表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
128/247

リーディンやタンクトップおじさんと孤児問題について話すのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


「ふむ。信徒会は今はあらぬのじゃな。必要になったらアントバ殿に頼むことになるゆえよろしく頼むのじゃ」

 タンクトップおじさんは思ってもみないことを言われたという顔をしておるのじゃが、あり得る範疇とわらわは考えておるのじゃ。

 と言っておるうちに子ども等の治療なのじゃ。<軽癒>で済む程度ゆえわらわの負担はないも同義なのじゃ。まあそれでも老リーディンの使っておる治癒の権杖は羨ましくはあるのじゃが。


 ううむ、治療するのはいいのじゃがの。

「リーダ、ええとリーダガントとリーダパード。この子ども等は治療が済んだら<洗浄>を掛けてやるのじゃ」

 慣れておると不思議なものでリーダ、マードと言った呼び方で誰を呼んでおるのかわかるのじゃがガント等にはまだ無理なのじゃ。

「<洗浄>の費用はわらわの奢りなのじゃ」

 リーダの差配で治療、丸洗い、そして礼拝と言う順番で子ども等を回していくのじゃ。魔法を間近で見ることはあまりあらぬらしく、子ども等は大興奮なのじゃ。


「子ども等相手の教室では<洗浄>で丸洗いにするように決めておくべきかも知れんの」

 治療を終え、鼻をつまんで<洗浄>を受けたり感謝の礼拝のやり方を習っておったりする子ども等を眺めながらそう言うと老リーディンが疑問を投げかけてきたのじゃ。

「子どもの教室とはなんぞや」

「おや、リーディンに言うておらんかったかの。まだ本決まりではないのじゃが冒険者協会で見習いの見習いやらの子ども等相手に読み書きの初歩やらを教える教室を開こうという話をしておるのじゃ」

「ほう、それはいいことじゃわい。ここには孤児院がないゆえ気にはなっておるんじゃがの」


「まあそれが問題なのじゃ。とりあえず読み書き計算が出来るようになれば仕事の幅は増えおろうし、商業組合に押しつけることも出来るであろうと考えておるのじゃ」

「それはよい考えですね」

 タンクトップおじさんも賛意を示しておるのじゃ。見た目はあれなのじゃが、港湾協会の理事というのはおそらく商業組合や総督府にも影響を持つ立場なのじゃ。大きく広げることになった場合にはこのおじさんに頼る心積もりをしておくのじゃ。

「孤児院があった頃のもので教室に使えそうなものがあらば借りていこうと思っておるゆえあとでリーディンとは少々話すのじゃ。あと子どもが興味を持ちそうな神話の絵本を木版で刷りたいと思っておるのじゃがどうであろうの」


「では茶でも喫しながら話を聞くことにするかのう。今日の祈祷治療はここまでとするぞい」

 港湾協会の人々が口々に感謝を述べて帰って行くのじゃ。子ども等もはしゃいだ感じでありがとうと言っていったのじゃ。かわいいものなのじゃ、と言いつつ背の高さはわらわが概ね負けておる気がするのじゃがの。

 皆帰って行くのじゃがタンクトップおじさんだけは残っておるのじゃ。疑問を感じて見上げるのじゃ。うーむ、背の高低差はかなりのものなのじゃ。

「わたしはリーディンと話がありますので。よろしければその教室についてのお話を横で聞かせていただいても?」

「無論構わぬのじゃ」


 ガントたちは生活魔法の祭文の復習や祭文に使われておる古い言葉についての学習なぞ色々やりたいことがあるらしくリーダを連れて修道会本部の方へ戻って学習会なのじゃそうな。

 わらわはベルゾを連れてリーダ以外の神殿組とタンクトップおじさんと一緒に神殿の食堂へ戻るのじゃ。本来この程度の人数であれば狭くはないのじゃがタンクトップおじさんの存在の主張が激しくてなにやら狭く感じるのじゃ。

