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新居探訪その一なのじゃ

こんにちは。

明日からは本当に投稿できるかがわからなくなります。

エタらせる気は無いのですがご迷惑をお掛けします。

よろしければ気長にお待ちくださいませ。

 わらわは荷解きなぞの労働に関して直接的な関与を断られてしまうゆえぐるっと見て回るのじゃ。

 本館二階に聖務室と私室、寝室とわらわの部屋が三部屋もあるのじゃ。正直私室は要を感じぬのじゃが、形式として必要と言われ置くこととなったのじゃ。


 聖務室にはわらわの机として重厚な作りの机が、そして秘書や事務員の実用的な作業机、簡易の祭壇となる飾り棚と書棚、瀟洒な細工の衝立と応接セット、と必要そうなものが厚い絨毯の上に配置されておりここの作業は書類の分別整理くらいのことなのじゃ。


 その作業はミルケさんが連れてきた商業組合の下働きの人等がやっておるのじゃ。

 一部の書類は新たにミルケさんの仕事部屋と決まった隣の部屋へと運ばれておるようなのじゃ。

「今日のようにミルケさんが行ったり来たりせぬでもよいよう連絡員を置くならメイドさんなぞに顔通しをしておくのじゃ。文字を覚えたら倉庫におった子ども等の誰ぞを使うのも構わぬのじゃ」

「そうですね。私の業務を手伝ってもらえるくらいになってくれると助かるのですが」

「ミルケさんは有能ゆえ後進がたすけになるのは難しそうなのじゃ」

 ミルケさんは「今日はお世辞ばかりですね」と笑って流しておったが、わらわとしては結構本気トーンなのじゃ。ミルケさんの補佐とかハードルが高いのじゃ。


 私室は聖務室よりプライベート、と言うことになっておるのじゃが要は客を入れるとき一階の応接室や控えの間へ案内する、聖務室の応接セットへ招く、私室で語り合う、で対応のグレードが変わると言うだけなのじゃ。


 形式上はプライベート空間と言うことで聖務室よりは簡素な机や棚、しかし高級な応接セットと言う構成なのじゃ。足下の絨毯は聖務室と一緒のものなのじゃ。

 遊びのものを飾るのも良いと言うことで適当な絵画と工芸品を発注しておいたのじゃ。これはまだ来ておらぬのじゃが商業組合の組合長が見立てることになっておるゆえ大外しはなかろうと思うておるのじゃ。


 遊びと言えば盤上遊戯の類も備えてあるのじゃ。クロックノールは外側に装飾的な彫刻が施された専用の台が備え付けられておるのじゃ。似たようなものは階下にもあるのじゃが、理由は簡単なのじゃ。

 クロックノールは机の上でやるよりは樽に乗せたほうがやりやすいのじゃ。しかし樽では高級感が足りぬと言うことでわざわざ己の仕事を増やして専用台を作り始めておるのじゃ。


 わらわは樽もなかなかに侘びた風情があると思うておるのじゃが、富裕層をターゲットとして見たときわかりやすい高級台座のほうが確かに良いのじゃ。

 王と鯱、つまり碁の駒石も蛤の貝殻を使つこうたものがどんどん生産されておる様子なのじゃが、これも同様の高級志向なのじゃ。

 安く普及させるほうも数をしっかり作っておるようで、今度が楽しみなのじゃ。


「この部屋とさっきの聖務室の使い分けが全く理解できないね」

「まあそうであろうの。わらわとしても理解はできぬ訳であらぬのじゃが共感はできぬのじゃ」

 実際の話、無駄なのじゃ。自分の部屋を見るのではのうて、わらわについて歩いておるモリエの呟きにわらわも同感なのじゃ。

「まあミチカは偉いんだよ」

「偉い人は勿体をつけるもんだね」

 同様に着いてきておった双子等は案外当を得た見識を示すのじゃ。

「何にせよ面倒であることなのじゃ」

 そう言いながら次の扉を開けるのじゃ。


 この私室には廊下への扉の他に聖務室と寝室への扉があるのじゃが、更にバルコニーに出る扉もあるのじゃ。

 外壁と内壁とその間の冷暖房用の隙間、と言う分厚い壁の構造になっておるゆえ二重の扉なのじゃ。まあ防犯的にも良いのじゃ。

 バルコニーでも茶ができるようにお茶用のかわいらしい丸卓と椅子が備えられ、バルコニーの端の棚に夏用の大パラソルなぞを収納しておけるようにしてあるのじゃ。


 ちなみに手すりや欄干を初めとした装飾彫刻の類はわらわの作で、室内の階段の手すりや欄干の細工は内装職人に任せたゆえその分の情熱をこのバルコニーにぶつけた自信作なのじゃ。

