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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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お茶の話なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


「エインさん、もう神殿ではないゆえミチカと呼んでも構わぬのじゃ。こっちも慣れぬのじゃ、口調もの」

「ああそれは助かるだの、ミチカちゃん。いや、そう言いたい所だが左右から別々の名で呼ばれても困るじゃろう」

「ふむ、それもそうなのじゃ」

 そんなことを話しながら本日二度目の入店なのじゃ。ちなみにオズンさんは馬車でお留守番らしくエインさんしか降りてきておらぬのじゃ。

 ズークさんはエインさんを伴って戻ってきたことに驚きつつもにこやかに迎え二人は挨拶を交わしておるのじゃ。


「連れてきておいて悪いのじゃが、ズークさんと茶の製法の細かなところを話さねばならぬのじゃ」

 緑茶の製法についてのお話を先に済ませてしまっておきたいところなのじゃ。機を逃すと忘れてしまいそうじゃからの。己で茶の木の栽培なぞをやるわけでもあらぬゆえ。

「では恐れ入りますが、お茶を淹れるところを厨房などで実地に見せていただけませんか」

 わらわとズークさんが奥にでも移動しようかと立ち上がりかけたのじゃが、エインさんが機先を制してそう言うとズークさんちの若奥様と厨房へ向かったのじゃ。


「うむ、勿体をつける意味もあらぬゆえ言ってしまうのじゃ。今の緑茶の製法は茹でた後揉んでおるのであろ?」

「はい、そうです。本当にマーティエのご慧眼恐れ入ります」

 甜菜栽培を見抜かれた所為かズークさんはわらわの知識に疑問を感じなくなっておるのじゃ。良いのじゃ、話が早くなるゆえの。

「茹でるより蒸す方が味が良くなるのじゃ。発色は茹でる方がよいとは申すようなのじゃが、味の方が重要なのじゃ」

「味の方が重要なのは当然なのですが」

 少し困惑顔なのじゃ。

「うむ、其方も判らぬ顔をしておるのじゃが、このあたりでは蒸すと言うことに不思議と足りぬ所があるのじゃ。サウナ風呂のようなものであるのにの」


「ああ、サウナに食べ物を持ち込むと腐る、と言われていますがそうではないのですかね」

「それならむしろ発酵させる茶には良いではないかえ。しかしまあ蒸すのが一般的にならぬ理由は見えたのじゃ。あとその謂いが普及の邪魔をいたすように思えるゆえサウナの喩えは使わぬことにするのじゃ」

 何となく長年の、嘘なのじゃ最近の疑問が一つ解消された気がするのじゃ。同時にサウナと似たようなものと思われては普及せぬことも判ったのじゃ。まあサウナに対する謎の言い掛かりは新たなる謎なのじゃがの。

「ええい、まあ良いのじゃ。茹でると言うことは、なのじゃ。言わば一度茶を煮出しておるのと同じなのじゃ。それを蒸気、湯気で行えば無駄に茶の気を流して仕舞うことなく緑茶に出来るのじゃ」


「なるほど。その蒸すと言う行程は兎も角茹でるのが茶の気を流していると言われればそれは判らんではないですね」

「蒸し器をエインさんに作ってもらっておるゆえそれを菓子工房用に発注して茶の方にこっそり転用するのじゃ。まあ蒸し菓子も作って良いのじゃがの」

 菓子工房の方は緑茶の菓子や茶に合う菓子を作っておったゆえ甜菜のことを伏せても納得行く話の筈なのじゃ。後に甜菜糖のことが明らかになったときに大事に巻き込まれるかも知れぬのじゃがその点はおいておいて、出資してもらったり蒸し器を作ってもらったりは構わぬであろうと言うエインさんに関わる話も済ませておくのじゃ。


「おいておく、と言うよりは道連れに巻き込むにはちょうど良いほどの有力者ですな。話をしに行きましたが組合長も巻き込まれてくれる気があるようです」

「ふむ、それは重畳なのじゃ」

 商業組合の組合長を巻き込み要員で確保できれば、あとは甜菜畑と砂糖工場の生産量の問題に過ぎぬのじゃ。で、まあ茶の話に戻るのじゃ。

「蒸す、以外にも釜炒りするという製法もあるゆえ新茶の季節にはそれも一つ試してみるのじゃ」

 確か嬉野茶なぞはそうであったのじゃ。余り喫す機会は多くなかったのじゃが美味しかった記憶はあるのじゃ。しかし、試す、と言うようにキチンとはやり方を知らぬのじゃ。


 そして茶でもう一つ頼みたいことがあるのじゃ。むしろ本題なのじゃ。

「これは茶葉の方から手を加えねばならぬし全部が全部面倒ゆえ、余裕があればで良いのじゃが頼みたいことがあるのじゃ」

「ほう、何か緊張する前置きですな」

 言うほど面倒なのじゃ。

「茶の木に茶葉にする新芽が出るその二十日くらい前にの、葦簀なり布の幕なり、あるいは仮設の屋根なりで日光を遮るのじゃ。こうすると薄く柔らかい新芽が採れるのじゃ。この茶葉を使って茶を作るのが一つ。もう一つ、これを蒸した後揉まずに乾かして葉の軸や脈を取り本当に葉の部分だけを石臼なぞで細かな粉にして欲しいのじゃ。手間も掛かるし量も出来ぬゆえ本当に負担にならぬ程度で頼みたいのじゃがの」


