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いあいあウスターなのじゃ

こんにちは。

今日は引っ越しでした(>_<)

遅くなった上短めです。申し訳ない。

月曜からは業務スタートなのでどうなるかわかりませんが出来得る限り頑張ります。

 烏賊焼そば、いやクラーケンの焼きラ・メェネは簡単な料理なのじゃ。

 クラーケンは巨大なブロック状の身から一口大の短冊を取るのがなにやら面白い体験であったのじゃが、まあ切り分けてしまえば烏賊なのじゃ。

 今回の肝となるのはエビと沖アミを撞き潰して海水と混ぜて発酵させた魚醤っぽいペーストなのじゃが、こういうものはしっかりと炒めることで匂いは飛ばせるのじゃ。


 麺は軽く炒めて一旦火から離し、クラーケンやキャベツっぽいものを除く野菜類に火を通してから戻して混ぜ合わせるのじゃ。そしてキャベツの千切りを被せて蒸し焼き状態にするのじゃが、このあたりで魚醤ペーストも炒め始めるのじゃ。

 竈の二口にまたがる大きめの鉄板であるゆえ大量の焼そばを焼きながら同時に他の作業も出来るのじゃ。


 問題点は臭気が飛ぶまでの換気なのじゃが、<微風>を使いこなせるわらわであらば完璧な換気パフォーマンスを発揮することが出来るのじゃ。

 魚醤ペーストの臭気が強い間は換気口へとスムースに流し、ウスターソースと合わさってなんとも食欲を誘う匂いになった時点で周りに香りのお裾分けをバラ撒くのじゃ。

 調理の匂いは上手に使えば客寄せになると言う話なのじゃ。


 キャベツがしんなりとしたあたりでウスターソースを混ぜた魚醤ペーストを麺と混ぜ、更に追いウスターで香りを爆発させるのじゃ。

「すごい! 美味しそうな匂いになってるよ、ミチカ」

「ミチカちゃん、これは麺をスープに入れないんだね」

 説明しておらんかったのじゃ。確かに魚醤ペーストをベースにしたスープに麺が入っておるのを想像しては食べるのが困難そうに思えるのじゃ。


「この前作ったウスターソースを活かす、クラーケン料理! クラーケンの焼きラ・メェネとなっておるのじゃ!」

 皿に盛ると指示通りにメイドさんがネギ状のハーブを散らして給仕し出すのじゃ。まあ、味見はしておらぬのじゃがウスターは完璧ゆえ大丈夫なのじゃ。


「うっ、こっちはミチカのよりべったりとしてる。火の通しかたが難しかったみたい」

 モリエ担当の魚醤ペーストなしのバージョンは少しべったりなのじゃが充分許容範囲なのじゃ。

「それぐらい問題あらぬのじゃ。魚醤ペーストが生理的にダメなものはそちらを、そうであらぬでも食べ比べたいものも多かろうから少な目に盛った小皿を多く用意するのじゃ」

「はい。小皿はすでにこちらに」

 メイドさんには想定の範囲内の指示であったようなのじゃ。


「ふむ、美味しいですな。これはエビの気配が遠く感じられるこちらのほうが美味しいですぞ」

 タンクトップおじさんは魚醤ペーストで出た味の深みが気に入ったようなのじゃ。

 わらわも食べてみておるのじゃが、正直思うておったより美味しく出来上がっておるのじゃ。魚醤ペーストのポテンシャルは高いのじゃ。


 クラーケンは少々固く歯ごたえがあるのじゃ。切ったときには歯ごたえが足りぬかと思える柔らかさであったのじゃが火を通すと固くなるのであろうかの。

 次からはもう少し小さく切るのじゃ。

 味的には淡泊なのじゃが、しっかり噛む必要がありそしてよく噛むことで味が出るゆえちょうど良い感じでもあるのじゃ。その点では今ぐらいのサイズに切るのが正解であるのじゃ。

 難しいのじゃ。


「美味しいです! 正直お母さんの料理より」

 先ほど母親の料理を思い出して泣いておった馬耳少女のアルミアーフェがそう言うておるのじゃ。

 獣人同士と言うこともあってか、と言うか小さい弟妹を持つと言うておったゆえ慣れておるのか狐の人が面倒を見てやっておったのじゃ。うらやましいのじゃ。

 病気で寝込んでおった少女、ルッテも馬耳ちゃんと仲良く狐の人に懐いておるのじゃ。わらわが未だモフらせてもろうておらぬ狐の人の尻尾に抱きついておるのじゃ。うらやましいのじゃ。


「こんな美味しいもの食べたの初めてです。いや、前にマーティエが港湾協会で差し入れてくれた蛤のスープも美味しかったから初めてじゃないです」

 混乱しつつも年長の兄等も全力で感謝を示しておるのじゃ。餌付け成功なのじゃ。ニヤリ、なのじゃ。ふふふ。

「お、俺たちがこんな美味しいもの食べていいんですか?」

 男の子の一人が半泣きでそう言うておるのじゃ。これまでどんな目にあったのであろうかの。

「無論構わぬのじゃ。と言うより好評であったゆえ安心して作り足すのじゃ。お代わりは少し待つと良いのじゃ」


 今度はモリエが魚醤ペーストを使うのじゃ。正直、思ったより美味しゅうできた上に思ったほど人に忌避感がなかったのじゃ。

「匂いがすごいと思ったけど、確かに炒めたら大して気にならないね」

「むしろこの匂いの先に美味しい気配を感じる。悔しい」

「けどこのイアイアウスターの匂いに紛れて誤魔化されているのかも」

 モリエと双子等が魚醤ペーストに関して考察しておるのじゃが、ちょっと気になったのじゃ。


「そう言えばイアイアウスターですが、ベルゾさまからのご提案もあって『鳥籠と熊』亭へまず先行で提供を始めることにしました。調合師錬金術師匠合との調整は出来ていますので後で書類にご署名を」

 ミルケさんなのじゃ。

 内容は納得なのじゃ。と言うより婆さまの仕事が速いのじゃ。


 なのじゃが、問題はその名前なのじゃ。

「う、うむ。了承したのじゃ。名前はそうなったのじゃな」

「はい、何か問題がありましたか?」

「いや、大丈夫なのじゃ」

 うむ。完成時に「いあ! いあ! ウスター!」と唱えたばかりに愉快なことになっておるのじゃが訂正するのも説明が難しいのじゃ。

 ウスターシャーの中の人には心の中で謝っておくのじゃ。まこと済まぬのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

いつの間にか投稿開始から半年が過ぎておりました。

砂を積むような成長しなさ具合には目を瞑り、皆さまにはひたすらの感謝を!

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