 わらわは<防寒>によって今でも平気なのじゃが、ここの真価が発揮されるのは晩春以降となるのじゃ。と言うわけでここは扉を開けてみるだけなのじゃ。


 わらわの三部屋目、寝室こそが真の私室なのじゃ。手頃な書き物机に書棚、お茶や軽食に使う小テーブル、そして天蓋付きの寝台に衣裳棚とプライベート空間の装備が整っておるのじゃ。

 寝台の下は毛皮、書き物机と小テーブルは別の模様が織り込まれた柄織りの絨毯、と足下も楽しい雰囲気に整えられておるのじゃ。


「この部屋は廊下から出入りする扉はなくて、さっきの私室と専属のメイド部屋からしか出入りできないんだね」

 なかなか防衛的に優れた構造なのじゃ。逃げ道があらぬとも言うのじゃが。

 まあ逃げねばならぬ場合を想定できぬし、その場合は壁を抜けば良いだけなのじゃ。


「一応窓もあるのじゃ」

「窓、狭いよ」

「モリエはいけるかもだけど、あたしはもうお胸がつっかえるね」

「いや、流石にまだ私の方があるから」

 モリエがサーデを捕まえながら言うておるのじゃ。まあ正直わらわはなんとかくぐれると思うのじゃが、双子等も厳しいであろうの。


 <光明>の魔法具のお陰で採光を考える必要があらぬと最低限の換気窓だけで良いのじゃ。

 聖務室は高級な輸入品である板ガラスの窓を備えておるのじゃが、あれは見栄なのじゃ。温度管理にもおいても劣るしの。


 ちなみにメイド部屋を主人が覗くのはマナー違反ゆえ放置なのじゃ。

 メイドさん等の秘密の部屋なのじゃが、部屋だけでのうて建設の段階で図面に使用人用の通路があって面白かったのじゃ。

 ニンジャ屋敷なのじゃ。わらわには使えぬゆえ残念なのじゃが通路の端で陰になっているところや布がかけられておるところなぞから繋がって使用人通路が張り巡らされておるのじゃ。


 メイドさん等の神出鬼没はそう言うニンジャめいた使用人通路に依るものなのじゃ。それを使いこなすのもメイドさん等の技術のうちと言ったところかの。


 二階にはその他モリエの部屋と双子等の部屋があるのじゃ。二階に館の主の部屋があって普通男女で使う階層を分ける、と言うルールの組み合わせで二階が女子の部屋のある階となって三階が男子の部屋の階となるのじゃ。

 まあオルンには防犯というか警護のために玄関横の部屋に入って貰うゆえ三階に住むのはガントだけなのじゃがの。


 で、モリエの部屋なのじゃが確かにわらわに着いて歩いて平気なのじゃ。

 寝台、衣裳箪笥、弓懸け、作業台、作業道具を片づける棚、これでおしまいなのじゃ。

「作業台があって嬉しい。今までの五人部屋だと矢を作るのにも一苦労、と言うか宿の食堂で作ってたからね」

「それは良かったのじゃ。工房のほうの作業場も使って良いからの。そして飾り棚や布やなにやの飾り物も考えるとするのじゃ」

 衣裳棚については言うたものの他は自主性に任せた結果女子力が低い部屋になっておるのじゃ。まあシンプルなのも良いのじゃが、その場合せめて壁紙をかわいくするのじゃ。


 双子等の部屋は結構多かった荷物を適当に投げ込んであったはずなのじゃがメイドさん等が既に片づけておったのじゃ。

 これはメイドさん等に甘やかさぬよう伝えておくべきであるのじゃ。

「えー、いいじゃん!」

「良くはあらぬのじゃ」

「私は逆に弓を分解してるときとか広げてるのを片づけないよう頼んでおかないとね」


 己でも実際には荷物が多いことに気づいておったらしゅうてちゃんと棚が両方の部屋にあるのじゃ。鎧や槍を置くための棚と読み本や雑多なものを置く棚が分けられておって将来的な余裕もあるのじゃ。

 二人の部屋を繋ぐ、共用のウォークインクローゼットも良い感じに出来ておるのじゃ。

 メイドさんには甘やかさぬと同時にたまに査察を入れて部屋環境がきちんと維持されておるか確かめるよう言うておくのじゃ。


 二階には他にゲストルームもあるのじゃが、そこはまだ内装がなされておらぬただの空き部屋なのじゃ。

 住むに必要なところをだいぶ急がせてやってもろうておるゆえ残りはゆっくり余裕を持ってやってもらいたいものなのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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