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黒髪に異世界郷愁を感じることもあるのじゃ

こんにちは。

ちょっとリアル余裕が無い日が続いております。

兎に角、今日もよろしくお願いします!

「ミチカは何でも知ってそうにしていて思いがけないところに欠落がありますね。しかし魔力の実践的な使い方なんかは語り出すと終わりませんから別の機会にしましょう」

「うむ、そうじゃの。いろいろ気になることもあったゆえまた別に聞いてみるとするのじゃ」

 魔力に一家言あるもの等も同意して下がっていったのじゃ。魔力探査が不得意であることが明らかになったガントは師匠のおばあちゃん先生に捕まっておるのが見えるのじゃが、うむちょっとわらわもやってみるとガントとおばあちゃん先生くらいは判るのじゃ。

 老リーディンも判るのじゃが、魔力が成長したと噂のベルゾあたりからは全く区別が付かぬのじゃ。いや、隠匿のほうの技術の成果であるのかや。まあ今度改めて話を聞いたり修行したりするのじゃ。


 思わぬ中断が入ったのじゃが警邏隊の面々はベルゾにも厚く感謝して下がったのじゃ。

 わさわさと近寄ってきておったジーダル以下冒険者組が来るのかと思いきやその人垣がぱっと海が割れるように開き、そして冒険者協会のギルマス代理の秘書さんがモーセなのじゃ。

 わらわの疑問を感じたのかジーダルが教えてくれたのじゃ。

「俺たちは大体礼儀知らずなんだがよ、些細な順番で気分を害したくないような相手もいるもんなんだぜ。冒険者の心得だ、マインキョルトの冒険者協会で一番怒らせちゃなんねえのがあの筆頭秘書のアケレイデ嬢だ」

「ほう、そうなのかや。気を引き締めてかかるとするのじゃ」


 ジーダルの軽口を受け流して見やるアケレイデというギルマスの秘書さんは、いや筆頭秘書というのは役職的に秘書室とか秘書課とかの部門の長であろうかの、ギルマス個人の秘書ではあらぬのじゃろうの。兎に角アケレイデさんは二十代後半のすらりとしたスレンダーな美人で、きりりとした切れ長の目が特徴的であるのじゃ。

 後ろでまとめられた黒髪と同じく深い黒色の瞳の色がわらわに前世由来の郷愁を誘うのじゃ。まあ顔つき自体は鼻がたこうて彫りが深いのじゃがの。


「まあ、信じないでくださいませ。ミチカ様」

 そう言いながら下がろうとしていたジーダルの耳に手を伸ばしてがしりと掴み、抓り上げたのじゃ。

「ジーダル様とは後で話があります」

「冗談、冗談だってばよ。アケレイデの姐御!」

「誰が姐御ですか!」

 逃げていくジーダルを見送ってアケレイデの姐御はこちらに振り返り改めて挨拶を交わしたのじゃ。後ろには窓口嬢のメーレさんと資料室の司書職員、子どもの世話係をしている職員、あとわらわの知らない職員と冒険者協会の職員等が一緒に来ておるのじゃ。


「失礼しました」

「ジーダルは美人になじられたりするのが好きなのじゃな。別段知りとうもなかった情報なのじゃが。それはそうとしてわらわに様は不要なのじゃ。アケレイデの姐御」

 何か遠くでジーダルが言っておるがスルーなのじゃ。

「はい。わたくしにも姐御は不要ですからね」

 うむ、確かに笑顔に迫力というか凄みがあるのじゃ。これにゾクゾクとするジーダルの気持ちも分からぬではあらぬのじゃ。


 それはそうとしてギルマス不在の間を任されておるだけあって有能であるのじゃ。冒険者協会に特例で登録されておる年少の子ども等についての統計だけでのうて城市を南北に分けてカウントした街の子どもと呼ばれる孤児等についてもその数の概算なぞがまとめられておるのじゃ。