 わらわの話を必死にメモしておったズークさんが顔を上げたのじゃが、難しい顔をしておるのじゃ。

「これはつまり、最高級なお茶の製法、と言うことですか?」

「うーむ、そうとも言えるのじゃが、このあたりの人の口に合わぬ可能性もあるゆえその場合は手間に見合わぬ茶となるのじゃ。粉にする前の話なら間違いなく良い茶になると思うのじゃが、茶の木の管理と言う手間を考えて見ねばなるまいの」

「判りました。試してみます」

 うむ、任せたのじゃ!

 ちなみにこれは抹茶の製法なのじゃ。本来なら茶壺に保管して茶臼で挽く時期も決まっておるのじゃがまあそこまではやっておられぬのじゃ。

 今、言うただけで面倒極まっておるのじゃからの。 


 蒸した茶を搗いて固めて麹を植えて後発酵させる黒茶の類もあるのじゃが、これはわらわの手に余るのじゃ。いや麹造りからやってみても良いのじゃろうが、麹を造るのであらば味噌や醤油の方から考えたいところなのじゃ。

 少し冷めたお茶を喫してしゃべり疲れた喉を潤すのじゃ。

「これで大凡わらわの説明できる茶の話はしたかの。役に立てばよいのじゃが」

「蒸すという製法の見直しだけでもかなり変わりそうですね。やってみましょう。本当にありがとうございます、マーティエ」

「礼は首尾よく良い茶が出来てからでよいのじゃ。新茶の季節を楽しみにしておくとするのじゃ」

 緑茶の製法の話はこれで終了なのじゃ。わらわにもう少し知識があれば良かったのじゃがの。


 あとは戻ってきたエインさんを交えての会話なのじゃ。

 まずは菓子工房について話すのじゃが、わらわには作る菓子の選定なぞ考えるべきことは多々あるのじゃが、話すことは別段ないのじゃ。出資や蒸し器の話なぞは口を差し挟むほどのことはないゆえの。

 蒸し器は大型のものが必要になるやも知れんのじゃが、それこそ試しに使ってみた上でのことなのじゃ。

 祭の屋台についても売る菓子や料理についての思案はあるのじゃが、話し合ったり確認したりする部分は少ないのじゃ。茶も出すかどうかくらいじゃの。祭については実務的なことより、本来のメインである神殿の新年の祭儀、迎春神事の類に関して全く知らぬエインさんに話を聞かせてやったりしたのじゃ。


 うむ、わらわ的には迫るタスクに追われたような会話でなかったゆえ楽しくお茶ができた気分なのじゃ。エインさんとズークさんの方は知らぬがの。

「では菓子工房は祭までに生産を始めるゆえ最悪人だけでも先に準備するのじゃ。無論、人は選ぶのじゃ。その上で作る指導を始めるゆえの」

 これはモリエに任せても良いかも知れぬの。今までに作ったことのある菓子しか作らぬならば、なのじゃが。

「屋台の申請や遊戯の競技会へ向けての諸手続や遊戯盤や駒の量産等やることは多いと思うのじゃがよろしく頼むのじゃ。王と鯱の石駒作りで貝を使ってみることもあったの、それと蒸し器や口金の方も菓子工房へ回す分を追加で発注も頼むのじゃ」

 なかなか激務な気がするのじゃが、これ以外にもゲームを各種広めることなぞを考えると色々な人との社交も重要であろうの。まあ息子さん共々がんばって欲しいのじゃ。


「では信頼しておるゆえよろしく頼むのじゃ」

 こう頼んでおこうとしたらなのじゃ、なにやら二人から熱の入った謝意を表されてしまったのじゃ。なんと言うかのう、時代劇で上様やら御老公やらに対するような勢いなのじゃ。

 ま、まあよいのじゃ。

 マードやお嫁さんとも挨拶をして宿に帰るとするのじゃ。今日は店主夫婦がおったゆえお嫁さんとはほとんどしゃべる機会がなかったのじゃが、改めて朝のお菓子の礼を言われたのじゃ。菓子工房を楽しみにしておくと良いのじゃ、旦那さんであるズークさんの長男さんがより帰って来れなくなるやも知れんがの。


お読みいただきありがとうございました。

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