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スローライフなのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。

6/7に引っ越して6/10から新しい業務に就くため更新がお約束できない状態です。

引っ越し作業の現実逃避で執筆する予定ですけど。

 あっと言う間に引っ越しの日となったのじゃ。

「引っ越しが成ったら商業組合での試食会の準備なぞも本気で取り組まねばならぬし、他にもいろいろと取りかからねばならぬゆえ、ここ暫くのスローライフな日々もおしまいなのじゃ」

「はい。試食会の準備はよろしくお願いしますね。そしてすろーらいふとはなんですか?」

 朝食後、三週間ばかりを過ごした宿の部屋を見渡してそう言うておったら朝から来ておったミルケさんに尋ねられたのじゃ。

 どうでも良いのじゃが、今生の一週は六日ゆえ週の数が増えてくると感覚にズレが生じるのじゃ。どうでも良いと言いつつ少しだけ気になるところなのじゃ。


「スローライフとはの、またりゆたりとしたまあのんびりとした生活のことなのじゃ」

「えっ」

 ミルケさんが絶句したのじゃ。なんであろうかの。

「ミチカ。ここ数日の、そのすろーらいふな日々でなにをしてたか覚えてる?」

 謎の反応に答えを求めたところ、モリエから逆に問い返されたのじゃ。

 今朝の護衛はモリエのみで双子等は宿を引き払って荷物とともに新居にやってくる手筈なのじゃ。


「ここ数日のう」

 光明の魔法具なぞを設置しに来た魔法具工房の人から魔法具の陣や魔力を通す導線の設置についてなぞを学び、わらわが作った<加熱><冷却><微風>を利用した魔法具の設置を手伝ってもらったりしたのじゃ。

 これはエインさんのところの工房で神殿や修道会から魔法陣を提供されて魔法具を作っておる職人さん等であるゆえ問題はあらぬとの判断なのじゃ。


 石の外壁と木造の内壁との間にわずかな空間を作り、床下や天井裏の空間と繋いでそこの空気を魔法具で暖めたり冷やしたりで建物全体の冷暖房を行う仕組みなのじゃ。窓の部分に深い奥行きが出来たり厨房の床下収納を作るのにこちらは断熱をせねばで手こずったりと言う些細な構造上の問題はあったのじゃが良いものができたと思うのじゃ。

「今ある建物に使えるよう改装するのは手間なのじゃ。新築にしか使えぬのであらば魔法具としてそう大したものではあらぬのじゃ」

 職人さんも魔法陣には興味を示しておったのじゃが、建物の構造からそのために築いてあることには呆れ気味であったのじゃ。


「消費魔力量の評価次第な部分はありますが、建物のほうの工法とともに組合に登録しております。建物の建築に関しては大工、内装、そして魔法具の三職が図面段階から共同でことに当たるべきでは、と言う問題提起がなされているようですね」

 確かにわらわは己自身の魔力にしろ抱えておる魔漿石の在庫にしろ潤沢であるゆえ消費魔力量を気にせぬのじゃが実際には重要な要素なのじゃ。

「なんなら部屋の空気を直接暖めたり冷やしたりしても良いのじゃがそれこそ魔力がふんだんに必要となろうの」

 直接的なエアコンの考えなのじゃが、魔力の低いものも一緒に暮らすことを考えると各部屋に魔力を使うエアコンを設置するより一元管理のほうが良かろうと判断したのじゃ。己が使う分には気にする必要はあらぬのじゃが、モリエやメイドさんが使いにくいようではダメなのじゃ。


「そう言えば魔法具設備の設営作業の他、工房のほうに木工細工と調合作業をする作業場をそれぞれ作ったりもしたのじゃ。アイラメさんや狐の人が入り浸るのは別段構わぬしの。いや、むしろ楽しいのじゃ」

 余分に木材を置いておいてもろうたおかげでいろいろな設備の拡充も容易いのじゃ。大工仕事を祈祷の力で省力化できるのはありがたいことなのじゃ、と言うことで<洗浄>があっても天気のいい日は干したいというメイドさんの希望で裏庭に物干し台を作ったりもしたのじゃ。


「大工仕事に関しては燻製所もやっていただきましたよね」

 ミルケさんに言われて思い出したのじゃ。

 燻製肉、ベーコンの試作が非常に好評であったゆえ試食会を待たずに前倒しで燻製所を作ったのじゃ。箱はわらわの工房と同じく既存の空き倉庫改装で要はわらわは中の燻製小屋を建てただけなのじゃ。

 まあ忘れる程度の仕事であったのじゃ。

 材木問屋のご隠居はその建築用の木材の供給の他、大量の燻製用チップの発注に目を白黒させておったのじゃ。


「<経時>に頼らず時間を掛けてやる手順も教えて頂いて、次の燻製所はミチカさんのお手を煩わせることなく立ち上げが出来るようです」

 なんと、もう二号が立つ段であったのじゃ。いや、そこまで従来の塩漬け肉や燻製肉に不満があったのであらば、もう少し努力をしておくべきであったであろうにの。

「ミチカさんの指示された複数の人間が一つの行程ごとに分かれて専属で仕事をする体制は非常に生産性が良いと報告があがっております。やり方を活用できる他の業種への技術供与に関して許諾を得たいという書類が来ておりますね」

 一人の人間が最初から最後まで出来るほうが正しい職人の姿なのじゃが分業体制の工場制手工業、マニファクチュアのほうがとりあえず大量生産には向くのじゃ。


「構わぬのじゃが、技術の継承を考えるときちんと何でも出来る職人を育てるべきであることを忘れぬよう言うておいてくりゃれ。逆に行程の全貌を見えぬようにすれば技術の流出を事前に防ぐことも出来るのじゃがの」

「はい。伝えておきます」

 まあそうやって燻製は他に回せたゆえわらわは自家消費分を楽しみに作っておればよいのじゃ。あとスモークサーモンのような冷燻でつくるものは経験があらぬゆえうろ覚えの知識で試さねばならぬのじゃ。

 温燻、熱燻のたぐいは父さまが燻すとき手伝っておったのじゃが、父さまも冷燻はやっておらんかったのじゃ。


「魔術も色々してたよね」

「うむ、勉強になったのじゃ。双子等にも良い経験になったようであったのじゃ」

 双子等と一緒にガントの師匠のおばあちゃん先生に魔力の扱い方や規則を習ったり、ベルゾの師匠の空飛ぶ大魔術師に幾つかの魔術や魔法陣の拡張子要素を教わったりとお勉強したのじゃ。


 魔力の扱いが上達したり、魔術と魔法陣の知識が増えたりしたことは無論喜ばしいのじゃが、魔力を扱うものの常識的な部分を改めて学べたことは大きいのじゃ。

 魔術の魔法陣に祭文を合わせて祈祷にしてみたり、新しい魔術や祈祷の開発を試みたりとかなり有意義な時間を得れたのじゃ。スローライフさんのおかげなのじゃ。


 そう満足げに頷くわらわになんとも言いようのない目を向けてモリエが言うたのじゃ。

「それだけ動き回るのをのんびりとか言うんだね。一週間にも足りない数日だよ、それ」

「言葉の定義から疑うべきのようですね」

 な、なんという言われようなのじゃ。


 しかし確かに思い返すと期日に追われておるわけではあらぬゆえ個人的にはまったり気分であったのじゃが案外忙しのう動き回っておったようなのじゃ。

 うむ、これからはハイスピードスローライフアクションを標榜するのじゃ。いや適当に言うただけなのじゃ。



お読み頂きありがとうございました。

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