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マジカルビルディングなのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします♪

 翌日は朝から建築現場なのじゃ。実際は今日の作業を楽にするため昨日帰る途中で立ち寄って基礎工事部分をやっておいたゆえ昨日から現場なのじゃ。

「しかし、人がこんなに来るとは思うておらんかったのじゃ。皆物見高いのじゃ」

 商業組合から手配してもろうた大工の一団と材木問屋のご隠居とその紹介の内装屋さん、それに商業組合の代表としてミルケさんがいるところまでは必要な人頭なのじゃ。そしてここに住むことになる雪の椿のメンバーとメイドさんは納得の範囲なのじゃ。

 商業組合の組合長、港湾協会のタンクトップおじさん、忙しそうな肩書きであるのに暇なのかや。ジーダル等三人は暇なのじゃろう。

 他にもエインさんや神殿のマードや修道会の冒険者なぞ見物客が多いのじゃ。

 冬の季節で暇になる人等も多いのじゃろうがわらわに巻き込まれておる連中はそう甘い情勢でも無かろうにの。


「あたしたちも見物に来ましたしね」

「いえ、昨日をお礼にお手伝いが出来ることがあればと」

 アイラメさんと狐の人なのじゃ。

「マキネさんは優しいの。むしろ昨日はわらわが手伝てつどうてもろうたのじゃ。そしてアイラメさんは停時倉庫の書類を掘り返す作業中に呼び出されたとぶーぶー言っておったのに暇なのかや」

「やっぱり扱いに差があります!」

「昨日帰りに持たせてくださった料理は母や弟たち、家族も喜んでいました。その分のお礼で使ってくださいね」

 実際大して手伝てつどうてもらうことはあらぬのじゃが気持ちはありがたく受け取っておくのじゃ。アイラメさんのことはスルーして大工の棟梁や内装職人に紹介してもろうては挨拶しておくのじゃ。

 エインさんが連れてきておったのが魔法具工房の親方で光明の魔法具を天井に仕込む、なぞの仕事が出来ると言うことでありがたく紹介を受けたのじゃ。わらわ自身でもある程度は出来るのじゃが本職に任せるほうが安心確実なのじゃ。

 後はオルン等とメイドさん等には希望の変更があらぬかを確認したらサクサクっとマジカルビルディング開始なのじゃ。


 木材と石材の両方を使うのじゃが、石材はかなり大きめのものを選んであって基礎は頑丈に外壁は厚うに、とするのじゃ。やはり前世地震大国に暮らしておった経験から崩れやすそうな建物には抵抗があるわけなのじゃ。

 中学生時代に、「明治には煉瓦造りが流行ったけれど大正十二年の大震災で崩れまくったのでそれ以降は地方でも煉瓦造りは見られなくなった」と社会科の教師が言うておったのじゃ。その話が本当であったのかどうかは判らぬのじゃが根拠があらぬ訳でもあるまい、と煉瓦造りを候補から外しておいたのじゃ。

 その気になればわらわは鉄筋を通すことが出来るゆえ、外観は煉瓦と言うことも出来はするのじゃが。


「なんなんスか! この現場は」

「るっせー! 楽できてんだから文句言わず働け!」

 何故か大工さんチームでそんな泣き言や怒声が行き交っておるのじゃ。わらわは泣き言に斟酌することなく石材を動かしたり繋げたりと<地回操循>を行使し、<念動>で建材を全く重さもなく動かせるようサポートし、とマジカルビルディングに励んだのじゃ。

「なるほど、これならば確かに一日で屋敷が建つ」

「土木魔法を使う現場を見たことがありますが、こう言うんじゃなかったです」

「地面から魔法の塔が生えてくるとかではないんでむしろ安心しました」

 見物客どもはうるさいのじゃ。あと、その気になれば似たようなことは出来るのじゃ。


 虚仮威しの装飾やアーチを外側に作って遊ぶ余裕も持ちつつ建築作業を進めておるのじゃが、魔力が足りぬようならば試しに作っておいた魔力ポーションを飲んでみる気持ちでおったのじゃ。しかし残念ながら、と言うよりわらわの魔力の成長具合と魔力の扱いの上達具合を褒めるべきじゃな、ポーションで魔力を補う必要はあらぬようなのじゃ。味的には正直遠慮したいのじゃが効果を実地で試しておく必要はあるゆえ次の機会を見つけるとするのじゃ。

「なかなかの出来なのじゃ。普通は出来ぬことなのじゃが、わらわはここから更に修正できるゆえ建物に関しては住んで使いながらじゃな」

 完成の宣言に見物客から歓声が上がるのじゃ。


 わらわはできあがった箱を満足して見渡すのじゃ。

 母屋の外壁は頑強な石組みで石材を魔法で繋いであるゆえ構造的に壊すのは難しいのじゃ。それだけでのうて基礎の杭を深くきっちり固定してあるゆえ個人的には安心感があるのじゃ。大工の棟梁は他の建築一般で泣いておった若い衆と違い、この基礎工事に愕然としておったのじゃ。

