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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
仮縫いに行ったり遊戯に興じたりするのじゃのじゃ少女
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杖の品評会からの遊戯の時間なのじゃ

こんにちは。

いつもと違う転送を試していますがきっと大丈夫。

今日もよろしくお願いします。

 なぜか始まった杖の品評会なのじゃ。

 しかし、このトネリコの杖は少し変わった形をしておるのじゃ。竜が魔漿石を咥えた意匠の彫刻もなかなかのものなのじゃが、この形は。

「うむ。自慢げに見せに来るだけのことはあるのじゃ。これは杖と言いながら実は弓じゃの」

「はい。冒険に出るときは弦を張ります。まあ弓としては弱い部類ですがね」

 弓と聞いてモリエも見に来たのじゃ。しかし、なにゆえ弓形にしたのであろうの。

「若い頃魔術の投射があまり上手じゃなかったんですが、攻撃魔術を弓から矢を放つが如く、と言われたら出来るようになったのです。で、結局それ以外の形で撃てないのでいっそ杖を弓の形にしてみたところ非常に相性が良かったんですよ」

「魔法の行使はイメージが重要じゃからの。それで上手く行っておるのなら良い選択をしたということなのじゃ」

 最近魔法に多少の興味を持っておる双子等も来て、皆でぐるりと取り巻いて杖を見ておるのじゃ。本当に品評会の様相となっておるのじゃ。


「次は悪い例です」

「いや、ちゃんと自分の使いかたに合ったいい杖だぞ!」

 ベルゾに噛みつきながら出してきた短杖なのじゃが、うむ。

「これは棍棒かや?」

 おそらく柿材で、頭の部分がかなり大きく獰猛そうな羊か羊の魔物の頭が彫刻されておるのじゃ。羊の後頭部に魔漿石が嵌まっておるのじゃが完全に羊の頭部でぶん殴るための杖なのじゃ。

 ちなみに持ち手の部分は羊の脚状になっており底部は蹄の彫刻なのじゃ。彫刻としてトータルのバランスは取れておるのじゃ。

 わらわが棍棒としか思えぬ杖をそう評しておるとジーダルが教えてくれたのじゃ。

「そいつは杖に魔術を籠めてぶん殴って発動させるって言う変な魔術師なんだ。前衛がぶん殴れるよう場を整えてやる必要はあるんだが大型の魔物を一撃で仕留める威力を出すぞ」


 魔術師らしい長衣を着込んではおるのじゃが、顔つきも体格も頑健そうなのじゃ。どちらかと言えば強面の魔術師なのじゃ。

「俺も呪文の投射が上手くなくてな。魔術を籠めて殴りながら発動するのが上手く行くことに気づいたんだが、火弾を籠めて殴ったら自分の手を大火傷したりしてな。試行錯誤の結果杖で殴る形に落ち着いたんだ」

「なるほどなのじゃ。それもまた己の特性に見合ったスタイルという奴じゃの。杖も美術品的美しさはあらぬがその機能に相応しい実直な美があるのじゃ」

 褒めてやると強面がほころんだのじゃ。まあ余り嬉しくはないのじゃ。

「高位の冒険者となるような魔術師に変わり者が多いことは判ったのじゃ。して、ベルゾはどんな杖を使っておるのかや?」

「私は兼業ですからね。剣に弓にと持ち替えながら補助的に使うので魔漿石の嵌まった指輪なんかは使いますが杖はあまり。一応持ってはいますが魔銀を少し使った金属製の短杖ですよ」


