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わらわは生きたミシンなのじゃ!

こんにちは。

今日は日曜日なので三話更新します。

これは一話目(1/3)。

次話は19時更新予定です。

少しでも楽しんで読んで頂けたら幸いです。


「うーむ、わらわがこんな裁縫できたとは驚きなのじゃ」

 ちくちく。明かりをケチる必要もないのじゃが、昨日に続き太陽光で作業しようと建物の前に出した机を作業台にお裁縫なのじゃ。


 普通もう裁断して雑巾にでもしておるような襤褸服を着ておったわらわ的には古着で充分なのじゃが、わらわに丁度よい子どもサイズの衣裳は収納空間内に見つからんかったのじゃ。代わりに商品であったのかフォルデン商会の中に布地が大量にあったゆえ、お裁縫の時間とあいなったのじゃ。

 ゴドノローア卿の屋敷には高級そうな緞子や天鵞絨もあったのじゃが恐らく高級すぎるゆえ今回は回避なのじゃ。しかし、肌着は絹の類で作っておいてもよいのう。


 よい感じで手早く針を運べるのは孤児院で繕いものを大量にこなしておったゆえなのじゃ。わらわが純粋に三千香であれば持っておらぬ技術ゆえ己が難なく出来ることが不思議であり不思議でもなし、変な気分なのじゃ。


 親と共に北方諸国群までやって来たが、旅先で親を亡くした中央出身の交易商の子ども、と言う設定で行こうと考えておるゆえこの設定に見合う衣裳を作らねばならぬのじゃ。

 膝丈のワンピース風のローブに少し贅沢に布を変えて袖をつけ、刺繍の入った襟飾りもつける。刺繍は流石に自分で刺したものではなく刺繍の入った出来合いの布を使うのじゃ。

 本当は腰を絞ってスカート部分を膨らませるべきなのじゃが旅装ゆえ亜麻の組み紐飾りの帯で締めることで代用。自分で襞をつけねばゆえ逆に面倒なのじゃ。


 このローブの下に旅に適するようにタイツ代わりのズボンを履いて基本は出来上がりなのじゃ。あとはオプションの防寒具として外套を羽織るとしよう。

 ローブとズボンの布地は緑色をベースに少し上等な毛織物にしたのじゃ。これから寒くなるしの。

 外套は自分で仕立てたのではなく収納空間にあったフード付きの皮の外套をザクザクと裁断しサイズをわらわの背丈に合わせて出来上がりなのじゃ。


 ふんふふーん、と着替えたわらわは上機嫌でくるくる回ったのじゃ。ふふーん。孤児院で新しく仕立てた服を着ることなぞ一切あらぬからの。テンションも上がろうと言うものなのじゃ。


 少し落ち着いてから見落としはないか、新しい服を着た己を見下ろす。

「あっ、靴! 靴もなのじゃ!」

 靴もじゃった。足まわりは大事なのじゃ。

 足にぴったり合うものは難しいのじゃが、足下の悪い森の中を進むことを考えると少しは頑張るべきなのじゃ。


 しばし考えた結果、空間範囲指定を駆使し己の足の形に合わせた空間図形を作り、その形に木材を収納し、取り出すことで木の足型を作ることに成功したのじゃ。うむ、空間指定も慣れてきたのじゃ。

 この足型さえ出来れば立体裁断でぴったりサイズの靴が出来るのじゃ。

 思いがけぬ手間がかかったのじゃがぴったりした編み上げブーツが出来てご満悦なのじゃ。ご満悦なのじゃが、正直に言うと形なぞに多少の不満が残るのじゃ。いや、今までの木靴とは比べものにもならぬのじゃがのう。

 皮革の扱いは解らぬところが多いゆえ機会があったら本職の靴職人に作ってもらうのじゃ。


 この後、興が乗って小さいリボンや飾りボタンを作ったり縫いつけたりしておったら太陽が頭上を過ぎておるのじゃ。刻を知らせる鐘が聞こえない場所におるのじゃった。これも少し新鮮なのじゃ。


「しかし、わらわのスペック高い気がするのじゃ」

 テンション上がっておったとは言え午前の作業で衣裳一揃い縫い上げるとかわらわは生きたミシンなのじゃ。いや、前世の三千香が裁縫をあまり得意ではなかっただけやも知れんので保留しておくのじゃ。

 第一かなり簡単な型で裁断したしの。


 兎に角、楽しく中央から来た旅商人の娘風衣裳をしつらえることが出来て満足なのじゃ。靴に関しては完成度に疑問があるのじゃが後は歩いてみねば解らぬ。後は収納空間から肩掛け鞄の類を持ち出せば旅装完成なのじゃ! いえい! なのじゃ。



お読みいただきありがとう御座いました。

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