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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
クラムチャウダーを作ったりポーションについて学んだりするのじゃのじゃ少女
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不味い薬湯の正体なのじゃ

こんにちは。

今日はなんとか平常運行です。よろしくお願いします。

「ミチカちゃんは教えなくていいから見ててね」

「なっ!」

 なんという言われようなのじゃ。面積を求めるときにちょっと三角比の話をしただけだなのじゃ。本来面積や体積を求めるのであらば積分するのが一番であると言うのに随分と譲歩したものなのじゃ。

「答えが合ってるのがまたやりにくいです。勘弁してね」

 おばあちゃん先生だけでのうて弟子先生のほうにまで言われたのじゃ。

 こんな屈辱受けたことは、うむ、前世で弟等に「姉さまは教えようとしないで」と言われたとき以来なのじゃ。いや、高校受験前に勉強会をしておったらカッコに同じように言われたことがあるのじゃ。それ以来なのじゃ!


 三角比は分からぬ訳もあらぬと思うのじゃが、あまり一般的に使われておらぬのかの。そう思うたところではたと気づいたのじゃ。

 わらわは三千香ではのうてアーネの時代に三角比を習っておるのじゃ。

 思い返すとマーリィから初歩的な三角関数まで習っておるのじゃ。そこまでついて行っておったのはわらわだけであった気もするのじゃが、他のものも三角比で面積計算をする単純な部分は習得しておったのじゃ。

「三角比が解らないとタンジェントサイトで照準も付けきれない大人になっちゃうよ」

 と言うておった父さまも納得の教育方針なのじゃが、やはりマーリィはおかしいのじゃ。

 しかし、三角比が全く通じぬ訳ではあらぬと言う確信は得られたのじゃ。それを冒険者協会での教室にねじ込むには如何すべきかの。

 それを悩むのは後のことにしておくのじゃ。今はなにか教室に参加してみたいのじゃ。


 なんとか小さい子等にお本の読み聞かせをするという大任をもぎ取って教室に貢献できたのじゃ。うむ、弟等との前世の思い出ではのうて孤児院時代に小さい子等の世話をしたアーネの記憶がよく働いたのじゃ。

 教室に参加したく思っておったのもアーネとしての気持ちがわらわにちゃんと残っておると言うことであるのじゃ。

 教室の時間が終わり、小さな満足と共に生徒等を送り出したら改めて弟子先生と挨拶なのじゃ。大人の魔術教室も同様に終了でそちらにおった弟子二名と併せて現在は内弟子三名なのじゃそうな。

「この男子どもがね、子どもの扱い下手なの! それであたしが子ども教室を見てるんだけど魔術のほうもあたしが教えなきゃなこともあって大変なのよ」

 男子と呼ばれた連中はガントと変わらぬほどの若いのと二十代半ばほどの二名なのじゃが、今は頬を掻きながら目を逸らしておるのじゃ。


「いや、ガントみたいに何でもそつなくこなすことを期待されても困るッス」

 若いのがそう言うともう一人もそれに乗っかってきたのじゃ。

「ガントは子どもの扱いがうまかったからな。俺はてっきり」

「そうやってガントに子連れの後家でも誑し込んでるのか、と訊いてガントが料理当番の度に味付けしてない肉を食べさせられてたことをもう忘れたのかい」

 おばあちゃん先生がみなまで言わせずツッコんでおるのじゃ。塩なしの焼いただけの肉に他の者までつき合わされたのであらばご愁傷様なのじゃ。

「褒めてんだけどなあ」

「ビンテング先輩はそれが褒め言葉になるような人ですので、ミチカは余りそばに寄らないように」

 おう、怒っているのじゃ。このあたりに余裕が足りぬのがガントのまだ若い部分なのじゃ。そう思うたのじゃが、ガントの顔には笑みがあるのじゃ。ふむ、思うておった以上にガントは成長しておるのじゃ。おばあちゃん先生も気づいたらしゅうて、ほうと感心の表情を見せたのじゃ。


