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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
クラムチャウダーを作ったりポーションについて学んだりするのじゃのじゃ少女
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ガントは掃除が得意なのじゃ

こんにちは。

余裕がなくて少し短めですが、よろしくお願いします。

「ここは私たちに掃除させなかった区画ですよね」

「一応秘伝だからね」

 錬金部屋の他、弟子の入室が制限されておる書庫なぞもあるのじゃそうな。それでこの区画はほこりっぽいわけなのじゃ。

「ガントよ、<洗浄>で掃除しながら進むのじゃ」

「確かにほこりっぽいですね。師匠も噂を聞いているでしょうけど<洗浄>を習得したほうがいいと思いますよ」

 弟子が掃除するのは修行のうちとしても、そう言いながらガントは二階の廊下を<洗浄>でぐるっと綺麗にしたのじゃ。

「確かにすごく便利だわね。噂以上よ」

「と言うか、生活魔法や祈祷の話の他、神殿のことで話したいこともあるんですけどね」

 思いがけぬ話の展開になってガントは少々困惑しておるのじゃ。わらわも話してみたいことが別にあったのじゃが、まあまずは折角ゆえ魔力ポーションについて学ぶのじゃ。


「うわっ、すごいのじゃ!」

 思わず声が出たのじゃ。

 蔦を模した彫刻が絡みついておるような装飾が施された扉におばあちゃん先生が触れるとはめ込まれておった魔漿石が光り、蔦飾りがうぞうぞと動いて扉がスライドして開いたのじゃ。

 自動ドアなのじゃ。いやさ、魔動ドアと言うべきかや。

「あたしの魔力だけに反応するのよ。とは言ってもあたしが魔力を込めた魔漿石があればそれでも開いちゃうのだけどね」

 逆にそうでなければ受け継げぬと言うことなのじゃ。おばあちゃん先生は師匠からはこの建物ごと魔術の道統を継いでおってこういう魔法具の魔力の認証も継承できておるのじゃが、師が急死したため師の魔漿石も見つからず力ずくで壊さねばならぬことになる例もあるのじゃそうな。

「あたしの魔力が籠もった魔漿石をノーヌートに預けてあるからね。あたしにもしものことがあっても慌てるんじゃないよ」

 ガントにそう言いながらおばあちゃん先生がゆっくりと自動で開いた入り口をくぐるのじゃ。わらわとガントもそれに続くのじゃ。


「ここも<洗浄>して大丈夫ですか?」

「ああ、やっておくれ」

 ガントが早速掃除を始めたのじゃ。ほこりっぽい部屋の内部は中心の床に魔法陣が刻まれた大きな石盤が鎮座しており、その魔法陣を中心に六つの卓が据えられておるのじゃ。その卓の上面はそれぞれに魔法陣やら文様やらの刻まれた石板になっておるのじゃ。

 壁の入り口の面に接した二面は棚が並び、ポーションを入れるのであろう空き瓶と思しきガラス瓶や陶器の瓶、薬種やハーブ、劣化を防止するための魔法具の箱なぞが並んでおるのじゃ。残る一面、入り口の向かい側には作業台があって卓上版の薬研、すり鉢、これまた卓上サイズなのじゃが原始的な蒸留器なぞがのっておって楽しそうなのじゃ。


 ガントの掃除を眺めながらふと気になったことを聞いておくのじゃ。

「ギルマスの名を言うておったが、先ほどは商業組合の組合長の名も出しておったの。あの二人はなにかと張り合っておって面白いのじゃが、其方とは古い付き合いなのかや?」

「全くあの二人はねえ。若い頃なら張り合ってるのも可愛げがあったんだけどいいおじさんになってからまで張り合ってちゃ台無しだわ」

 おばあちゃん先生は苦笑しながらそう言うたのじゃ。

「ノーヌートはあたしの師匠の息子でね、魔術師の才能がもう少しあればここを継いでるのはあたしじゃなくてノーヌートだったはずなんだよ。まあここで魔術の師範をしているよりも冒険者協会のギルマスのほうがあの子には似合っていたのかもね」

 そして組合長とギルマスは幼なじみでまだ若かったおばあちゃん先生に読み書き計算を教わっておった頃からライバルであったそうなのじゃ。

 面白いものなのじゃ。


「ギルマスの昔話とか興味はありますが知りたくないですね」

 ガントが掃除が終わったのを言うて来たのじゃ。やはり<洗浄>があると早いのじゃ。

「ギルマスが子ども教室の話に賛意を示すのが早かったのはここのことがあったからやも知れぬの。隠し玉を先に発見した気分なのじゃ」

「あら、子ども教室って何の話かしら」

「うむ、まさに後で意見を聞きたいと思うておったのじゃ」

「わかったわ、じゃあ早速ここで伝えることを伝えてしまうわね」

 そう言うとおばあちゃん先生はちょっと威儀を正したのじゃ。

「まず最初に言っておくのはね、技術としては錬金術なんだけど伝わっているいくつかのポーションを作れるだけなんで錬金術師の匠合には属していないわ。錬金術を系統立てて学びたい、ポーションで商売がしたい、こういう場合は錬金術師の匠合に行ってね、と言うこと」


「調合師錬金術師匠合じゃの」

「あたしが若い頃は魔法具職人の匠合と一緒だったわね。いつの間にか調合師と一緒になってるみたいだけど」

 微妙な扱いなのじゃな。わらわのそんな微妙な表情を見て補足してくれたのじゃ。

「錬金術師は数がいないのよ。自前の匠合を立てても維持するのが難しいのね。あたしがポーションを作れるように調合師たちも作ってるんだと思うわ」

 そう言うものなのかや。いまいち匠合なぞの仕組みが解っておらぬことに気づいたのじゃが、まあそれは今はどうでもいいのじゃ。

「このポーション錬成の錬成陣を最初に作ったのは錬金術師のはずだけど完成した錬成陣は魔法陣と同様の作りかたで複製できるし、錬成陣があれば錬成自体は魔術師で出来るのね」

 卓上の陣を撫でながらおばあちゃん先生はそう言うたのじゃ。

 新しい錬成陣でヒットを飛ばさぬ限り錬金術師であると言うことには意味があらぬ、と言うわけなのじゃの。


「秘伝であるのはそう言った錬金術の立場を少しでも維持するためかも知れないわね。じゃあ錬成の仕方を教えるわね」

 そう言っておばあちゃん先生は手を叩いたのじゃ。楽しい錬金術講座の始まりなのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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