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ちょっとした嫉妬は可愛げのうちなのじゃ

こんにちは。

悩んだのですが、この話は普段通りの省略の少ない展開が遅いスタイルに戻っております。

バランスが難しいです。これだけの話数を書いていて進歩の少ない作者ですが、どうぞよろしくお願いします。

 良い朝なのじゃ。降雪が厳しゅうなるのは冬も半ばを過ぎて風向きが変わった後と聞いておるのじゃが確かに今のところ気温は低うとも概ね乾いた天気なのじゃ。気温に関しては<防寒>が働くゆえ、わらわにとっては過ごしやすい冬晴れという奴なのじゃ。


 昨日はなんだかんだで早めの時間に建築作業は終わっておったゆえ宿に戻って内職仕事をする余裕もあって予定より大分心穏やかに食事会の日を迎えることが出来ておるのじゃ。

「えっと、今日は朝から食事会の準備でいいんだよね」

 当然のように朝から来ておるモリエから本日の予定の確認なのじゃ。無論、双子等も来て一緒にロードワーク後の朝餉中なのじゃ。

 モリエの口調にどこか堅い感じがしておってそれを不審に思いながら応えるのじゃ。

「うむ、港湾教会からの魚介類も午前のうちに届く手筈なのじゃ」

 本来は手土産であったのじゃが食事会になったゆえ先に受け取る必要が出たのじゃ。そのあたりも昨日見物に来たタンクトップおじさんと確認をとっておるのじゃ。


「ただ、午後には祈祷治療の会があるゆえその時間は抜けるのじゃ」

「じゃあ私たちはミチカが働いてる間、休憩だね」

「ミチカはしっかり働いてきてね」

「兄ちゃんはまだその仕事の代わりは出来ないんだね」

「ちょっとモリエとサーデがわらわに厳しい気がするのじゃ」

 わらわにはもっと優しく、これは大事なテーマなのじゃ。

「えー、あたしたちは狐の尻尾とかないし」

「いや私はそう言うんじゃないから!」

 モリエがあわてて否定しておるのじゃが、少しばかり狐の人の尻尾にうつつを抜かしすぎておったようなのじゃ。


「尻尾があろうがなかろうが、誰もモリエの代わりにはならぬのじゃ」

 これは正直な話なのじゃ。

「そ、そんなんじゃないってば!」

 照れておって可愛いのじゃ。うむ、怒った振りをして照れてはおるのじゃが口元は笑っておるゆえ機嫌もようなっておるのじゃ。

「ちょっと! あたしは?」

「サーデの代わりはマーセが出来るのじゃ」

「がーん。確かに」

 ショックを受けた振りをするサーデに皆の笑い声があがったのじゃ。


「レーレッテさんには手伝いをお願いしておるのじゃが、他の仕事の兼ね合いなどもあろうがよろしく頼むのじゃ」

 メイドさんのレーレッテさん等には給仕を頼んでおるのじゃ。

「はい。お任せください」

 安心感のある返答なのじゃ。てきぱきと働く部屋付きメイドの姿を眺めておるとふと昨日感じた疑問を思い出したのじゃ。


「そう言えば其方等は図面を見ておっただけであるのに屋敷の大きさには驚きはなかったのじゃな」

 敷地の広さを見て知っておったモリエ等にしても建物の大きさにまず吃驚しておったのじゃ。

「魔法を使った建築には驚きましたが、私どもは一人当たりでお世話できる面積をきちんと把握しておりますから」

 そのメイド感覚があるゆえ図面で見ても間違いなく把握できるのじゃそうな。凄いのじゃ、メイドさんというものは。


 ついでと言うわけでもあらぬのじゃが、内装が入らねば判らぬところもあろうが現物を見た時点での要望なぞがあらぬかをモリエ等とレーレッテさんの両方に訊いておいたのじゃ。厨房機器なぞはざっくり一揃い発注してあるのじゃがモリエもメイドさんも自分で使うものゆえしっかり要望を上げてもらうのじゃ。


