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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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馬車の中でマードと話をするのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


「神像を祀るのはよいことなのじゃが、商人はもとより祀り、敬っておるのじゃ」

 老リーディンも苦笑しておるのじゃ。

「えっ?」

「ふむ、これなのじゃ」

 訳が解らぬ、と言う顔をしておるエインさんに銀貨、所謂小銀貨とも呼ばれる基準銀貨を取り出して見せたのじゃ。基準銀貨には天秤の意匠が施されておるのじゃ。

「この天秤の意匠は商業の神として信仰されておる天秤と契約の神の聖印なのじゃ。其方等商人は常に敬っておるであろ?」

「知りませんでした」

 ポカンとした顔をしておるのはエインさんだけでなく息子さんのオズンさんとベルゾもなのじゃ。


 認識の違いとは面白いものじゃの。

「他の国はジープラント王国のように神殿や信仰が廃れておるわけではないからの」

 ちなみに基準銀貨と呼ばれておるのは北方王会議と呼ばれる北方諸国群内の会合で統一された基準の重さと純度の貨幣だからなのじゃ。ただ、統一されておるのは基準となる銀貨のみで、これが小銀貨とも呼ばれておるのは基準銀貨数枚分の目方の大銀貨なぞも各国が好きに鋳造しておるからなのじゃ。こちらは天秤の意匠ではなく各国で肖像や紋章を入れておるのじゃが、純度は基準銀貨に等しいのじゃ。純度が違うものは北方諸国群での国の間の取引では使用を拒否できる条約になっておるからの。

 と言うわけで、北方諸国群の領域では基準銀貨立てで取引出来ることに商人は感謝しておるはずなのじゃ。西方域や中央との取引では各国が本当に好きに鋳造した金貨や銀貨を相手に面倒な両替をしておるゆえの。


「まあ天秤と契約の神の聖印が入っておってもターレル金貨は信用できぬのじゃがの」

 わらわがそう付け加えると中央の事情に明るい老リーディンと交易商のエインさんは笑ったのじゃ。

 中央で基準となるのはかつての帝国金貨、ターレルなのじゃ。が、帝国の後裔を自称する各国が鋳造するターレル金貨は少し小さかったり使っておる金の純度が少し低かったりする、交易商や両替商の敵なのじゃ。

「その点北方諸国群では偽銀戦争の故事がありますからね」

 エインさんの言う偽銀戦争とは愚かな王が目先の金欲しさに純度の低い基準銀貨の偽物を鋳造した結果、北方諸国群の他の国総ての連合軍に攻め込まれ王族が丸々取り替えられたと言う出来事で、この出来事があったゆえ基準銀貨は各国で非常に厳しく管理されておるのじゃ。

 基準銀貨の権威付けのための作り話の可能性もあるお話なのじゃ。


「貨幣以外の話をするとじゃな、ジープラント王国ではどうなのか解らぬのじゃが、天秤を使わぬ商売でも店に天秤をおいてあったりするのじゃ。あれは商業の神を祀っておるのじゃ」

「あっ、あります。棚の上に古い天秤が」

 エインさんが驚いておるのじゃ。

「流石に古いお店なのじゃ。おそらく信仰が廃れる前からあるのであろうの。たまに掃除して差し上げるが良いのじゃ」

「わかりました。いや驚きました。先祖はちゃんと祀っていたのですね」

 エインさんは少し呆然としておるのじゃ。

 本来生活に密着しておったはずのものなのじゃ。そう言う痕跡は探せば幾らでもあるのじゃろうの。


 このあたりで今日は神殿を辞するとするのじゃ。それぞれと挨拶して確認事項を確認しておくのじゃ。

 老リーディンは他の遊戯にも興味があるのじゃな。それは相判ったのじゃ。まあエインさんにお任せなのじゃ。

 代わりにちゃんと孤児院の情報を尋ねる書状を作っておくのじゃ。

 タンクトップおじさんは蛤のような肉厚の貝殻から石駒を抜く、貝の身の方はわらわが買い取る、と言う話があったのじゃ。それと昆布や魚介類の話するため一度港湾協会は訪ねるゆえよろしく頼むのじゃ。

 うむ、来週の海の日に魚介類を持ってきてくれるのであらばここで調理するつもりにしておくのじゃ。


 ベルゾは明後日ジーダルの部屋で遊戯を試すゆえまたすぐ会うのじゃ。それより前でも修道会の事案でなんぞあったら連絡を寄越すのじゃ。

 師匠に紹介したいという話はガントも同様なことを言っておったゆえ明後日に日程を詰めるのじゃ。

 エインさんとオズンさんには大量の仕事があるゆえ頑張って欲しいのじゃ。新型遊戯の製造や競技会の準備、商業組合との折衝やらも多々あるのじゃ。魔法具工房についても楽しみにしておるからの。

