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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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待ち時間は書庫なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 わらわが話し終わるとタンクトップおじさんがこめかみのあたりをグリグリし出したのじゃ。難しいことを考えるのがイヤなタイプなのじゃろうかの。いや外見から見たただの偏見なのじゃが。

 そうやってみておるわらわにベルゾが苦笑をこぼしたのじゃ。

「私は随分と前からマーティエがなにを言い出そうがなにをしでかそうが全く気にしないことにしています。あとマーティエの年齢のことも一切考えません。ですが初めてお会いになった人は困惑するでしょうね」

「うむ。それが秘訣じゃわい」

 ベルゾの失礼な物言いに老リーディンも賛同しておるのじゃ。わらわはそれを軽く聞き流しつつよう喋ったゆえお茶を喫すのじゃ。うむ、美味しいのじゃ。


 タンクトップおじさんはいや大丈夫、なぞと言いつつすぐに立ち直ったのじゃ。

「その準備部会とやらには港湾協会うちからも人を差し向けます。仕事先として現状受け入れている立場ですので問題ないでしょう」

「そうじゃの。神殿からもリーダを遣るとするわい」

 タンクトップおじさんの申し出に老リーディンも乗るのじゃ。連絡はこちらでしておきます、なぞと言いつつベルゾがメモをしておるのじゃ。

「外部からの注目も集めていて、部会に参加してくると言うことは冒険者協会の参加者側が真剣になりますし、否定的な意見を抑える役にも立ちます」

 わらわはベルゾの注釈で納得したのじゃが、ベルゾはさらに少し付け加えたのじゃ。


「あまり言いたくはありませんが、現状から見て冒険者協会の職員の中にも胡散臭い連中と繋がっている者が混じっていると考えるべきです。ですので第三者の目は重要だと思いますね」

「納得も行くのじゃが、うんざりする話なのじゃ」

「ギルマスの狙いが牽制なのか炙り出しなのかは解りませんがね」

「ギルマスが冒険者協会の北方諸国群総会に出かけておる間に準備部会を開く日程になっておれば炙り出しの方であろうの」

 おそらくそっちなのじゃ。ギルマスもなかなかに根性が悪そうであったからの。それは兎も角なのじゃ。

「それはそうとして、そのペンはインク壷に付けておらぬように見えるのじゃが魔力で書くとか言う魔法具のペンかや?」

 そう、ベルゾがメモを取っておったペンの方が気になっておるのじゃ。


「ええそうですよ。魔力は勿体ないですがインク壷が不要なのは大きな利点ですね」

「ふむ、珍しいと聞いておるのじゃ。わらわも手に入らぬか頼んではみておるのじゃがの」

「マーティエには向いておらんと思うわい。まあ修行を兼ねると思えばいいのかのう」

 ぬ、老リーディンが聞き捨てならぬことを言ったのじゃ。

「魔力筆は魔力印章と同じで注ぐ魔力が多すぎれば紙に穴を穿つわい。注ぐ魔力の量を絞る修行としてはやる意味があるがのう」

「紙を切る道具としてなら面白く使えそうですね」

「なんと言うことなのじゃ。まあきっと必要に迫られれば上手くできるのじゃ」

 入手しても上手く使えぬ可能性があるとは悲しいお知らせなのじゃ。軸とペン先の間に空の魔漿石を挟み込むスロットを作って余剰な魔力を魔漿石に吸ってもらうなぞの魔改造は出来ぬのかの。


 わらわが嘆いておると老リーディンとタンクトップおじさんは気楽に盤上遊戯の話を始めておるのじゃ。

 よし、そろそろ撤収かの。ズークさんの茶問屋にも顔を出す約束になっておるしの、そう思ったところにリーダが書状を持って帰ってきたのじゃ。修道会本部の方が門からは行きやすいゆえ書状をもってきたものがおとないをそちらに入れたのじゃな。

