ちょっとモリエとイチャイチャなのじゃ
こんにちは。
今日はちょっと短めです。
モリエが真面目な顔をしてわらわに語りかけるのじゃ。あれかの、オルンを盗ったりしないよう妹として釘を刺そうとかかの、などと益体もないことを考えたのじゃが、無論違うのじゃ。
「あんまり信用し過ぎちゃだめだよ。まあ住み込みの護衛で雇うと言ってるのは分かってるからだと思うけど」
「うむ、ゆえに寝床も倉庫の方に、と定めたのじゃ」
モリエが持っておったのはその地回りのようなものからどの程度の紐が繋がっておるのか分からぬ以上子ども等を信用しすぎてはならぬ、と言う心配だったのじゃ。
住み込みの護衛に素早く賛成しておったのもそれが理由であったのじゃな。それを考えての上で寝床を倉庫の方に作るよう言うたように説明したのじゃが、実際は考えておらんかったのじゃ。反省なのじゃ。
「大沢! 自信があるのは良い。しかし自信があり過ぎて格下相手にガードが下がるのは悪癖だ」
ジムのトレーナーからこう言われたことがあるのじゃ。しかし悪癖とは矯めがたいがゆえに悪癖なのじゃ。困ったものなのじゃがの。
なんとなく、前世のことまで思い出してしまったのじゃ。
「大丈夫?」
「大丈夫なのじゃ」
物思いに耽っておると更に心配されて頬をつつかれたのじゃ。しかしちょっとイチャイチャした感じでもあるのじゃ。別にそういう趣味はないのじゃが女子同士のじゃれ合い、みたいなものは良いものなのじゃ。うむ。
「では昼餉をどこかこの辺りで摂って、午後は香辛料なぞを見てさらくとするのじゃ。うむ、ミルケさん。昼餉に都合のいい店を知っておるかや?」
さて気分を切り替えてご飯なのじゃ。住んでおる街区がどの辺りかは知らぬが最も地元民に近いであろうミルケさんにお店選びは任せるのじゃ。
「近くの適当なお店に案内するわね。ミチカさんを案内するのにはちょっと味が足りないかも知れませんけど」
「わ、わらわは別に食事に文句を付けたりはせぬのじゃ」
「文句は付けないけど次の日から料理をするようになったよね」
モリエの的確なツッコミに声を揃えて笑ったのじゃ。どうせなら美味しいものを食べたいのじゃ、という程度のかわいらしい思いがこの地の食文化の未発展具合と絡み合い結構な大事になっておるのじゃがまあどうせなら美味しいものを食べたいゆえ構わぬのじゃ。
港の近くゆえ港湾地区で働く肉体労働者相手の安い食堂なぞが目に付くのじゃが、ミルケさんが案内してくれたのはそう言う男らしい店にはあらざる女子三人で訪れるに相応しい落ち着いた雰囲気のお店だったのじゃ。
個室形式で食卓と別に書机なぞが据えられておるのじゃ。つまりここは実務的な段階の商談なぞをする食堂なのじゃな。味は食材は高級なのであろうがあまり深みが感じられぬ技量不足のお味だったのじゃ。
不味くはないのじゃが、道端で見た荷役夫の連中が食ろうておった魚介をぶつ切りで煮込んだだけのスープの方が心の躍る料理なのじゃ。茹でた板状パスタの入った椀にそのスープを注いでおったのじゃが、その食べ方も浅蜊のぶっかけ飯のようなテイストの感じられる食べ方で好感を持ったのじゃ。
まあそれは兎も角、その書机で不動産関係の書類に記入したり建築関係の事柄の話を進めたりと食事のついで、むしろ食事がついでで実に有意義な時間を過ごせたのじゃ。
一般的な建築の図面を土地のサイズに合わせたもの、は直ぐにでも準備できるそうなのじゃ。そしてそれ以降の物事についてなのじゃ。
資材は余剰が出たらそれこそ倉庫に入れておけばよいゆえ余裕を見る。大工は求める能力は高くあらぬのじゃが信頼できる者でなければならぬゆえ結局ちゃんとした大工に依頼する。資材と大工の確保が済んだら直ぐに連絡がくる。内装や家具は後回しでよい。箱馬車と馬はどういう商売なのかわらわには判らぬのじゃが、ミルケさんが直ぐに手配するとのこと。
そう言った辺りのことであるのじゃ。主に話が進んだ点に、という但し書きがつくものの有意義な昼餉の時間だったのじゃ。
お読みいただきありがとうございました。