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海には海の、山には山のゴブリンがおるのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします!

「サーデとマーセは槍の稽古が禁止されておる間ガントかあるいは別の師匠のもとで魔術や魔力の扱い方を学ぶと良いと思うのじゃ」

「え、お勉強ぅ」

 サーデは反射的に厭そうな顔をしたのじゃがマーセがそれを制したのじゃ。

「<早足>と<跳躍>が凄く役立ってる。海小鬼(ゴブリン)なんて敵じゃないくらい」

「そっか。そうだよね」

 ガントも食べかけておったヴルストをしっかりと食べ終えてから頷いたのじゃ。


「二人は<早足>と<跳躍>を使うようになって魔力が伸びておるのではあらぬかの。魔力が増しておるのに扱いかたがおぼつかぬ様では危ういのじゃ」

「そうですね。私が教えるよりも師匠に相談してみたほうが良い気がします」

「甘えが出るようであらばベルゾの師に頼むこととするのじゃ」

 モリエも伸びておる可能性はあるのじゃが、残念ながらわらわには判別できぬのじゃ。


「んふふ、兄ちゃんを超える魔術師になっちゃうかもよ」

「そしたらどうするー?」

 双子等も結構前向きなのじゃ。<早足>と<跳躍>の組み合わせが自分らの戦闘スタイルに噛み合ったことが良い体験となっておるのじゃな。

「どうするかと言えば、モリエが<経時>の魔法具を使う係として捕まえると思うのじゃ」

「うん、逃さないね」

「ええーっ」

 軽口を叩きながら、結局罰になっておらぬことに気づいたのじゃがまあ黙っておくのじゃ。


 ついでにどうでも良いことながら海小鬼(ゴブリン)がどんな魔物であるのかも訊いておいたのじゃ。

 小鬼ゴブリンの亜種、ですらのうて海辺に生息しておるただの小鬼ゴブリンをそう呼んでおるだけであったのじゃ。

 海辺でナマコやヒトデを拾って食っておるらしいのじゃが、近隣に人がおれば襲いかかってくる迷惑な魔物なのじゃ。

「所詮は小鬼ゴブリンなので弱いんですが、群を作っていることがあります。年が明けて見習いが取れても駆け出し二人ではお勧めされない依頼ですね」


「漁師のおっちゃん達が自分らで始末するから普通あんまり見ない依頼なんだよ」

 流木で殴ってくる、落ちている石なぞを投げてくる、その程度の攻撃しかしてこぬ小鬼ゴブリン風情では厳しい漁師仕事をしておる海の男等に勝てようはずもあらぬのじゃ。

 タンクトップおじさんと小鬼ゴブリンが対峙しておる図を思い浮かべてみたのじゃが、あの筋肉に対して小鬼ゴブリンの勝ち筋なぞ毛一筋分も見あたらぬのじゃ。いやタンクトップおじさんは偉い人でそんな戦いをするはずもあらぬのじゃがの。


「ミチカちゃんが貝とか海藻とかを欲しがった結果発注された依頼らしかったよ」

 なんと、わらわに関係した依頼であったのじゃ。ちょっと驚きなのじゃ。

「うむ、それは礼を言うておくのじゃ。しかし冬に海岸べたで無理をさせぬよう言うておくべきかの」

 わらわの求めるものを揃えてくれようと言う厚意はありがたいことなのじゃ。が、それで無茶な仕事を押しつけられておるものがおるようでは心苦しいのじゃ。


「貝掘りしてる間周辺の警戒もしたけど、荷物運びの子もみんなモコモコに着膨れてたし」

「うん、ちゃんと暖かそうだった」

 考えられておったようで良かったのじゃ。

「しかし、そんな近くに小鬼ゴブリンが出る様な海岸があるのかや」

「東っ側に小舟に乗って行ったんだよ」

 それで説明は済んだ、とばかりに胸を張るサーデから視線をガントに移すと簡単に答えてくれたのじゃ。


「マインキョルトの東側はクーノン王国へ向かう街道しかないですから。街道はしっかり警備されていますけど、漁村や農村がないのでそれ以外は放置ですね」

「小舟で海から行くのは賢いね。国の内側に繋がってる西や南より一応は危ないから」

 東側の魔物の動向調査は駆け出し冒険者が魔物相手の戦闘経験を積むのに適した仕事と認識されておるらしいのじゃ。雪の椿も何度かこなした経験があってそれで双子等も自信を持っておったらしいのじゃ。