「と言うより己で使う食器類なぞは見てあがないとうもあるゆえ近いうちに一緒に見に行くかや」

「いい食器ってものがあることは知ってはいるんだけど、猟師は基本木の食器だから分からないんだよね」

 軽い、音がしない、何なら焚き付けに使えると三拍子揃っておるから木の食器が優れておるのは事実なのじゃ。木の食器も芸術性が高いものはあると思うのじゃがの。

 そう言えば今生で漆器は見たことがあらぬのじゃ。漆の木がこのあたりにはあらぬのじゃろうの。船荷にはあらぬか今度エインさんにでも訊いておいてみるのじゃ。


「確かに普段使いのものからお客さまにお出しするものもいくつか必要でしょうし、モリエさまに必要なものをお教えしながら見て参りましょう」

「さま付けは止めてー」

 レーレッテさんの提案にモリエがこそばゆそうな顔をしておるのじゃ。しかし、ひとつ教えておかねばならぬのじゃ。

「この前厨房を手伝てつどうてくれておったマード等もモリエさまと呼んでおったのじゃ」

 聞いたモリエはばったりと机に突っ伏したのじゃ。


「食器は良いものである必要はあらぬのじゃが気に入ったものを使つこうたほうが丁寧に扱う癖がつくやも知れぬの。しかし、思い返せばサーデとマーセもちゃんとした食器使いをしておったのじゃ」

 アドバイスを、と思うたのじゃがそう必要ではあらぬのじゃ。

「兄ちゃんがうるさい」

「父ちゃんがうるさかったらしいよ」

 なるほどなのじゃ。無論普段の食事で見苦しゅうあらぬ、と言う話であって正式な場での作法が必要であらば話は別なのじゃ。しかしまあそれは不要であろうの。

 ガントはリーディン教育で必要となるやも知れぬのじゃが、それは老リーディンの教育する領域なのじゃ。


「うちは猟師だから家でも割れない木製の食器だった」

 そうは言うのじゃがモリエは性格的に食器類を丁寧には扱っておるのじゃ。それ以上が必要かどうかの話なのじゃが、双子等とちごうて必要になるやも知れぬのじゃ。

「料理を作って出す側も作法を知っておいたほうが配慮の行き届いた皿を出せるのじゃ。わらわはわざと外すこともあるのじゃが、知らずに外してしもうたのと知っておる上で演出として外すのは違うのじゃ」

「ちょっと難しい話だね」

「いや、同じ屋根の下暮らすことになるゆえレーレッテさんから学ぶのもやりやすかろうから教えてもらうと良いのじゃ、と言う簡単な話なのじゃ。ついでにサーデとマーセも一緒にの」

「はい、お任せください」

 モリエの返事を待たずにレーレッテさんの了承がなされたのじゃ。頑張れ、なのじゃ。


 レーレッテさんには作法の家庭教師代の手当も出さねばなのじゃ。

「いや、あたしはモリエが教わってる間の護衛の任務が」

 マーセがジタバタしておるのじゃが、まあ双子等はお試し程度でやってみればよいのじゃ。そう言うてやると少し安心したようなのじゃ。

 しかし、サーデはそんなに嫌がっておらぬのじゃ。双子の片方だけというのが少し不思議なのじゃ。

「あー、あたしは母ちゃんの新しい男のさ、アイツの飲み食いの仕方が下品で嫌いだったの!」

「言われればクチャクチャ不愉快だった。あたしはアイツのことを思い出さないよう完全に頭から叩き出してるからね。でも確かに食べ方が下品なのはダメだね」

 なるほどなのじゃ。其奴がマーセの体をまさぐってきたというのが双子等が本来村を出るには早い年齢で飛び出してきた原因だと聞いておるのじゃ。クチャラーの類は普通に不愉快なのじゃがそれにその男の不愉快さが加算されておるのじゃろう。それへの嫌悪感で作法はちゃんと学ぼうという気になったようである意味良いことなのじゃ。


「オルンにはモテたいならば少し上品に食べれるようにしたほうが良いとモリエから教えてやっておくといいのじゃ」

「そうだね。兄さんは少し乱暴に見えるくらいのほうが男らしいとか思い違いをしているかも」

 妹は厳しいのじゃ。

 笑いうたあとは神殿へ移動して食事会の準備なのじゃ!


お読み頂きありがとうございました。

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