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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
物件を見に行ったりカレースープを作ったりするのじゃのじゃ少女
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ちょっとお祈りなのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。

「あれは少々怯えすぎではないかの。なにやら不安というか心配になって来たのじゃ」

「師匠か上司が厳しくてああいう態度が常態になってるんじゃないですかね。確かに少し心配です」

「自分たちが怖かった、と言う事実から目を逸らすのはいいけどその調合師錬金術師匠合、名前が長くて言いにくい。そこで気をつけることは?」

 モリエも厳しいのじゃ。皆もっと人に優しくあるべきなのじゃ。特にわらわに!

「自分たちの権益が侵されている、と言う苦情だとしても対象は組合であるべきですのでそんなに気を張る必要はないと思います。多分ですけど、ミチカさんに興味を持たれているのではないかと」

「了解。納得した」

「人を珍しい生き物のように納得するでないのじゃ」

 ぷんぷんなのじゃ。


「店主よ、馬車を貸してくれぬかえ」

 まあ歩いて一分もかからぬのじゃがの。機先を制するための虚仮威しのようなものなのじゃ。

「えっ、直ぐそばだよ」

「いえ、確かに馬車で乗り付けるべきですね。歩いていくと下に見られますが馬車から降りるときは上からですので」

 モリエは直接的な実力行使には理解があるのじゃがこういう厭なマウンティング合戦には疎いところがあって可愛いのじゃ。

「うーん、なめられたらいけないってこと? それなら何となくわかるかな」

「うむ、そういうことなのじゃ」


「勢いに任せてお使いを先触れとして帰したのもその範疇での、向こうはおそらく連れてこいと命じておったのじゃがそれを覆しておいたのじゃ」

 任意同行と言う名の連行をうやむやのうちに任意出頭に、そして更にそれを上の立場からおとなうかの如き状況へずらすのじゃ。

 商業組合に頭を抑えられ、そして頭越しに己の職域に関する鑑札なぞを出されてカッカしておるのじゃろうがそれゆえにこそ商業組合の方の立場をとるわらわ等は上から行くべきなのじゃ。

「全く面倒なことなのじゃ」

「そう言いながらすごく楽しそうなんだけど」

 おっと笑みがこぼれておったのじゃ。


「戦いを避け得ぬときは戦いを楽しむべきなのじゃ。これは昔聞いた言葉なのじゃがの」

 そんな感じのことを父さまが言っておったのじゃ。よく言う「置かれた場所で咲きなさい」と似たような言葉なのじゃ。

「続きがあっての、しかし楽しむために戦いを求めてはならぬ、と言うのじゃ。これも大切な心得なのじゃ」

「心得ていても実際に出来ているどうかは別だよね」

「そうですね」

 そんなやり取りをしつつ、快く店主が準備してくれた、快くじゃよな? うむ、その馬車にほんの一分間乗って調合師錬金術師匠合の建物に到着なのじゃ。古色がついておるが荘厳な建物で神殿とも似通った雰囲気があるのじゃ。草木の神や癒しと慰めの神と言った女神の神像が装飾の中に刻まれておるゆえそう感じるのじゃな。同時に建物の古さにも納得なのじゃ。


 先ずモリエが降り、ミルケさんが続いた後にわらわが降りるのじゃがミルケさんが降りたところで少し待機なのじゃ。

「あ、来られたようですよ」

 これはさっきのお使いの人、アイラメさんの声なのじゃ。それに応えて何人か馬車を止めておる正面玄関に出てきたのじゃ。先触れを出した以上出迎えがあらねば失礼ゆえこの出迎えを待っておったわけなのじゃ。

 出迎えに出てきた調合師と思われる黄色い長衣を着た女性等の視線の中ミルケさんの介添えで馬車から降りたのじゃ。

 馬車に向けられておった敵意や警戒の視線が降りてきたのがわらわのような美少女であったことで戸惑いや好奇心の視線へと変化しておるのじゃ。しかしその中で警戒を解かぬ、いやさむしろ猜疑の色をより濃くした視線を向ける老婆が調合師たちの群を割って前に出てきたのじゃ。


「先ずは招きに応じてくれたことを感謝するぞい。婆が当匠合の匠合長をやっておる。来るのがこんなかわいらしいお嬢ちゃんとは思っていなかったよ。中で茶でもしながら話につき合ってくれるかい」

 うむ、厳しい顔をした年寄りなのじゃが、目の中に笑みがあるのじゃ。笑んでおるのに目が笑っておらぬ、なぞというものより手強いのじゃ。

「お招き感謝するのじゃ。楽しい話が聞けると嬉しいことなのじゃがの」

 そして正面玄関から入ろうとしたのじゃが、玄関両脇の壁面に刻まれた女神像が目に入り、足を止めたのじゃ。

「どうかしたのかい」

 先導しておった老婆が足を止めたわらわに気付き振り返るのじゃ。


「わらわにも立場があってじゃの、申し訳あらねど建屋に入る前に勝手に清めて祈らせてもらうのじゃ」

 建物の一部としての最低限の掃除はされておるのじゃが、そこまでなのじゃ。いや考えてみればこの城市の人の多くは<洗浄>の恩恵にあずかっておらぬのじゃから、外壁の装飾としては清掃されておるほうなのじゃ。

 草木の神の像の足下の植え込みには実用的な植物が植わっておって感じは良いしの。

「<洗浄>そして<創水>なのじゃ」

 <洗浄>で丸洗い、そして装飾の一部としか見られておらなんだ空の水盤に水を注いでそしてお掃除完了なのじゃ。

 では祈りを捧げておくのじゃ。


 祈りで流れる魔力から女神像に魔漿石は入っておらぬが魔法陣は組み込まれておる手応えが返ってきたのじゃ。大雑把と言われながらも魔力の扱いを努力してきた甲斐があるというものなのじゃ。

 折角ゆえその魔法陣に奉納として魔力を流すのじゃが、それで祈祷になるのはよいとしてなのじゃ。魔法陣に魔力が満ちた結果、女神像がぼんやりと光っておると言うのはやり過ぎであったかの。

 わらわの収支としては魔力を奉納したのに対して新しい魔法陣と祈祷を得たので大儲けなのじゃが。まあ神殿の書庫で学べる可能性もあるゆえ大儲けではのうてそこそこ儲けかも知れぬがの。まあ祈祷の検証は後程なのじゃ。

 とにかく感謝なのじゃ。


 そして感謝の祈りを終えて振り返ると調合師等がなにやら愕然とした表情でわらわを見ておるのじゃ。

 えーっと、うむ。完全に機先を制したのじゃ。初戦完勝、計画通り、なのじゃ!

お読みいただきありがとうございました。

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