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宗十郎頭巾とは鞍馬天狗のかぶっておるあれなのじゃ

こんにちは。

今日も短めですがよろしくお願いします。

 気を取り直してお代わり分を作るのじゃ。

 ついでに魚醤ペーストを蒸留酒で延ばし、砂糖を少々加えたソースを塗ったクラーケンを焼くのじゃ。焼き烏賊なのじゃ。

 関西風の小麦粉の生地に烏賊を混ぜた烏賊焼きは焼そばとかぶるゆえまた今度なのじゃ。


 焼そばのおかげで魚醤ペーストに対する忌避感が薄うなった様子ゆえ大丈夫と見たのじゃ。

 最初が焼きクラーケンでは難しかったかも知れぬの。

 クラーケンのほうはクラーケンの味が淡泊であることと歯ごたえがあり過ぎることが問題であったのじゃが、味を補って食べやすいサイズで提供すれば解決なのじゃ。


 怪傑烏賊頭巾なのじゃ。あれは確か宗十郎頭巾と言うのであったのじゃ。

 そのようなどうでも良いことを考えながら味を見るのじゃが、焼いておるゆえ臭気も程々飛んでおってわらわは問題のう食べられるのじゃ。

 他のものの様子も概ね大丈夫なようなのじゃ。


「アントバよ、保温箱に入れるゆえ神殿にお裾分けを持って行ってくれぬかの。以前リーディンとラ・メェネの話をしたのじゃが、焼いたものはリーディンにも珍しかろうと思うのじゃ」

 タンクトップおじさんが目に入ったゆえお使いを頼むのじゃ。いや、別段タンクトップおじさんでのうても良いのじゃが、一番神殿に顔を出しやすそうであったのじゃ。


「はい、かしこまりました。しかし、使わないまま時の経ったクラーケンの身を捨てていたのが勿体ないですな」

 タンクトップおじさんは下働きのものに保温箱を受け取るよう手で指示しながらそう応えたのじゃ。

「とは言えマーティエのおっしゃるギョショーペーストが充分にないと同じものは難しそうですな」

「作るのもありなのじゃが、工場の臭いは凄まじいものになるゆえその点を気にかけて建てる必要があろうの」

 近隣に住民がおらば苦情出まくりで疑いあらぬことなのじゃ。


 そこで思い出したのかタンクトップおじさんが話をし出したのじゃ。

 双子等が小鬼ゴブリン退治をした海岸での作業で碁石を採る貝殻と屋台で出すクラムチャウダー用の貝の身を回収したことを報告されたのじゃ。そしてミルケさんの推測通りその辺りに拠点を建設する計画も相談されたのじゃ。


 ミルケさんの言うておった農場の話なぞも加わると結構な大事なのじゃ。ズークさんの甜菜畑は茶畑のある村での試験栽培は成果が出ておるゆえ試験栽培に携わったものを指導員に耕作地拡大を目指す時期でもあるのじゃ。

 わらわとしては農場計画を応援しておくのじゃ。


 応援する理由の一つは言外にズークさんが慌てて生産量を増やそうとしておるのがわらわに関わった所為であると言われたことなのじゃが、流石にそれに関しては自覚があるのじゃ。うむ、道義上応援する責務があるのじゃ。

 それ以外にもジャガ芋畑他各種栽培実験なぞでわらわの利益は大きいゆえにの。


「メルギ理事が難色を示すのは当然で、船着き場などは港湾協会内部での許認可で進めることが出来るのですが農民を住ませて村にすると総督府からの許可が要るようになります」

 ミルケさんがそう説明してくれるのじゃ。内容に比べて余裕が見えるのじゃが、その理由を続けて語ってくれたのじゃ。

「しかし、ギョショーペーストや他の加工物のための工場を建てるとやはり許可が別に必要となりますので農場の計画とまとめても認可が下りるまでの時間なんかは変わりませんね」


「いえ、もとより農場もマーティエのお喜びになられる施設であれば否やありませんぞ」

 調子のいいことを言っておるのじゃ。

「ジャガ芋の指導にジックキョルトのほうから獣人の農家のかたをお呼びするのですが、そのギョショーペーストの製法を知っている獣人のかたも探さねばなりませんね」

「ついでに、と言うか更にマーティエの意に添うならば街の子ども達から新村での働き手を雇用することを考慮に入れるべきだな。ただ、子どもを強制労働させているのではないことをきちんと示せるようにしておかねばならんが」


 そのようなことに関して二人でそのまま暫し語り合い、一頻り語り合った後にタンクトップおじさんは神殿へと向かうために退出したのじゃ。

 有意義な話が出来たことに感謝し、礼拝所の開所に立ち会えたことに感謝し、クラーケンの焼きラ・メェネに感謝し、と感謝三昧の挨拶をしていったのじゃ。

「有意義な話ができたのはむしろこちらですね」

 ミルケさんはそうわろうたのじゃ。


 そう言えばミルケさんに伝えるべきことがあったのじゃ。

「そう言えばミルケさん」

「はい。どうしました?」

「わらわの聖務室の横の部屋は其方の仕事部屋にすると良いのじゃ。自由に使つこうてもろうて構わぬのじゃ」

 わらわがそう言うとヒシッと手を捕まれたのじゃ。

「あ、ありがとうございます!」

「いや散々わらわのために働いてもろうておるし、それはこれからも続くのじゃ。その為の仕事部屋なのじゃ」


「まだ客室なぞの内装は済んでおらぬゆえ、仮眠用の寝台を入れたいなぞの要望があれば言っておいてくれればまとめてして貰うのじゃ」

「重ね重ねありがとうございますぅ」

 あ、ミルケさんが少し崩れておるのじゃ。珍しいゆえこちらもそこそこ嬉しいのじゃ。


 調理全般のサポートと癒し担当のモリエ、修道会関係の仕事全般担当のベルゾ、そして商業組合関連以外にまで及ぶ事務処理と各関係先との折衝担当のミルケさん、この三人の存在はわらわにとって極めて重要なのじゃ。

 常に厚く報いたいものなのじゃ。


 それで言えばベルゾの部屋も、と思うたのじゃが修道会本部に自分の聖務室を構えるよう以前に言っておったゆえそれで良いのじゃ。ベルゾにだけこの屋敷の部屋をやると、きっとジーダルが拗ねるのじゃ。うむ。


「とまあ、ミルケさんの部屋が決まったところで引っ越し作業再開なのじゃ。昼餉もよう食うたようであるしの」

「はーい」

 皆、笑いながらの返事があったのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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