新居探訪その二なのじゃ
こんにちは。
机上学習で学んだことを復習すべき時間にぽちぽちっと書いて投稿です。
よろしくお願いします!
三階はガントの部屋しかあらぬゆえスルーなのじゃ。他ゲストルームは全室空なのじゃ。ホテルであらば経営の危機なのじゃ。
一階で重要であるのは先ず厨房なのじゃ。
厨房は工房にもあるのじゃがそちらのほうの厨房スペースは研究開発と量産のための厨房なのじゃ。そしてこちらの厨房は主にメイドさんが使う生活密着型の厨房となっておるのじゃ。
どちらにも今まで様々に求めてきた調理魔法具がごっそり採用されておるゆえ最新鋭のマジカルキッチンなのじゃ。
魔法具の使い方やその他わらわ流の調理についてメイドさん等にも適宜教えては来ておるのじゃが、これからはモリエがしっかり指導する予定なのじゃ。
「ミチカがふらふら出かけてない間はだね」
「あたしたちがミチカの護衛はするよー」
「討伐依頼は受けられないしっ」
双子等のフォローが入ったのじゃが、まあわらわとしてもある程度の決着が付くまで大人しくしておるつもりなのじゃ。
まったりスローライフであるのじゃ。
「モリエさんには調理師見習いを教えて欲しいくらいですね」
「今度屋台はやるのじゃが、店をやらぬかという話もあったのじゃ。もしやる場合はモリエが雇うもの等を教育せねばならぬであろうの」
聖務室や己の仕事部屋の書類整理が終わったのかやって来たミルケさんの言葉にそう応えておくのじゃ。
モリエは調理関係でわらわの右腕なのじゃ。
「たまに、納得のいかない深みにハマっている気がするよ」
モリエがそうつぶやいておるのじゃが、気のせいなのじゃ。うむ。
厨房から繋がる低温倉庫、これは港湾協会のクラーケン倉庫を参考にした<冷却>と<保温>を利用した魔法具式倉庫なのじゃ。今は冬が深まって行こうという時期であるゆえありがたみを感じにくい様なのじゃが間違いのう将来大活躍なのじゃ。
厨房の収納関係は床下収納なぞも作っておるのじゃが、他の収納スペースが充分にあるゆえわざわざ屈んで床下を開ける必要があらぬのじゃ。こちらは将来活躍しそうな予定もあらぬゆえそのうちこっそり長期貯蔵したほうが良い酒なぞを隠しておくのじゃ。
床下暖房との干渉を考えて作るのには手間が掛かっておるゆえなにも入れずに閉めておくのは無念なのじゃ。
厨房から食堂に移るのじゃ。食堂と続き部屋になっておる遊戯室は仮の内装を済ませた段階でおいおい彫刻なぞの入れ替えをしていくそうなのじゃ。
気取らぬ感じでうだうだしゃべるのは食堂か遊戯室になると思うゆえ、居心地重視で調度が揃えられておるのじゃ。
そしてメイド部屋はやはりわらわは立ち入り禁止なのじゃ。
問題があらぬかどうかだけは訊いておくのじゃが、そのあたりしっかりとしておるゆえ信頼感があるのじゃ。
玄関のホールに出るとオルンの部屋となる予定の部屋へ行けるのじゃ。
玄関横の警護兼任の部屋で、まず広いリビングなのじゃ。普段は雪の椿のミーティングやらに使えるのじゃが、この部屋から玄関ホールと控えの間を監視できるようになっておるのじゃ。
そしてそこからオルンの寝室と予備の部屋に繋がっておるのじゃ。予備の部屋はとりあえず夜番の仮眠室にも使えるように適当な家具を入れてあるのじゃが、無駄スペースなのじゃ。
寝室も殺風景であるゆえ、妹のモリエがどうにかしてやると良いと思うのじゃ。
「自分の部屋も持て余してるのに」
「雑貨を商う商人に来てもらうかの」
正直わらわもこの世界でどういう風に部屋を飾るのが普通の正解か分からぬのじゃ。きちんとアドバイスを受けぬととりあえず詰め込んだ空間恐怖症めいた部屋や単純に成金趣味になる可能性があるのじゃ。
一階は他に控えの間や応接室があるのじゃが内装が済んでおらぬゆえ現状空き部屋なのじゃ。まだ空き部屋だらけなのじゃ。
空き部屋ではあらぬ、重要施設が一つあるのじゃがそこは後で使い方説明もせねばならぬゆえ後回しなのじゃ。