 そう言いながらも出してきたのは金属のシンプルな短杖なのじゃ。腰の後ろ側、外から見えぬあたりに吊しておったのじゃな。

 つるっとした銀色の金属杖の上にカットされた魔漿石が嵌まっておるのじゃ。魔漿石の台座部分は多少の文様が入っておるのじゃが極めてシンプルなのじゃ。

「魔漿石のカットや魔法陣も簡素なのじゃの。汎用性が高い造りと言うべきかや」

「それはリーディンの持っておられる治癒の権杖のような秘宝と比べてませんか」

「ふむ、確かにそうなのじゃ」

 肩をすくめるベルゾに素直に応じるのじゃ。最初の物差しが間違った例だったのじゃな。


「そう言った魔銀や魔金を使った金属杖が使い手を選ばず扱いやすいので現在の主流となってるわけです。高いんですけどね」

 ガントがそう教えてくれたのじゃ。一見木製の杖に見えても芯に魔銀の細い針金が通してある、と言うような造りになっておるそうなのじゃ。

「魔力を通して馴染ませながら削っていく、と言う神経と魔力を使った手間が要らないのは大きいですが本物の魔術師の杖は自分で作り出したものでしょう」

 ベルゾが自分は金属杖使いでありながらそう偉そうに締めたのじゃ。言いたいことはあるものの遊戯を開始しましょうとの言には肯ずる他はあらぬのじゃ。

「対戦ものは終わる時間がずれようからに、まずは多人数で行う『汝は人狼なりや?』からとするのじゃ。これは大会の種目にはあらねど会場の待機場や遊戯の試遊場でやったり売ったりする予定なのじゃ」

 旅の途上で一緒に遊んだ護衛の冒険者を含めて経験者が半数ほどはおるゆえ割り振って二卓、その後もう一度今度は多人数で一卓と立てることとなったのじゃ。


「見抜かれた!」

「サーデちゃんを最初にやったのは自分の緊張を見抜かれるって思ったからでしょ」

「人狼になったとき、村人の時と変わらぬ態度が取れるかどうかが勝負どころですね。確かにサーデとマーセが言うように商人が得意そうです」

 半分が初心者とも思えぬタフなゲーム展開だったのじゃ。これもまた人によってやり方が変わって面白いものなのじゃ。

「出来ぬ訳にはあらぬのじゃがこれで勝敗を決めて順位を競うのは面倒ゆえ大会種目には入れておらぬのじゃ。しかし、人気としては多人数で遊ぶこの人狼が一番となり得ると思うておるのじゃ」

「同じ面子とばかりやってたら戦術が煮詰まりそうだが、冬の間冒険者協会で暇してる連中だとかと遊ぶのにはいいな。これは」

「こちらは先に作り始めていたものですからある程度の数をすぐ売れますよ」

 営業に余念のあらぬオズンさんを見ながら茶を喫し、一息入れたら他の遊戯に取りかかるのじゃ。


「其方等には遊戯の普及と大会での裁定役を頼みたきゆえよろしく頼むのじゃ」

 各ゲームのルールを説明した後、わらわは参加せずに質問を受け付ける体制でいくのじゃ。王と鯱と名付けられた碁、バックギャモン、そしてクロックノールとそれぞれに面白さが違うのじゃが、人気の有り様がどうなるかは気になるところなのじゃ。

 しかし、駒や遊戯盤の類は工房の親方等がかなり頑張ってくれたようなのじゃ。二組ずつ運んでくれておるのじゃが、クロックノールは盤面が一枚板のものと寄せ木細工のものになっておるのじゃ。力を入れ過ぎなのじゃ。


 暫し見ておるとある程度の方向は見えてきたのじゃ。やはり王と鯱が多少苦戦しておるのじゃ。ダイスを振るという目新しさとそれによる運任せのところがあるバックギャモン、単純に指で弾くという明快さのクロックノールに比べて難しいのじゃの。

 ルールは単純にしてゲームとしては奥が深いのじゃが、深さに達するに至らねばならぬゆえの。

 ジーダルはクロックノールで力加減が難しいらしくバックギャモンがお気に入りなのじゃ。オルンはクロックノール派なのじゃ。セイジェさんとモリエはダイスを転がすことが面白いらしゅうてバックギャモン派、ダイスが転がっても可笑しいお年頃なのじゃ。

 魔術師組が王と鯱派なのは予想の範疇なのじゃが、サーデとマーセも王と鯱が気に入っておるのは意外であったのじゃ。特にマーセは手を憶えるのに長けておるゆえ定石を蓄積したならば強敵となるであろうの。


お読み頂きありがとうございました。

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