「城市内で働くのを主にしている冒険者に仕事として依頼したものです。事業の達成目標を立てる上で必要だと思いまして。こちらは商業組合と港湾協会にも回すことになりました」

「行き届いた配慮なのじゃ。冒険者協会は内部の問題が解決せねば新規で受け入れを行いにくいゆえとりあえずは港湾協会に頑張ってもらうとするのじゃ」


「内部の問題のほうですが」

 そう言うて違法な奴隷商に繋がっておるらしき連中への対策の話になるのじゃ。ギルマスがおらぬ間に子ども教室設立のための準備部会を開くのは其奴等を誘い出す罠なのじゃが、罠を閉じて一網打尽にする為には仕込みが重要なのじゃ。

 その仕込みと警邏隊との連携を確認し、その後についても話を進めておくのじゃ。連中に始末をつけるのは当たり前の確定事項ゆえさして重要ではあらぬのじゃ。その後の子ども等の扱いの規定や教室の制度化なぞのほうが余程重要なのじゃ。


 そのまま司書職員さんの神話絵本なぞの写本が見たことのあらぬ本で楽しいという話や、引率係さんの港湾協会で差し入れのクラムチャウダーに感動したけど今日はそれを越えた衝撃で表現しきれないと言った讃辞、メーレさんのお菓子のお土産ありがとうといった話、と雑談めいた話題も交えて話し合いは進んだのじゃ。

 遊戯大会の運営スタッフを冒険者に依頼発注する前段階としてジーダルやオルン等が協会で盤上遊戯を広めておるのがなかなか好調で二階のいておった食堂が遊戯場の体になっておるそうなのじゃ。これは良き報告なのじゃ。スタッフ確保の面でも競技人口の拡大としても、なのじゃ。


 かなり実りのある話ができた冒険者協会のもの等との面談を終えて、次が実りの少なそうな冒険者連中なのじゃ。

「なんか失礼なことを考えてねえか」

「いつでもわらわは正当な評価を下しておるのじゃ」

 そうジーダルに答えつつ見回すと双子等の魔力も何となくは掴めるのじゃ。使ったほうが増えやすい、という話が確からしいとき<早足><跳躍>を組み合わせた戦法の確立のために特訓しておるらしい双子等の魔力もまた伸びておって当然なのじゃ。


 遊戯大会や屋台についてなぞの話はそう難しいことはあらぬのじゃ。遊戯が好調に広まっておることは既に聞いておるしの。

 ただ、冒険者同士という視点での子ども等に非道を働く連中の話は有意義ではあるのじゃ。首魁を始末した後にバックレようとしても身柄は押さえさせてもらうつもりなのじゃ。


「しかし、わらわを道端で襲った連中の話はまだ情報が封じられたままなのじゃな」

「ま、冒険者が一二週間いなくても気にする奴はおらんさ。今日ここで初めて聞いたって連中も他言無用で紛れはねえ」

「その点では信用しておるのじゃ。連中のほうは記憶に穴ぬけのある間抜けの集まりゆえか、情報の共有がうまくできておらんように感じておるのじゃ」

 そう言うた後、わらわ自身がアレの所為で前世の記憶に穴のある間抜けであることに思い至り心の中で顔をしかめておいたのじゃ。全く不愉快な話なのじゃ。


「ミチカが全ての中心にいるのは間違いねえんだ。その話みたいに一人でいて襲われるとか勘弁してくれよ。勝負どころはその会議前後としてもそれ以外でも気を抜くんじゃねえぜ」

「分かっておるのじゃ」

 くどくどと注意をしてくるジーダルの小言を適当に聞き流しておるとオルンはモリエに念を押したのじゃ。

「モリエ、頼んだぞ」

「うん、任せて」

「確かに本人に言うよりそのほうが確かだな」

 そんなことを言いつつ冒険者等も下がり、一応、という顔で婆さまを先頭に調剤師錬金術師匠合の皆が進んできたのじゃ。



お読み頂きありがとうございました。

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