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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
物件を見に行ったりカレースープを作ったりするのじゃのじゃ少女
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蒸着! 的な使用法なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 <防寒>が効いておるゆえ外套の前を掻きあわせて暖をとる必要はないのじゃが、掻きあわせて前を閉じても不自然にあらぬのじゃ。そうして外から見えぬように整えて収納空間から試作品のセスタスを展開するのじゃ。

 手にしっかりと装着した状態で収納しておいたものをそのまま展開したゆえ巻く苦労もなく一瞬で装着なのじゃ。あれじゃ、特撮ヒーローの如き技前なのじゃ。弟等が幼かった頃、よく遊んでやったものなのじゃ。

 街中では魔法の類を発動するのは良くないと教わったのじゃが、バレなきゃいいのじゃ。と言うか<防寒>も発動自体は屋内で行ったとは言え使いっぱなしなのじゃ。魔法陣のみで<跳躍><早足><賦活>とこちらが気をつけておれば気付かれにくい自己強化の祈祷を発動するのじゃ。


 これでこちらの準備は万全なのじゃが、と思いつつ角を曲がるときに横目で確認するとじゃの、やはり下手な尾行がついておるのじゃ。汚れた皮鎧や皮の服からして二流どころの冒険者なのじゃ。

 ん、その後ろに違う服装の者もおったのじゃがはっきりみる前に視界から外れたのじゃ。まあこんなところで大物が釣れるとも思えぬゆえ手早く片づけるとするのじゃ。


「ぐへへ、逃げ場のないところに自分から逃げ込むとはバカなお嬢ちゃんだな」

「気をつけろ、誘い込まれてるんだぞ!」

 <早足>に気付かれぬ程度のステップで目に付いた建物と建物の間の路地に飛び込んだところ、愚か者等が愚かにも走って追いかけてきたのじゃ。空の樽や箱が積んであったゆえすぐ行き止まりなのじゃが、お誂え向きと言ったところなのじゃ。

 並べるのが頑張って二人、まあ普通に考えて一人ずつしか掛かれないと言う状況だと言うのにぐへへと気持ち悪い笑い声を上げておる愚か者と、それと同様の連中が四、警戒の声を上げた少しだけましな愚か者等が二の計六なのじゃ。


「尾行もまともにこなせぬ無能さはよいとしてなのじゃ、下等レッサー豚鬼オーク四頭に小鬼ゴブリン二匹程度でわらわをどうにかできるなぞとどこでそんな妄想を拾ってきたのじゃ?」

「手前ぇ、俺たちをバッジどもと同じに思うなよ!」

 えーっと、協会で撫でたいぬ耳を含む三人組のことなのじゃ。お、覚えておるのじゃ。

 それにしても数の優位を活かせぬ場に誘い込まれておいてそれを理解しておらぬのかの。まあ、下等レッサー豚鬼オーク呼ばわりされて顔を真っ赤にしておるのじゃが、鼻息が荒く本当に豚鬼オークのようなのじゃ。


「人攫い! 変質者!」

 豚鬼オーク面を前にわらわは声を上げたのじゃ。

「なっ」

「これで其方等は美少女誘拐犯になるのじゃが、それはどう捌くのかえ? そのバッジとか言う連中は協会の訓練場でやることで冒険者同士の訓練という言い訳をつける程度の知恵はあったのじゃが」

「えっ……」

「……」

 沈黙が流れたのじゃ。

「人が来る前にやっちまえ!」

「応っ!」

 本気のバカどもなのじゃ。豚鬼オークづらの男が両手を広げてのしかかってくるのじゃ。無防備で愚かな攻撃なのじゃが、正直キモイのじゃ。精神的な攻撃力はあると認めざるを得ぬの。


 手を掻いくぐり相手の足下へと潜り込むようにステップイン、右拳を頭上に構え飛び上がる勢いで足腰背筋、そして<早足><跳躍>の威力を総て乗せて下からジョーに叩き込むのじゃ。

 ミサイルの発射の如き渾身のアッパーカットが打ち込まれ、卵の殻を叩き潰すようなセスタス越しの感触を拳に感じたのじゃ。

 口腔から弾き出された歯と鮮血をまき散らしながら豚鬼オーク面はぶっ倒れ、その光景を口を開けてポカンと見ておる二人目の懐へとわらわはノンストップで飛び込み左ボディ、ボディで下がった顔面への右ストレートと言う単純なコンビネーションを叩き込み理解が追いつく前に沈めたのじゃ。

 うむ、セスタスの調子はよいのじゃ。残念ながら全力のパンチを打つと人間の手や指の骨というものは容易く折れるのじゃ。それを防ぐためのアブソーバーがセスタスなのじゃ。

 拳をいたわる必要なくぶん殴れるのは気分がよいことよの。あのピレネー犬の人には礼を言わねばならぬのじゃ。


 三人目は呆れたことに街中で剣を抜こうとしておるのじゃ。しかし抜剣の技術があるわけでもなく、なぞと言う水準ですらなく目の前で二人倒されてわたわたしながら抜こうとしておるのじゃ。