 ん、なんじゃ、なんぞ別にもあるのかや。

「うむ、この後ズークさんの茶問屋に戻るのじゃ。話の途中で出てきたゆえにの」

「見知ってはおりますが、マーティエに一つ仲介の労を取っていただけないかと」

 一つ商売に噛みたいということであろうかの。忙しそうなのに精力的なことなのじゃ。マードに視線をやると諾と言う意を示しておるゆえ一緒に戻るとするのじゃ。


「では一緒にこちらの馬車で参りますか?」

「あー、わらわは乗ってきた馬車に待機して貰っておるのじゃ。それでマードと一緒に戻るゆえ二台連ねていくのじゃ」

 リーダも一緒にと思ったのじゃが、なんとリーダはガント等が帰ったときに素知らぬ顔で同道して飲みに行っておるのじゃ。案外侮れぬのじゃ。

 おそらく同じ馬車留めに待機しておったのじゃろう、わらわのもエインさんのも程なく馬車が戻ってきたゆえ神殿から出発なのじゃ。

 馬車の中はマードと二人なのじゃが、マードが少し悩んでおる風なのじゃ。


「マーティエとエインさんは親しいのでしょうけど、エインさんが距離感を計りかねて困っておられましたね」

 ああ、なんかちょっと変な感じだったのはそうじゃったのか。

「神殿という場で呼び方も違う所為でもありましょうけど。神像を祀る話もそうですね、私どもやアントバさんと神殿を通じて親しいと言うことがあってのことですわ」

「流石にマードはマードであると同時に商家の女将さんなのじゃ。よく見ておるの」

「あらいやだ。失礼しましたわ」

 人間関係は難しいものなのじゃ。わらわはそう言った面は少し疎いところある、いわば弱点なのじゃ。


「ああ、でもマーティエの行動を縛ろうとか保護者代わりの座に行こうとか言う感じではありませんから信用してもいい方だとは思いますよ」

 そうじゃの。そう言う点で不信感があれば今同道しておるのに許諾の態度を見せんかったであろうからの。えーっとつまりなのじゃ。

 商売や人間関係の駆け引きで神を祀るなぞと言いだしておったことがマードとしては許せぬが、同時に商売相手としてなら信用できる範囲だと言うことなのじゃ。おそらくの。

「マーティエとしてではなくミチカとしてなのじゃが、フォ・マイセからこの城市まで結構長い馬車旅を一緒に過ごしたのじゃ。ゆえにこの城市では一番つきあいが長く親しくもあるのじゃ」

「左様ですのね」

 うむ、少し感じが柔らかくなったのじゃ。


「まああと茶の製法で話す部分にの、ちょうどエインさんに作って貰っておる蒸し器を使う部分があるのじゃ。それを横流ししようと思っておるのじゃ」

「あらまあ」

 これにはマードも笑ったのじゃ。

「わらわは色々と目が行き届かぬ面があるゆえ、見ていてもらえるのはありがたいことなのじゃ。ただの、細々とした信仰を守っておったマード等には少し好まぬことになるやも知れぬのじゃが、わらわやリーディンの知遇を得たいが為に神殿に来るものがこれから増えていくやも知れぬのじゃ」

「そう、ですわね。リーディンもあれだけの方なのですから、本来ならもっとお客さまが来ても当たり前ですわ」

 おや、老リーディンは案外高く買われておったのじゃ。実際それだけのことはあるのじゃがの。


「あれじゃな。神殿には現在閉めておる部屋が多いのじゃが、控えの間や応接の間はもう開けた方がよいかも知れぬのじゃ」

「そうですね。今日は食堂を使いましたけど」

 神殿の建物自体は大きな建築なのじゃが、使っておらぬし人手もあらぬしでほとんどの部屋が締め切って使われておらぬのじゃ。ゆえに先ほどのように食堂を控えの間のように使っておったのじゃ。

 先ほどのことで例に取るのじゃ。本来ならわらわの待つ控え室と訪ねてきたエインさんの控え室は別で、ガントの帰る報告なぞが一緒に来るはずがないのじゃ。そしてエインさんがわらわのおる控え室に来て、タンクトップおじさんも別の控え室に戻りそこから先触れがあってわらわ等のおる控え室へ来るのじゃ。タンクトップおじさんは最初から老リーディンの友人ゆえ聖務室でよいのじゃが、エインさんは初対面であるゆえ応接間に通されるべきなのじゃ。

 つまり四部屋ほどの整備とマードがあと二人くらい必要なのじゃ。


「片づけなどは修道会に来ておった冒険者の若いもの等を使えばよいのじゃ。というより気にせず神殿の用に使うのじゃぞ」

 そのためもあって数を揃えておるのじゃからの。

「まあ、ありがたいことですわ」

「冬の間は冒険者は暇らしいゆえ良いのじゃが、春からはどうであろうかの。まあ状況を見つつベルゾが差配するのじゃ」

 マードと普段より密度の濃いめの話をしておる間に馬車はズークさんの茶問屋の前に着いたのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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