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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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碁にこの世界での名前をつけてもらうのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


「ミチカちゃん、いやマーティエはもしや製法をご存じなのですか。いや、いやまた今度おうかがいします」

 今さらに仕事を抱え込むことを回避したのじゃ。身の程をしっかり把握しておって偉いのじゃ。

 わらわもかくありたいものなのじゃ。概ね失敗しておるのじゃがの。

「サーマツィーア王国では情報を漏洩させたり逃げ出したりした鏡職人やガラス職人は家族まで処刑されるそうですからね。それはそうとして魔力筆です」

 鏡は兎も角板ガラスの方はその印象が厳しすぎて難しく考えておるのではないかのう。いやさそれも含めてサーマツィーア王国の作戦勝ちなのじゃ。


 それはそうとして確かに魔力筆の方が大事なのじゃ。

「勿論私も詳しい製法は知りませんが、一粒の魔金をその百倍の金と坩堝で熔かして混ぜたものがその金の筋に使われておりそれが魔力を通す、と言うことです」

「なるほどのう。そして確かに魔漿石は使っておらぬゆえ他人でも書けるのじゃな」

「そうですね。あとは先端に魔力を変換する魔法陣が細密に仕込んであるだけの簡単な構造です。魔力を通しやすいよう金の筋が軸にまで巡らせてあるのですがマーティエの場合は通しすぎないよう魔力を絞ってください」

「うむ。では使わせてもらうのじゃ」


 おおっ、書きやすいのじゃ。まずは木の板に試し書きなのじゃ。書きやすいのじゃが、確かに筆跡が深く刻まれてしまっておるのじゃ。ぐっと絞って羊皮紙の契約書に署名なのじゃ。うむ、流石は皮なのじゃ。

「普通の紙は無理そうですね」

「なかなかの切れ味なのじゃ。むしろ武器になりそうな程であるのじゃ」

 うむ、これは難しいのじゃ。紙がスパスパと裁断できるゆえ別の用途で使えるのう。

 まあありがたく使わせて貰って堪能したので返すのじゃ。感謝なのじゃ。

「素材の話の時に詳しくは話しませんでしたが、魔金の剣がそれです」

「な、なるほどなのじゃ」

 ベルゾが受け取ってそんな話も教えてくれたのじゃ。魔金が魔法具を作る分に重宝される理由は得心できたのじゃ。


「どうなさいます? 一応知り合いに手に入らないか聞いてみてはおりますが」

 エインさんに頼んでおったのじゃが、この有様ゆえ確認されてしまったのじゃ。

「うむ、それは頼むのじゃ。魔力を細く使う訓練にはなりおるし、まあなんとなれば石に文字を刻んだりするのに使えるのじゃ」

 魔力印章の押印も魔力の流出量をぎゅっと絞って行うのじゃ。なんにせよこれも修行なのじゃ。魔法陣の描画は細部まできっちりくっきりと出来るようになっておるのじゃから、この流出量調整も出来るようになるはずなのじゃ。


 アーネヴァルト修道会の名前と紋章の入った看板を魔法具工房と昨日行った木工細工師の工房、そして販売を統括するエインさんの商会の三カ所に置く、と言う部分以外は妥当な内容ゆえ気にせず署名と押印なのじゃ。

 で、この看板は必要なのじゃろうかの? と言う点に関してはむしろ魔法具工房の名をアーネヴァルト工房に、と言う話を出資はしてても修道会直営ではないからと断ったそうなのじゃ。妥協の結果であったとはの。

「まあ、倉庫があって調理が出来るなんて物件を探していると聞いています。調理師は普通工房とは言いませんが調理以外もするでしょうしそこをアーネヴァルト工房にすればいいと思いますよ」

 大仰なものにする気はないのじゃが、とりあえずおいておくのじゃ。


 書類仕事は終わったゆえ碁の方はどうなっておるかなのじゃ。

「さて、そちらの調子はどうじゃの」

「確かに遊び方の規則は簡単じゃが、それなのに、いやそれ故か、面白いわい」

「考え方を変える必要があるので大変ですな。マーティエともきちんと一局打ちたいものですが」

「まだ其方等には定石があらぬゆえわらわに敵すことは無理なのじゃ。もう少し其方らの研究が進んだ折りには勝負してやるのじゃ」

 ふふん、と笑い飛ばすのじゃ。まあむしろ普通の盤上遊戯をやる分にはよいのじゃがの。


「儂等には初めて見る遊戯でもマーティエにとっては知っておる遊戯じゃからなあ。しかし、ゴと言う名は簡素さを極めすぎておるわい」

 あ、そうなのじゃ。老リーディンには中央の遊戯ではないことが分かるのじゃ。まあ交易商由来の謎の遊戯として気にせず流してもらえるようわらわも全く気にせぬことにするのじゃ。

「囲碁と言うたり、あと烏鷺とも呼ぶのじゃがどっちにせよ短いのじゃ。もしリーディンが気に入ったのなら名を付けると良いのじゃ」

 これは視線をエインさんに向けつつ言うたのじゃが、頷いておるゆえ大丈夫なのじゃ。

「難しいことを言うものじゃわい」

 そう言いながらマードに紙とペンを持ってこさせて少し唸ったのじゃ。


「よし、これじゃ!」

 老リーディンはさらさらと筆を運び、ピシッとペンを置いてそう宣したのじゃ。

 紙には『王と鯱』と書かれておるのじゃ。そしてエインさんがありがたそうに紙を預かったのじゃ。

「ふむ、石駒の白と黒で鯱かや」

「マーティエに釣られて短い名になってしまったわい。そこの親方がしておった将と王の喩えが頭に残った結果でもあるがの」

 ああそれで王なのじゃな。

「将の立場であれば歩兵の駒や騎士の駒と人の顔が見えるが、王の位置から見れば個の区別なくただ等しく駒に過ぎぬとは含蓄深い話じゃわい」

 そこまでは言っておらんかったのじゃ。


 そしてそのまま雑談じみた話になったのじゃ。

 一応訊こうと思っておった聖祝期のお祭りについても聞けたのじゃ。神殿では当たり前の新年の祈祷や祭儀を行い、お祭りは行政府や商業組合が中心となって派手に行うのじゃそうな。

 今まで聞き流しておったのじゃが、現在この城市の首長にあたるのは総督さまで、これは王弟殿下ゆえに総督なのじゃそうなのじゃ。そうでなければ総督ではなく代官さまで、代官府と市政庁舎に置かれた行政府の二重権力状態なのじゃが、総督さまがおると代官府が総督府になり城市の行政府より上位になるのじゃと。面倒なのじゃ。


 その総督さまがお出ましになる中央広場を中心とした新年のお祭りがあり、各街区でもそれから日を遅らせて催しを行うのじゃそうなのじゃ。

 王弟殿下なのに王宮の行事に出ずとも良いのかと思うたのじゃが、マインキョルトの祭りの初日にお出ましになった後馬車をとばして王都へ向かわれるそうなのじゃ。王族も大変よな。それでも初日に王宮におらぬあたり難しい立場なのかも知れぬの。どうでも良いのじゃが。

 そしてマインキョルトの祭についてなのじゃが、聖祝期、始まりの週の最初の二日が中央広場のみで行われ三日目から各街区の広場でも祭が開催されるのじゃ。屋台なぞはその最初の二日の間も出しておったりするようなのじゃ。

 ただ、この神殿前の旧中央広場は余り盛んではないとのことなのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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