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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
物件を見に行ったりカレースープを作ったりするのじゃのじゃ少女
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カレー! なのじゃ

こんにちは。

何とか間に合いました。! よろしくお願いします。

 わらわはお手塩にカレースープを少しばかり取って味見をしたのじゃ。

 うむ、カレーなのじゃ! いやさカレーを作ったのじゃから当たり前なのじゃが、それでもやはり感動するのじゃ。

「うむ、モリエと狐の人も味見してみるのじゃ」

 おそらく全く馴染みのあらぬ料理ゆえ出す前に味見の感想を聞いておいた方がよいのじゃ。その判断でそれぞれにカレースープを少量ついだお手塩を渡して味見してもらうのじゃ。

「やっぱり匂いがすごいよね。でも美味しいよ。不思議な味で私には説明できないけど」

「あたしたちは薬種の匂いになれてるからかな。むしろいい香り。言われた通り薬種の味が絡み合ってすごく複雑な美味しさです」

 辛味に関してはモリエは問題なし、狐の人はもっと辛くていい、と言う返答なのじゃ。とりあえず今回はこのまま行くのじゃ。


「パンと共に食すに良い程度の濃さの水気と辛味に整えたつもりなのじゃが、辛味は思うたより控えめになったかの。とにかくこのカレースープのお披露目ゆえ心して食すと良いのじゃ」

 わらわの宣言と共にカレースープの入った深皿が配膳されて行き、先ずカレーの複雑な香辛料の香りに興味津々であった調合師等が飛びつくように食し始め、それを見て商業組合のお姉さん等も手をつけたのじゃ。

 食し始めてしまえばカレーの魔力に抗えるはずもあらぬのじゃ、皆カレーに没頭しておるのじゃ。

 牛肉と豆の具材も悪くないチョイスであったのじゃ。<経時>で味をしっかりしみさせておるゆえなのじゃがの。

 うむ、美味なのじゃ! いろいろと改善点なぞもあるのじゃが、それはおいておいて、なのじゃ、カレーは美味しいのじゃ。

 わらわもそう自画自賛しつつカレースープを堪能したのじゃ。


「ここからはおまけの料理なのじゃ」

「どういう意味?」

「食事としてはカレースープまでで充分なのじゃ。これからいくつか作るのは食事ではのうて少し味を変えて味見をしてもらうなぞと言うたものなのじゃ」

 わらわがそう言うと、カレースープをしっかり食し終わった婆さまと組合長が立ち上がり掛けておったのを座り直したのじゃ。うむ、少し待っておると良いのじゃ。

 カレーについての話であろうがそれを話に来るつもりであったのじゃろう。しかしわらわとしてはカレー粉と唐辛子についてもう少々プレゼンしておきたい所なのじゃ。


「なに作るの?」

「大したことはせぬのじゃ。つけるハーブ塩に唐辛子粉を増量して辛味を増した豚の串焼きと揚げ粉にカレー粉を混ぜたカレー風味の唐揚げくらいで良かろうなのじゃ。いや、一応ハーブの香りが強い配合を少し変えたハーブ塩も作って焼くかの」

 見たところ婆さまも含めて調合師の過半は辛味が強いのがお好みなのじゃ。あとカレー粉の可能性を感じてもらっておく必要があるのじゃ。

 この二つは簡単な追加ゆえモリエに指示だけして任すのじゃ。赤い色になった豚肉の串にちょっとひいておった以外に問題はあらぬのじゃ。

 ローズマリー、セージ、スペアミントなぞの香りが強いハーブを主体にしたハーブ塩も作って追加で豚肉の串を焼いてもらったのじゃが、これは香りの強さの許容範囲を調合師と普通の人とで確かめておきたかったのじゃ。


「辛っ。そして熱っ。ええっとカレースープでも思いましたが、体が熱くなりますね」

「発汗作用があると言われておるのじゃ。しかし唐辛子は摂りすぎ、特に空腹での摂取で胃や腸を痛めることもあるのじゃ。気をつけて扱うべきなのじゃが、過ぎれば毒ともなるのは薬種全般に言えることよな」

 アイラメさんにそう応えると婆さまが頷いたのじゃ。

「赤い串はちょっと私たちには辛すぎますね。調合師の皆さんは平気な人が多いようですが。ミチカさんが香りが強いから好みが分かれるだろうと言われたほうは良いと思います。カレースープもですけど慣れない香りが逆に興味をそそるかと。そしてカレーがスープだけでなく肉の味付けなどにも使えるのは驚きました。素晴らしいです」

 組合長が丁寧に皿を示しながらそうのべたのじゃが、商品価値としてのポイントを押さえておって有意義な感想なのじゃ。


 まあ皆満足したようなのじゃ。無論わらわも大満足なのじゃ。

 あとは食後の茶でも喫しながら婆さまと組合長と話をする必要があるのじゃろうの。面倒なのじゃ。

「茶を喫しながら話すとするのじゃが、チコリーの根を所望するのじゃ」

「根ものを茶にするのは聞かないねえ。アイラメ、もっておいで。そしてミチカ、婆の分も頼むよ」

「あ、私も是非」

「苦いゆえ蜂蜜の準備もしておくと良いのじゃ」

 チコリーの根を焙煎するとコーヒーっぽくなるのじゃ。タンポポコーヒーの類じゃの。チコリーは葉も食べられるし良い植物なのじゃ。独特の苦みがあるゆえサラダには入れんかったのじゃが調合師等の適応度を見ておると入れて良かったのかも知れぬのじゃ。