 左手が鞘に右手が柄に。人はそれを急所ががら空きと申すのじゃ。

 折れた鼻を押さえ鼻血で血みどろになりながら転がり回っておる二人目を踏み台に跳躍し、自分の腕が腰のあたりにあり防げぬと悟ったらしき驚愕の顔面に体重が総て乗った右ストレートを叩き込むのじゃ。

 折れた歯が舞い、三人目も地面をのたうち回る仲間入りなのじゃ。


 楽勝なのも良いのじゃがテクニックを活かす余地すらないのは愉しみが足りぬのじゃ。そう思いながらわらわはセスタスに刺さった歯の破片を払い落として残り三人に向き直ったのじゃ。

「そこじゃ不利だ、下がれ! 三人掛かりだ!」

 その叫びとともに路地から後ろ向きに飛び出して路地の出口を囲む形で構えたのじゃ。その手にはそれぞれ剣や短剣が握られておるのじゃ。

 余りのことにわらわは唖然としたのじゃが、それを怯えておるとでも思いおったのか男等は下卑た笑みを浮かべたのじゃ。

 が、その笑みは一瞬で絶たれたのじゃ。


「手前等、なにしてやがる!」

 重たい打撃音とともに剣を持った一人が崩れ落ち、そんな怒声が響いたのじゃ。

 街人のおっさんなのじゃ。手に心張り棒のような頑丈な角材を持っており、その角材には今沈めた男の髪の毛と血が付いておるのじゃ。頭にクリーンヒットで少し心配になるレベルなのじゃ。まあ心配してやる義理はないのじゃが。

 おっさんは一人だけではなく隣近所から出てきたらしき四人ほどが木槌や角材を持って囲んでおるのじゃ。更にその後ろに包丁や木の棒を持ったおばさんやらも出てきており、短剣を持った二人の顔は真っ青なのじゃ。


 路地を出たら馬車も往来しておる表通りなのじゃ。そこで剣を抜いて振り回そうとするなぞ狂気の沙汰なのじゃ。流石にわらわも唖然としたのじゃが、本人等も今やっと自分の状況に理解が追いついたようなのじゃ。

「短剣を鞘に戻し、おとなしく縄を打たれるのであらばわらわは其方等が刃物を抜いておったことを忘れてやるのじゃ」

 口をぱくぱくしつつ周りを見回し、逃げ場がないことを悟ったのか短剣を鞘に収めて両手を前に差し出したのじゃ。

「うむ、賢い判断なのじゃ。そして取り調べには正直に答えるのが結局其方等自身のためになると心得るのじゃ」

 とりあえず一件落着なのじゃ。


 わらわは助けに出てきてくれた街の人に向き直り深々と礼をしたのじゃ。あ、お辞儀は中央風の風習であったかの。まあ気持ちは伝わるゆえ良いのじゃ。

「其方等の勇気に助けられたのじゃ。深くお礼申し上げるのじゃ」

 包丁なぞを家に戻し、代わりに縄を持って出てきた街の人がぐるぐると愚か者どもを縛っていくのじゃ。そうしつつわらわを気遣ってくれたり、美少女襲撃犯である連中を罵ったりしておるのじゃ。

「無事で良かったよ」

「こんな子を襲おうとするなんて!」

「なにを潰しておいた方がいいんじゃないかい」

 おばちゃんによる最後の言葉に話を聞く余裕のある二人は縛られたまま後ずさろうとしたのじゃ。むしろ積極的に潰した方がよい四人が気絶しておったり痛みに呻いておったりで聴いておらぬのが残念じゃの。


 警邏隊に引き取りに来てもらわねばならぬのじゃが、ゲノール隊長を名指しで呼ぶよう頼んだのじゃ。ゲノール隊長がつかまらなんだら北面支隊長のハンケル=ゼックを、と頼むとすばしっこそうな男の子が走っていったのじゃ。

「本当に礼を言うしかないのじゃが、刃物を持っておる相手に無謀な真似をしてはならぬのじゃ」

 見事な打撃で推定冒険者を沈めたおっさんには一応忠告しておくのじゃ。此奴等は底の抜けたバカであったのじゃが、その分ナントカに刃物であったのじゃ。

「俺にもお嬢ちゃんと同じくらいの娘がいるんでね」

 おっさんは親指で路地の隣の建物の入り口を指したのじゃ。


 小さい女の子が入り口からこちらを覗いておるのじゃ。手を振ると振り返してくれたのじゃ。かわいいの。

 しかしどう見てもわらわより二つ三つは幼いのじゃ。

「そう言う大事な子どもがおるのじゃったら尚更なのじゃ」

 ついでに野次馬心も少し満足させてやる程度のサービスも恩返しのうちなのじゃ。と言うことで問題の周知の一環として孤児やらが増えておる問題、そして冒険者協会が孤児の受け入れをしておることと、同時に子ども等に酷い扱いをしておるおかしな連中もおることなぞについて話すのじゃ。

 反応を見るにやはり問題の認識が広まっておらぬのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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