「それは一回の貝掘りのため、じゃなくてその周辺に船着き場を作って拠点化するおつもりなのかも知れませんね」

 ビール片手にじっくりとヴルストの食べ比べをしておったミルケさんが顔を上げてそう言うたのじゃ。あまりに熱中しておったゆえ聞いておらぬと思うておったのじゃがちゃんと耳は働かせておったのじゃな。


 各種作っておったヴルストに対してそれぞれ簡単なコメントと商品化する場合の要望なぞが書き込まれた木札を渡されたのじゃ。

 確かにヴルストは美味しいのじゃが、ミルケさんの心をここまで掴むとは予想の他であったのじゃ。

 ちなみに酒飲みだけあって辛目のものが好みのようなのじゃが、保存携行食とするなら水分が多く必要となる分不向き、と客観的な評もしておってそのあたりが流石ミルケさん、と言った感じなのじゃ。

 横からミルケさんの評を覗き込んだガントが己の分の評を真似して書き始めたのじゃ。ガントも相当にお気に入りなのじゃ。


「東側に漁村があっても良いのでは、と言うお話は以前からちょっとありましたから」

 とミルケさんは推測の根拠を述べたのじゃ。

 そしてその話は商業組合にも関わりがあると言うたのじゃ。いや、言い方からすると商業組合と言うよりわらわに関わりがあるのじゃ。


「ズークさんの畑が元々の茶畑周辺に御座いますが、毒芋、失礼ジャガ芋などミチカさんが求めておられる作物を育てる農場が必要ではないかとの話もあってその場合の候補地も東側なのです」

 なるほどなのじゃ。評判の悪い作物、変な匂いの出る加工工場、出入りする宗教関係者や武装した冒険者、うむ、先住の住民がおらぬ新しい村のほうが良い気がするのじゃ。


「漁港と農村を合わせたものになるにせよ、別個ながら連携を取るにせよ悪うない提案なのじゃ」

 確かにいろいろとやってみる実験農場は欲しいのじゃ。気候環境的に難しい可能性は高いとは言え香辛料やハーブも栽培できるものがあるやも知れぬしの。

 しかし流石に行政からの認可なぞが必要であろうし大変そうなのじゃ。


「ちゃんとしたご提案が出来る段になりましたら組合長が言って参ると思います」

「ふむ、楽しみにしておくのじゃ。とりあえずはズークさんの地所で実験できるところは実験しておくつもりではあるのじゃがの」

 考えれば近隣での雇用の創出も今わらわ等が抱える孤児問題に関する重要な回答の一つなのじゃ。うむ、無駄のあらぬ良い施策であるのじゃ。


 いろいろと燻製してみた成果の一つ、くんたま。そう単にゆで卵を燻製したものなのじゃ。このくんたまと既に身内には供しておるベーコンや燻製肉なぞを追加で出して、ゆったりとした時間を過ごしたのじゃ。


 客間の内装なぞはまだ済んでおらぬとは言え、数日中に移り住むこと自体は出来るようになるのじゃ。ガントが来た良い機会を逃さずその打ち合わせもしておこうということなのじゃ。

 オルンが帰ってくる前でもモリエとガントでオルンの荷物を運ぶ、預かってもらっておる子ども等もちゃんと移る準備をさせておく、と言う程度のことなのじゃがの。


気付けばブックマークが500を越えておりました。

拙いところばかりの当作品をお読み頂き、本当にありがとうございます。

最大級の感謝を皆さまへ!

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