しておるかどうかはともかく自慢げなアイラメさんとは逆に狐の人は小さくなって入っておるのじゃ。尻尾も濡れて細うなっておるのじゃ。
尻尾の付け根なぞに興味があって見ておるとアイラメさんの陰に隠れたのじゃ。
いや、変な気持ちはあらぬのじゃ。信じて欲しいのじゃ。
そんな内心の焦りを隠せておらぬわらわに狐の人が話しかけてきたのじゃ。
「あたしたちはあんまりお風呂が得意じゃないんです」
そう言いながら併設されておるサウナルームを見やるのじゃ。ここで風呂というとサウナのほうを指すゆえ狐の人が言うておるのもサウナなのじゃ。
なにゆえかとわらわは疑問に感じたのじゃが答は簡単であったのじゃ。
「尻尾や耳、人によっては顔とか全身近くですけど毛皮がお風呂で熱くなるし蒸気の匂いが取れないんですよ」
わらわ等が髪の毛が熱うなるなぞと言うのとは格段に違うと推測できるのじゃ。
ふむふむと納得するわらわに狐の人は続けたのじゃ。
「まあ<洗浄>を習うと匂い落としは出来るんですけどね。あ、<洗浄>を教えてくださって、薬草臭くなるあたしとしてはすっごくありがたかったです! ありがとうございます」
うむ、アイラメさんと狐の人にはメイドさん等に教えるついでに生活魔法を一揃い教えたのじゃ。狐の人も魔力が低めという獣人なのじゃが、逆に純血というわけでもあらぬゆえ庶民の平均程度の魔力はあったのじゃ。
まあ低すぎても魔漿石で使う価値があるのじゃがの。
「でまあ普通のお風呂は入る気はしないんですけど、モリエさんが野の獣が湯に入ると言ってらっしゃったのを聞いてこのお風呂には入ってみたいなって思ったんです」
「ふーん。今度案内するからそこでも入ってみる?」
「お、それならあたしたちも行くよ」
「そうだねー」
狐の人の言葉にモリエ以下湯の中でだらりと伸びておるカピバラモードの三人娘がそう返しておるのじゃ。
確かに温泉は楽しそうなのじゃ。
狐の人もポーションの材料として興味を持っておったしの。
ミルケさんも入るまでは緊張しながら恐る恐る足を入れておったのじゃがすっかり寛いでおるのじゃ。
それを見逃さずメイドさん等が捕獲して香油マッサージにヘアケアとちょっとしたエステサービスを実施し始めたのじゃ。
幸せそうな悲鳴が聞こえてくるのじゃが、まあ次の被害者がわらわであらねばどうでも良いのじゃ。
「き、気持ちよかったです。しかしミチカさんが言う通り<洗浄>がある以上ただの楽しみなのですよね。事業としてみると浴場を作る初期投資がクリアされがたいかも知れませんね」
アイラメさんが新たに捕獲されておるのと入れ違いに戻ってきたミルケさんがそう言うておるのじゃ。
ミルケさんの顔も上気した桜色なのじゃ。
生活魔法が行き届いた後の贅沢と言う位置づけで考えるとバスタブとミニエステとなろうの。温泉を観光地として整備するのは中央にその例があるのじゃが楽しそうな割に難しいのじゃ。
その例はあくまで神君が開いたという伝説があってこその温泉地であるからなのじゃ。
まあ香油やボディソープについて何かを作るついでに作れそうな時があれば製作の選択肢に入れることしておくのじゃ。
スキルアップの実習の実験体を求めるメイドさん等に狐の人も捕まっておったのじゃが、マッサージの有り難みを感じぬであろうわらわ等若いと言うか幼い組は見逃されたのじゃ。
「練習をしっかりして自信がつくまでミチカには出来ないって判断でしょ」
「むう、そのときはまずモリエがしてもらうのじゃ」
正論を言うモリエに言い返しながらそろそろ風呂を上がるとするのじゃ。
気持ちよく湯船を出たのじゃが、風呂から上がる際も<洗浄>で身体や髪のお湯を飛ばして仕舞うことが出来るのじゃ。しかしこれはタオルで拭きたくあるのじゃ。
香油などを擦り込んだ場合は<洗浄>をせぬほうが良い気がするのじゃ。その点でミニエステは重要じゃな。
兎も角、久しぶりの、と言うより前世ぶりの入浴を堪能したのじゃ。
満足、満足なのじゃ。
お読み頂きありがとうございました。