「リーディンとぉ、マーティエに面会依頼ですー」

「ん? わらわもかえ」

「この城市で神殿に面会依頼なぞ滅多にないぞ。むしろマーティエ関係に決まっておるわい」

 憎まれ口を叩きながら老リーディンが確認するのじゃ。

「ニウストラ商会のエイン殿となっとるわい。マーティエの知り合いかのう」

 タンクトップおじさんがエインさんか、と呟いておるのじゃ。知った仲なのじゃな。


「うむ、言うておった魔法具工房の話なのじゃ。昨日、わらわが神殿におる日を教えておいたゆえ早速連絡してきたのじゃな」

「面倒じゃのう。礼儀を守れば三日後と言ったあたりじゃが、儂としてはもう今日この後でも構わんのじゃわい」

「わらわも構わぬのじゃ」

 まあ、話は早く片づけたいものなのじゃ。

「ではそうお伝えしておきますのでー、おいでになったらまた参りますー」

「うむ。頼むのじゃ。勉強の方の調子はどうかえ?」

 ついでに聞いておいてみるのじゃ。この後もそのまま修道会本部に戻るつもりのようじゃからの。

「はいー、皆さん熱心ですねえ。色々訊かれてますー」


「ちゃんと応えられとるんじゃろうな。解らんことは持ってくるんじゃぞ。あと、リーダは見本となるようにのう」

 老リーディンが気になるのかくどくど言っておるのじゃ。心配なのじゃな。まあちょっと頼りないのじゃがその分かわいいのじゃろう。

「は、はいー」

「うむ、期待しておるゆえの」

 逃げ帰るリーダにそう言っておいてやるのじゃ。

「では儂は一局打ちながら待つとするわい。行くぞい」

「おう、今日は目にもの見せてやらあ。あっ。マーティエ、それではひとまず失礼いたします」

「そのうち一度わらわとも打つかの」

「わははっ、あっという間に儂が勝ってしもうたら呼びにやるわい」

「んな簡単に行くかよっ」


 リーディンの聖務室へ向かう騒がしい二人を見送ったのじゃ。

「わらわは書庫を見てくるのじゃ。他国から勧誘してくる予定の祈祷師への餌、もとい報酬に出せる祈祷を確認せねばの」

「書庫にも興味がありますがちょっとガントたちの様子を見てきますね」

「頼むのじゃ」

 ベルゾとも別れ書庫へ向かうのじゃ。今は人気がなく寂れてはおるのじゃが、神殿自体は元々立派なものなのじゃ。つまり書庫もその元々の立派さに相応しい規模と言うことなのじゃ。

「まあ、書籍自体の普及度の問題でわらわが感動するほどではないのじゃがな」

 マードは書庫までは着いて来て鍵を開けてくれたのじゃが、馬車に待って貰っておることを思い出したゆえ使いを出すことを頼んだのじゃ。つまり前世基準の独り言を言っても大丈夫なのじゃ。


 おそらく元は孤児院にあったのであろう子ども向けの神話物語の本が数冊あったゆえ取り置くのじゃ。貸してもろうて冒険者協会の資料室で写本してもらうのじゃ。あそこの写本サービスはおそらくあそこの資料を写本するというサービスなのじゃが、まあきっと教室用の子ども向けの本と言えば教室に関心を示しておった職員がしてくれるはずなのじゃ。

 それはそれで良いとして、肝心の祈祷書も中々にあるのじゃ。エインさんが来るまでに全部とはいかぬの。何冊かは収納空間内に一瞬納めて複製しておくのじゃ。子ども向けの本は出所が謎なことになるゆえこの複製手段は採れぬのじゃが、これは自分用なのじゃ。


「ふむふむ。『<防暑>と<防寒>を合わせた魔法陣を組んだが祈祷には出来なかった。しかし、魔術としてなら実行可能だった。』かえ、この祈祷書の著者は祈祷と魔術の両方を使えたのじゃな」

 わらわなら祈祷として通せる気がするのじゃ、なぞと考えつつ幾冊目かの祈祷書を棚に戻しておるとマードが呼びに来たのじゃ。

 メモを取るのに使っておったペンとインク壷を鞄にと見せかけて収納空間に格納するのじゃ。無駄な手間ゆえやはりその魔力筆は欲しいのじゃ。

 借り出したい子ども向けの神話の本を三冊ほどマードに持ってもらい書庫を出るのじゃ。まあまた来るのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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