 それは兎も角、外壁は石組みなのじゃが内側は木材を多用しておって石の建物の内側にぴったり木造建築を作ったというのに近い構造になっておるのじゃ。

 わらわの前世の記憶が木造のほうに好みが偏っておるというのもあるのじゃが、石組みの外壁と木組みの内壁の間の隙間の空気を魔法で暖めたり冷やしたりする冷暖房システムを考えておるからなのじゃ。外壁の石組みを魔法で繋いでおいたのも暖気や冷気を逃しにくいようにと言う意図もあるのじゃ。


 次は礼拝所なのじゃ。

 母屋はこの辺りで見る様式にあわせて外観を作っておるのじゃが、礼拝所は実用の建物にあらぬゆえ気にせず遊んでみたのじゃ。

 正直なところ、ドーリア式、イオニア式、コリント式と言う名前は覚えておるのじゃが形式の実際はあやふやなのじゃ、そう思いながらうろ覚えギリシャ式建築にしたのじゃ。まあそう呼ぶにはかなり小さいのじゃがの。

 ギリシャ風の石柱が並ぶコンパクトな聖域の中央には祭壇に使う予定の出土品の石櫃を据えておるのじゃ。なんとのういい雰囲気なのじゃ。


 馬車運用のため建築した厩舎は遊びはあらぬ全くの普通なのじゃ。基礎は石で壁や柱は木製の小屋で二階建てなのじゃ。オルンから聞き取った上、宿の厩舎を見せてもろうておるゆえ問題はあらぬはずなのじゃ。


 門柱は神々の彫刻の入った石柱を建て、通りに面した外塀は薄い石の板に等間隔で卵形の透かし模様が入った瀟洒なものにしたのじゃ。デザインがぱっと思いつかず卵の内側が中華料理屋の壁や塀に良くある感じの線状の幾何学模様になったのじゃがまあ悪うはあらぬのじゃ。

 門扉はあとで木を削って、実際は木を削った風に収納空間で加工してつけておくのじゃ。

「なあ、ミチカ」

「塀を挟んで戦する予定はあらぬのじゃ」

 ジーダルの寝言は皆まで言わせず流すのじゃ。防犯意識も大切なのじゃが高い塀を巡らすとむしろ見通しが悪うなって内外に警備のものを置かねばならぬことになるのじゃ。


 門柱に挟まれた入り口から入って正面の母屋までの空間が馬車留め兼前庭なのじゃ。向かって右に厩舎があり、母屋厩舎そして礼拝所で囲まれた部分が中庭に、母屋の裏手は倉庫の裏手とつながって結構広い裏庭となっており水路に面しておるのじゃ。イノシシ舟とか言う小艇もお買い物リストに入っておったことを忘れてはおらぬのじゃ。

 前庭の花壇と中庭については後でちゃんとしたものにすべきであるのじゃが、後回しなのじゃ。


 入り口から向かって左側に倉庫があるのじゃが雨に濡れず行き来できるよう母屋から屋根のある渡り廊下を通したのじゃ。この時点でかなり倉庫というくくりからはみ出しておるのじゃが、内部も劇的と言うほどでもあらぬが大改装がなされておるのじゃ。


 屋根の穴は単純に塞ぐのではのうて複合的なファンネルになっておるのじゃ。母屋の厨房とは別に倉庫のほうに実験や大量生産用の厨房施設を置きその石窯や大量の竈の上部のダクトを結合しておるわけなのじゃ。


 天井が高いのを生かしてかなりしっかりとした木の梁を組んで二階に相当する空間も使えるようにしておるのじゃ。ちょっとした体育館サイズの倉庫でその空間もあると相当に広い感じがしておったのじゃが、案外そうでものうなったのじゃ。


 荷物を置くためのスペース、荷馬車を停めることが出来るスペース、子ども等の宿舎となる二階建ての小屋、このあたりが通り側から場所をとっておるのじゃ。

「倉庫の中に建物を建てるという考えがよくわからない」

「わらわもこれは変な仕事をしておる自覚はあるのじゃ」


 そして変な仕事はそれだけに留まらぬのじゃ。

 渡り廊下との連絡口付近から厨房スペース、燻製小屋にする予定の小屋、肉などの熟成を行う倉庫内倉庫、同様に酒蔵や薬草なぞの管理に魔法具化しようと考えておる薬草棚と言う名の小屋、とわらわの作業のための空間が広がっておるわけなのじゃ。

 裏庭、水路側の出入り口付近には荷物置き場のほか船具の保管場所があるのじゃ。


「この中身をちゃんと整えるのは骨なのじゃ」

「それもだけど、まずは母屋のほうでしょ」

「うむ確かにそうなのじゃ」

 モリエが内装職人さんを指し示したゆえそちらを済ませるかの。あ、光明の魔法具を天井に仕込んでくれる職人さんもおったのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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