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あじフライなのじゃ

こんにちは。

なんとか間に合いましたがちょっと体調不良で明日はあやしいです。

もしかしたら明日は更新出来ないかも知れませんがよろしくお願いします。

「情報交換や今後の方針なぞ、勝手に語っておいてくりゃれ。であるゆえあまり飲み過ぎるではないぞ。マキネさんも己の判断で酒を減らしたり水を出したりして構わぬのじゃ」

 一応話し合いがメインゆえベロンベロンになられては困るのじゃ。そう釘を刺して厨房での大フライ大会なのじゃ。


 そう、フライなのじゃ。

 厨房には大量の開かれて下味をつけられた鰺がずらりと並んでおるのじゃ。追加の増援が必要になると見越して各種種類を揃えておらぬ魚の切り身もその後ろに待ちかまえており、あじフライ軍はあじでないフライ部隊も含めて万全の体制なのじゃ。

 加えて牡蠣も準備されており、かきフライ軍も出動を待っておるのじゃ。


「其方等は己で味見するのじゃぞ」

「はーい! あたしこの黒いソース大好き!」

「食べるよ。この白い奴も美味しい」

 まず双子等から元気な返事が返ってくるのじゃが、他のものもちゃんと頷いておるのじゃ。

「この黒いソース、魚用に味を調整したんだね」

「うむ、そう変わってはおらぬのじゃがの」

 一昨日、わざわざアイラメさんを呼びだした理由がその黒いソース、そうウスターソースなのじゃ。


 ウスターソースを自作するに当たっての問題は二つ、一つはずっと悩まされておるトマトさんの不在なのじゃ。果実から甘みの少ないものを選んで増量したりで一応対応したのじゃ。

 もう一つは前世で父さまが自作するのを手伝った経験はあるのじゃが、醤油を使つこうておったのじゃ。ウスターソースの原型はイギリス渡りのものであったのじゃ、と考えることで醤油のことは忘れたのじゃ。


 大量の香辛料やハーブを含んだ材料をガンガン煮詰めるゆえ匂いがすさまじくウスターになるのじゃが<微風>による換気のおかげで難なきを得たのじゃ。

 マジカルクッキングはいくつかの分野で前世の調理環境を越えておるのじゃ。家中がウスター臭に包まれ母さまからしこたま怒られておった父さまのことを思い出しながらそう思うたのじゃ。


 そのウスターソースの材料の配合を記録するためのアイラメさんであったわけなのじゃ。

 無論一発で決める気はないゆえ大鍋を同時に三つ、配合を変えながら同時並行して作って更に調整を入れたのじゃ。

 まあこのルセットも調合師錬金術師匠合に任せることになるか否かは商業組合の組合長にでも交渉を丸投げするのじゃが、とりあえずアイラメさんがきちんと記録しておるかは確認したのじゃ。


「いや、あの。お仕事の範囲で疑われると結構悲しいんだけど」

 確認を入れるとアイラメさんの眉が下がっておったのじゃ。面倒な女なのじゃ。

「確認するのも仕事のうちなのじゃ。一応確認しただけで信頼はしておるのじゃ」

「そうですか。えへへ」

 ちょろいのじゃ。そんなやりとりをしつつ煮込んだのじゃが、<経時>で短縮できるゆえ前世より簡単なのじゃ。


 うんざりするほどのあく取りをくぐり抜け、最後に

「いあ! いあ! ウスター!」

 前世で父さまがウスターソースを完成させるとき唱えておった祈祷文をわらも真似して唱え、完成したのがこのミチカ式ウスターソースというわけなのじゃ。この祈祷文は大沢家秘伝の美味しく仕上げる秘訣なのじゃ。

 いや、実際に意味はあらぬのじゃが気分的には唱えねばならぬのじゃ。

 三つの鍋のうち、ミチカ式として選ばれた以外の二つも混ぜてミチカ式に近づくように追加の材料を投入して煮詰め普段使い用に回したのじゃ。


「今までカツを揚げたときに肉汁ベースのソースを代用ソースってミチカが呼んでた理由が分かったよ」

 とは、ソースの出来を確かめるためにトンカツを揚げたときのモリエの言なのじゃ。まあこのミチカ式もまだまだの出来なのじゃが以前の代用ソースとは雲泥の差なのじゃ。ふふふん。

 そして今日はあじフライに合わせるために柑橘系の果汁なぞを足して少し緩めた魚フライ用に調整してあるのじゃ。

 このミチカ式ウスターソースが作れたことでわらわは概ね満足なのじゃ。


「ほう、美味しくあがっておるのじゃ」

「コツが掴めてきたよ」

 モリエは何尾か揚げて、中をふっくらとした状態で揚げることが出来るようになってきたのじゃ。わらわ以外の味見衆も合格を出しておるのじゃが、味見衆の採点基準は低目なのじゃ。

 しかし、これはわらわも高得点をつけるのじゃ。

 熱々のあじフライの鰺の身はふっくらとしており、衣はサクサク。うむ、控えめに言うて極上の美味なのじゃ。


「うむ、わらわのほうの火の通りもこれでよいのじゃ」

 わらわの揚げたかきフライも良い出来なのじゃ。こちらは火の入れすぎであっという間に固くて残念なものになるゆえ少々気を使うのじゃ。

 かきフライにはウスターソースも悪うあらぬのじゃが、どうせならば、とタルタルソースを作っておるのじゃ。これがマーセの言う白い奴なのじゃ。

 タルタルソースのためのマヨネーズ製作はそう大変ではあらぬ、そうハンドミキサー魔法具のおかげなのじゃ。ピクルスの類はこのあたりで売っておるものを片っ端からあがのうて来てもろうて選んだものを刻んだのじゃ。


 前世、大沢家ではタルタルソースに固ゆで卵を刻んだものを混ぜておったのじゃ。それと隠し味にアンチョビを裏ごししたアンチョビペーストなのじゃ。アンチョビは別のルセットと混じってる説があるのじゃが、あがのうて来てもろうたピクルス類に鰯の塩蔵も漬け物扱いであったか混じっておったゆえ有り難う使わせてもろうたのじゃ。

 このあたりにはオリーブがあらぬことを除けばこちらは完璧に近い出来じゃと自画自賛できるのじゃ。


 葉物野菜にあじフライ、かきフライと盛りつけウスターソースとタルタルソースは好みでつけれるように添えて給仕部隊の出発なのじゃ。

「あじフライは多少お代わりできて、鰺ではのうてほかの魚の切り身でよければもっとあるのじゃ。牡蠣はお代わり分はあらぬのじゃ。そう伝えてソース二種の使い方も教えてくるのじゃ」

「はい、かしこまりました」

「あ、ミチカ。修道会のほうは絶対お代わり要るから」

「大皿にまとめて盛ってていいよ、ミチカちゃん」

 神殿の大食堂に向かうメイドさん等、修道会本部の方に向かう双子等で素早く動き出すのじゃ。熱いうちに提供したいものであるしの。


「じゃあ残りも片っ端から衣をつけて揚げていくね」

「任せたのじゃ」

 さて、わらわは次の一皿の準備なのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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