ミルケさんと双子等と、なのじゃ
こんにちは。
なんとか毎日投稿は続けることができていますが、結果進みが悪くなっている気がします。
困ったものですね(目を逸らしながら
「えっと、それでですね。一応犯罪に関わりがないか調べるために一旦お預かりします。調べが済みまして、盗品などでないことが明らかになりましたら土地の所有者と発見者とでの等分ですが今回はどちらもミチカさんですね」
「なるほどの、まあ納得のいく話なのじゃ」
城市に何かよく分からぬ税としてある程度持って行かれるかとも思うておったのじゃが、それはあらぬようなのじゃ。想定にあらぬ、と言うことであるのじゃろうの。
「しかしまた変な面倒ごとですね」
「まあ冒険者も武家の一種と考えるならば家を建てる場所から曲がりなりとも剣の形をしたものが出たのは吉兆なのじゃ」
「そういうものなのですか?」
首を傾げてミルケさんがそう問い返すのじゃが、うむ、いや適当に言うたのじゃ。とりあえず吉兆と言うことにしておいて構わぬのじゃ。
「この銀貨、面白いですね。これなんかこの杖っぽいものに似た絵です」
銀貨の片面には枝を広げた樹木が象られておるのじゃ。
「聖なる木か何かで宗教的な意味があるのであろうと思うのじゃが、神殿以前のこの土地の信仰ゆえわらわには判らぬのじゃ」
あるいは調合師錬金術師匠合の建物に祀られておった草木の神なぞに習合されておる神格なのやも知れぬがの。他にも猪や鹿らしき図象の効果があるのじゃが人格化されておらぬ動植物の神格なのかの。興味深いことなのじゃ。
「これなぞは闇の神と冬の大神であろうと思うのじゃが、今祀られておる神像とは趣が異なるのじゃ」
「そうなんですか」
おおう、北方諸国群で人気のある神なのじゃが、ここジープラント王国では判らぬのじゃ。なんとも困ったものなのじゃ。
そうやって話をしておると商業組合から後続として男性職員が何名かやってきたのじゃ。出土品を預かるための人員なのじゃ。
わらわ等も別段無駄話だけをしておったわけにあらず、貨幣の種類枚数なぞを検分しておったのじゃ。
そして石櫃は重いでかい、そして所詮石に過ぎぬ、と言う判断で置き去り中身の石の剣と樹形の杖、硬貨類を馬車に乗せてあった木箱に詰めて持って行ったのじゃ。無論ちゃんと預かりの木札は受け取っておるのじゃ。
「ん、ミルケさんは一緒に戻らんかったのじゃの」
「はい。縫製師匠合から登録の依頼があった型紙のこと、祝祭期のお祭りで大会を開くという盤上遊戯のこと、商業組合はどちらも注目しておりますからご迷惑でなければ同行したいのですが」
「わらわは、と言うか仕立屋は構わぬのじゃが、遊戯はジーダルの部屋で行うゆえジーダルの許諾を得るがよいのじゃ」
「ああー! 商人だー!」
「ええとサーデさんはどうかなされたのですか」
ミルケさん、サーデとマーセの区別が付いておるのじゃ。地味にすごいのじゃ、と言う感想は置いておいてサーデの奇声の理由なのじゃ。
「おそらく交易商等と遊んだ折り、商人の舌先三寸に惑わされて全く読めんかったことを思い出しておるのじゃ」
「なるほど。商人の家では駆け引きの呼吸の練習になると言ってやりこんでますから既存の遊戯の心得が通用するなら強いでしょうね」
なんなら上手に負けてやることが出来る所までやりこみますから、と言っておるのじゃがあれは確か人狼ゲームでの話であったのじゃ。
「いやさ、人狼ゲームは会話の遊戯じゃからの。駒を動かす心得ではのうて、話す中で嘘を見いだす心得なのじゃ」
「どういうことかは判らないですが、それを容易く読まれるようでは商人失格ですね」
「まあ、今日のお披露目は別の遊戯なのじゃが人狼ゲームも箱や札が出来ておるゆえやると思うのじゃ」
「楽しみですね」
「今日は負けない!」
「あたしはミチカちゃんの言う別の遊戯のほうが興味あるね」
うむ、ミルケさんで女子増量ゆえかしましさが大幅に強化されておるのじゃ。
そして昨日と同じ執務机のある商談向けの料理屋で昼餉なのじゃ。
同じである理由は昨日の調合師錬金術師匠合の婆さまとの話し合いの結果わらわが署名したり押印したりせねばならぬ書類がまたも大量に生まれておるからなのじゃ。
ミルケさんが書式を整えておいてくれるゆえかなり楽に仕事を出来るのじゃ。むしろ感謝すべきなのじゃが書類仕事にはうんざりなのじゃ。
匠合の建物の女神像に関する儀式についてと<洗浄>なぞの生活魔法の伝授についてと言う神殿案件や薬研車を<回転>させる魔法具の要望と言うたエインさん案件は商業組合には関係あらぬ純粋にわらわの責任事項なのじゃがその書面もミルケさんがサクサクと準備してくれたのじゃ。
ありがたいの。ギルマスや商業組合の組合長が秘書陣を侍らせておるのも納得なのじゃ。
「あ、そういえば聞いたよ!」
「ん、どうしたのじゃ?」
香辛料についてなぞを少し話しながら食事をしておるとサーデがいきなりそう言うたのじゃ。
「あたしもカレー?食べたい!」
「それじゃなくてもミチカの料理食べたいな」
ああ、なるほどなのじゃ。
「こら。食事中に別のものを食べたいとか言うのは行儀悪いよ」
そしてモリエに叱られておるのじゃ。
わらわは怒られぬよう食後に改めてお茶を喫しつつ話すのじゃ。
「まあ家で食事を作るほどの暇があるかどうかはともかく試作品の味見は頼むと思うのじゃ。それに聞いておるやも知れぬが屋台を出す予定はあるのじゃ。働いてくれるのじゃったら賄いは出るのじゃ」
「おー、働くよ!」
「遊戯の大会の方にも興味があるんだよー。悩む」
先ほどミルケさん相手に闘志を燃やしておったサーデより、実際にはマーセのほうがチェスタイプの遊戯の実力は高いのじゃ。記憶力がよいゆえ定石を覚えておるのじゃ。
思いがけぬ勢いがあるサーデも侮れはせぬのじゃがの。
「屋台の配置なんかはベルゾさんが頑張って調整して下さってますのであとでお話を聞いておいて下さいね」
ベルゾも蟹グラタン一つでここまで働かされるとは思っておらんかったじゃろうの。なにか報いてやる必要があるやも知れぬのじゃ。
「それは兎も角、今日の本題は仮縫いなのじゃ」
「うん、楽しみ」
「うれしいけど面倒」
「面倒だけど新しい服はうれしい」
「はい、では移動しましょうね」
お店の趣旨からか、商業組合宛の書類は送ってもらえるらしく手続きに行っておったミルケさんがそう言うて締めたのじゃ。
さあ、仮縫いなのじゃ。
お読みいただきありがとうございました。