「じゃあ後片づけはあんたたちに頼んだよ! あたしはミチカちゃんとガントと母屋で話をしてるからね」

 おばあちゃん先生はお客さまであるわらわとガントを連れて家に移動なのじゃ。ちなみに内弟子が家事を持ち回りで担当するゆえ使用人がおらぬそうなのじゃ。

 どう言うことかと言うとなのじゃ。ガントが手みやげの菓子を皿に盛り茶を淹れて、と茶の準備をこなしておるのじゃ。うむ、弟子とは大変なものなのじゃ。

「まあ! これが噂のお菓子ね」

「一体どんな噂が流れておるのか少しばかり心配になるのじゃ」

「うふふ、いろんな噂があるけどノーヌートとバッフォルが暗躍してて分割されて流れてるから大丈夫よ。あれは何を狙っているのかねえ」


 きょとんとしたのじゃ。えーっと、うむ、あれなのじゃ。

「ギルマスと商業組合の組合長なのじゃ! 名でなぞ呼ばぬゆえ思い出せぬところだったのじゃ」

 ふう、思い出せてスッキリしたのじゃ。おばあちゃん先生はクスクスと笑いながら「あの子たちも偉くなっちゃってねえ」なぞと言っておるのじゃ。

 わらわは茶を喫そうとして、いや、まず匂いを確かめるのじゃ。有無、大丈夫なのじゃ。

「ほう、ガントは茶を淹れるのが上手いの」

「勘でこなすのが苦手な分、量や温度、抽出時間なんかを正確に計るから安定した味ね。そして飲む前に何か気にしてたのは何かしらね」

「ここがあの薬湯の出所じゃと気づいたゆえ少々警戒したのじゃ」

 おばあちゃん先生が爆笑しておるのじゃ。元凶じゃというのに。


 笑い終わったおばあちゃん先生は急にまじめな顔になってわらわに言うのじゃ。

「それを飲まされたってことは魔力を枯渇寸前まで使ったってことね。駄目よ、魔力は使わないと成長しないけど枯渇させると命に関わるの」

「うむ、そう聞いておるのじゃ。わらわもそこまで使う気はなかったのじゃがの」

「小さいのに無理をしちゃ駄目よ。それ以上に無理をさせちゃ駄目よ!」

 ガントもついでに叱られておるのじゃ。しかし何故魔力が枯渇すると命に関わるのじゃろうかの。わらわの素朴な疑問におばあちゃん先生は茶で口を湿して語りだしたのじゃ。


「いろんな説があって、あたしもあたしの師匠から聞いた説を信じているだけで本当のことは解らないわ。その説を教えてあげるわね。人や魔物の中に魔力の漏れ出てくる穴が空いているの。それが魔力の源泉ね」

 穴? とわらわが己の胸を押さえるとおばあちゃん先生は頷いたのじゃ。

「死ぬと穴が塞がってしまうんだけど、その穴が塞がるときに魔力の残滓が固まって魔漿石になるのね。で、魔力を使うことはその穴を広げることになるから魔力量を増やすための手段になるんだけど、枯渇すると死んだきと同じで穴が塞がってしまうことがあるの。魔力が枯渇すると動けなくなるでしょ、で、あの状態から回復しないんだから死ぬわね」

「なるほど、理屈は通っておるのじゃ」

「妖魔化した、つまり魔漿石を取り込んで魔物になった動物が特に凶暴なのは魔力を回復する穴が空いていないから魔物や人を食べて直接的に魔力を取り込むしかないのが原因と言うわね。まあ説の一つとして聞いておいてね。他の説も聞いたりすると良いわよ」


 その考え方で魔力について説明できておることは多いのじゃが、説明できることが本当であるとは限らぬゆえ難しいのじゃ。まあ確かに他の説も気になるところなのじゃ。

「あの薬湯はその魔力の源泉になる穴の働きをよくすると言われているわ。一応全く効果がないわけじゃないと思うわよ」

 強烈な味をしておったのじゃ。思い出すだけで口の中がにごうなる気がするほどなのじゃ。

「あれに魔漿石を加えればちゃんと薬効が出るものが完成するのじゃろうが、やり方としては錬金術なのかや?」

 何の気なしに聞いたのじゃが、おばあちゃん先生がびっくりしてわらわを見ておるのじゃ。ふむ、もう慣れたのじゃ。やらかしたのじゃ。

 わらわは落ち着いて茶を喫したのじゃ。なあに、この場であらばガントがどうにかするのじゃ。


 人任せなことをわらわが思案しておると一拍程度でおばあちゃん先生は我を取り戻したのじゃ。流石先生なのじゃ。

「ミチカちゃんは合格ね!」

 なにか合格したのじゃ。首を傾げるわらわに構わずおばあちゃん先生は続けるのじゃ。

「ミチカちゃんが合格した代わりにガントは不合格ね!」

「ゲホゲホッ」

 思わぬ流れ弾にガントが茶を飲み込んで噎せておるのじゃ。

「なにがですか?」

「あの薬湯に魔漿石を加えて魔力ポーションが完成するのよ、ミチカちゃんが言った通り。自力でその答えに行き着くかどうかが最終的な製法を教えるかどうかを決める試験なの」

 質問したガントにおばあちゃん先生が誠に遺憾という顔で答えたのじゃ。

「あたしの弟子じゃないけどミチカちゃんは無料ただで、ガントからは教授料を貰うわね。さあ、錬金室に行くわよ」

 そう言うておばあちゃん先生は立ち上がったのじゃ。


お読み頂きありがとうございました。

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