 チコリーコーヒーは結構好みが分かれたのじゃが、苦手と言うた人には温めたミルクを混ぜたものも勧めたところ概ね好評になったのじゃ。

 コーヒー豆も捜し物リストに入っておるのじゃが、今回の薬種問屋なぞでは発見できんかったのじゃ。残念なのじゃ。

 まあそれはよいとしてお話なのじゃ。

「配合の割合を変えることで味の調整はできるのじゃが、とりあえず今回作ったものを標準のカレー粉とするのじゃ。で、この標準のカレー粉と肉につけて焼くハーブ塩何種か、この配合のルセット、ここに合わせると処方箋と言うべきかの。この処方箋をきちんと記録したはずなのじゃ。アイラメさんが」

「は、はい! 大丈夫です。しっかり記録しました」

 婆さまの後ろからアイラメさんがそう主張するのじゃ。婆さまはわらわがなにを言うか興味深そうに見ておるのじゃ。


「つまりここの調合師がカレー粉なぞを作れるのじゃ。で、なのじゃ。わらわがここに呼び出されたのは薬草薬種の買いすぎだか使いすぎだかの話であったはずなのじゃ」

 一応言葉を聞って確認するのじゃ。

「ああ、そうだったね」

 食べておるうちに忘却されてはおらなんだ様で一安心なのじゃ。

「調合師錬金術師匠合が製造販売を行うなら流通量や在庫管理は問題なく出来るはずなのじゃ。そして処方箋提供に関しての利益配分なぞは商業組合が調整すれば良いのじゃ」

 これでわらわにはなんの問題もあらぬのじゃ。秘技丸投げなのじゃ。

 わらわの完璧なパスに婆さまと組合長は顔を見合わせたのじゃ。


「カレー粉をもっと辛く、あるいは辛味を押さえるなぞの辛味の調整は簡単に出来ようが、魚介に合わせたいなぞと言った味の調整は言うてくれればやってみるのじゃ。成功するかどうかは兎も角の」

 一応完全に丸投げではのうてちゃんとフォローもすると言う態度も見せておくのじゃ。

「まあ問題はそこではあらぬのじゃ。今まで入ってきておらんかったと言う唐辛子の取扱量を増やしてもらう必要があるのじゃ。これは商業組合に頑張ってもらう案件じゃの。カレー粉やハーブ塩に使う薬種や薬草の取り扱いもじゃの。栽培できるものもあろうし二者でよく話し合うのじゃ」

 わらわは商品開発のオブザーバー的立ち位置であって実務に関わる気はないのじゃ。と言うメッセージは伝わったようで二人からじと目で睨まれたのじゃが、実際の話二者の間にわらわが入ってもなにも寄与せぬのじゃ。


「なんだろうね。商業組合が婆たちの頭越しに出した取引の認可で薬草や薬種を買ってる者の顔を拝んでおこうかね、程度のことだったんだがねえ」

「私どもは連絡が来た時点である程度覚悟しておりましたよ。調合師錬金術師匠合もあきらめてご協力を願いましょう」

 うむ、二人とも精々頑張ると良いのじゃ。日を改めてちゃんとした話し合いの場を設けることになったらしい二人をわらわは心の中で応援しておくのじゃ。

 わらわもちゃんと食事をした人等から聞き取りを行って味の好みの傾向の調査なぞをしたのじゃ。狐の人の名前はマキネさんと言うのじゃ。ナンパしておったわけではないのじゃ。調査なのじゃ。

 いつの日か好感度を上げてモフモフさせてもらいたいものなのじゃ。


「物件を決めたり買い物したり、そして調理もと充実した一日であったのじゃ。つき合ってもろうたミルケさんとモリエには感謝なのじゃ」

 組合長等と一緒に商業組合に戻るというミルケさんとはここでお別れなのじゃ。

「お疲れさまでした。いろいろと得難い経験をさせてもらってこちらこそ感謝です。建物の図面などはすぐに準備しておきますね」

「うむ、よろしく頼むのじゃ」

「お疲れさま。私はミチカを宿まで送っていくよ」

 モリエが送ると言うておるのじゃ。

「いた、痛いのじゃ」

 なにゆえであろうかと思うたわらわの頬をモリエが抓ったのじゃ。酷いのじゃ。

「今日、商業組合に来る前に襲撃されたって話、襲撃されたミチカが忘れてるとかないよね」

「ああー! っといや忘れておらぬのじゃ」

「ああーって言ってるじゃん」

 うむ、大して重要な出来事にはあらぬのじゃ。いや、ごめんなさいなのじゃ。

 酷い目に遭ったのじゃ。

 こうしてわらわのカレーな一日は終わりを迎えたのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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