そして思い立ったことがあるのじゃ。
「作ろうかどうしようかと保留しておったのじゃが、サーデとマーセも本を読むのであらば一室書庫を作ろうかの」
まだ空き部屋が多くあるのじゃ。二部屋くらい壁を取っ払ろうて書庫にするのも悪うあらぬのじゃ。
「書棚は内装屋に頼むとして書物は出版されたものを持ってきてもらうよう頼む必要はあるのじゃ」
「はい、手続きはしておきますね」
ミルケさんがそう応えてくれるのを聞きながら工房の方へ渡り廊下を渡るのじゃ。
渡り廊下から繋がった区画は厨房を含めた各種作業場があるのじゃ。そこでは当然のようにアイラメさんと狐の人がゴリゴリと薬研で薬種を挽き潰しておるのじゃ。
「だってこのミチカ式魔法薬研すっごく使いやすいんですよ! 匠合も注文を出してますけどミチカ式を作ってる工房は作るものが多すぎてすぐには出来てこないんです」
「カレー粉を量産するよう指示が出てるんですよ。他の港にトウガラシが来てないか匠合の伝手で探してますし」
なるほどなのじゃ。
まあ二人は置いておいて、本来の入り口方面の区画へ進むのじゃ。
元々の倉庫区画、ここも梁に滑車とレールをつけたりと工夫したのじゃがそれを活かすような予定はあらぬのじゃ。低温倉庫にしたりと言う考えで倉庫内に倉庫を建てるという変な構造になっておる所もあるのじゃ。
あと荷車置き場なのじゃ。
荷馬車は箱馬車と馬は共通で運用するゆえ必要になるまでここに保管されるという体制なのじゃ。
そしてその横に二階建ての簡単な建物が建っておるのじゃ。倉庫内倉庫はこの建物の練習でもあったのじゃ。
ここは子ども等の住居なのじゃ。外に寮を作っても良かったのでは、とあとで思うたのじゃが作ったものは勿体ないゆえ使うのじゃ。
様子を見ようと思うたらガントがおったのじゃ。
「手洗いなどの使い方を教えておりました」
確かに魔法具化されておるゆえ説明が必要なのじゃ。
「おお、ご苦労なのじゃ。しかしオルンから子ども等のことを頼まれておったのはサーデとマーセではあらんかったかや」
子ども等の世話をしてくれておったガントに感謝するのじゃ。そして気にしておらんかったのじゃが、双子等はわらわに着いてくるよりその役目をしておるべきであったのではあらぬかの。
「ふふん。兄ちゃんも二度手間はいやなのだよ」
「あたしたちが説明したら訂正してもっかい説明し直さなきゃだからね」
恐るべき自覚を持っておるのじゃ。
「いや、そこも成長して欲しいって兄さん思ってたかも。居ない隙に二人で討伐依頼受けて行っちゃうあたり完全に失敗だけど」
「まだまだ人を見る目が足りないね」
「オルン兄ちゃんも甘いね」
ガントは頭を押さえておるのじゃ。兄と言うのも大変なものなのじゃ。
まあそれは良いのじゃ。
「で、子ども等はどんな様子かや」
そう問うと、子ども等自身が出てきたのじゃ。
「ほ、本当に俺たちがこんなとこで寝ていいんですか」
なにやら先ほどの食事の時にもやったようなやり取りなのじゃ。うむ、もう面倒なのじゃ。
「そう言う質問はもう良いのじゃ。して、不都合はあらぬかや? 暮らしてみてなんぞ出てきたらガントか戻って来おったらオルンに伝えるが良いのじゃ」
「は、はい」
「一応そのほうが安心できるかと思うて一階が男の子等、二階に女の子等が寝るよう寝床を入れておるが実際の部屋割りなぞは其方等が好きに変えて構わぬのじゃ」
「お気遣いありがとうございます!」
兄二人が緊張しつつわらわに受け答えをしておるのじゃが妹等とまだ幼い男の子等は興味深そうにわらわを見たり、建物の中をバタバタ行ったり来たりしておるのじゃ。
室内を見分する必要もあらぬゆえ己等でしっかりと部屋を整えるよう言いおき、ガントも取り敢えず置いたままわらわ等は母屋に戻るのじゃ。
厩舎なぞ見ておらぬ施設もあるのじゃが、なんとのう一回りした気分でもう良いのじゃ。
お読み頂きありがとうございました。
次回更新未定ですが最低でも週末にはやる積もりです。