「アントバさんはリーディンの盤上遊戯の遊び仲間なのですよ」

 わらわがタンクトップおじさんのことを気にしておると思ったのかマードが少し笑いながらそう教えてくれたのじゃ。


「この爺、おっと失礼しました。リーディンはお強くて負かされてばかりなのですよ。しかし先週は聖務でお疲れのようで少し心配したのですが、マーティエのご助力があるようで安心いたしました」

「ふふっ。言葉遣いはそう改める必要はないのじゃ。しかしリーディンは強くて当たり前ゆえそれと遊べるという其方もなかなかに手強そうであるのじゃ」

 マードが淹れてくれた中央風のお茶にジャムを混ぜて喫しつつそう受け答えするのじゃ。

「当たり前、ですか」

 少し疑問そうに言うのはベルゾなのじゃ。老リーディンはなにやら少し自慢げなのじゃ。


「リーディンとなるための学舎であるマール=ミルクでは盤上遊戯が盛んでの、学寮同士の対抗戦なぞもあるのじゃ。それで聖典の研究より定石の研究に心血を注いでおるものもおったりする程と聞いておるのじゃ」

「同じ学寮に強いのがおってな。対抗戦の代表に選ばれるのがまず大変だったわい。何度かは代表になれたが学生時代を通してみれば大分負け越しておるの。じゃからまあわしなぞ大して強い方ではないぞ」

 前世のわらわは十八であったゆえ己の体験があらぬのじゃが、大人と言うものは己の学生時代を語るとき楽しそうであったのじゃ。今当に老リーディンがそう言う顔をしておるのじゃ。

「それは代表に選ばれるくらい強い、と言う意味でしょうか」

「おそらくそうなのじゃ」

 ベルゾとわらわのやり取りに食堂に笑い声があがったのじゃ。


「マーティエは我々の知るものと異なる遊戯を知っていると聞きますが、それだけでなく盤上遊戯も強いと聞き及んでいますよ。交易商や冒険者併せて十数名を相手に負けなしで総縦にしたとか」

 あれは孤児院で盤上遊戯についてわらわに教えたマーリィが子ども相手に大人げない女であったというだけのことなのじゃ。

「冒険者と打つのは面白いのじゃ。なんと言うかの、どういう攻め方が得意であるとか間合いの取り方や拍子の外し方なぞ、其の者が実際に戦うときの呼吸が見えるのじゃ」

「面白そうですが強くはなさそうですな」

「まあそれはそうなのじゃ」

 再び笑い声があがったあたりで本題に移るのじゃ。


 本題と言うてもまだ実働しておるわけではあらぬゆえ簡単な話なのじゃ。そう考えてふと気づいたのじゃ。

「冒険者協会が冒険者登録の特例を利用して十二歳になる前の子どもを見習いの見習いとして登録しておるのじゃ。そして冒険者酒場で寝床と食事を格安で提供しておるのじゃ。この孤児対策はどの程度冒険者以外に周知されておるのか解るかの?」

 この前提がきちんと伝わっておらぬのではないか、そう言う気配がしたのじゃ。そして問いへの回答はわらわの危惧の通りであったのじゃ。

 タンクトップおじさんは見習い相手に出している依頼にそれより小さい子が来ておることを疑問に感じつつもそう言うものだとスルーしておったのじゃ。大雑把なのじゃ。とは言えその大雑把さゆえ冒険者協会の子等だけでなく炊き出し目当ての街の孤児も紛れ込めておるという点は評価するのじゃ。


 リーディンやマードらは公金が注入されておる孤児院があるというのであまり気にしておらんかったようなのじゃ。リーディンは世間知らずとしてもマード等がそれ、と言うことは商業組合で有力な地位を占める商会の内儀が知らぬと言うことゆえわらわの危惧以上の認知度の低さかも知れぬのじゃ。

 奴隷制度の廃止によって以前なら奴隷商人に売られておったであろう子どもが街に溢れておるわけなのじゃが、これは同時にマインキョルトの急激な拡大で人口の流入によって子どもを育てることが出来ぬような貧民もまた増えておることにも起因しておるのじゃ。

 これに神殿が孤児院を維持できぬと言うこのジープラント王国の国情による問題も合わさって結構な問題なのじゃ。


「子ども等に関して違法な奴隷商人がおるのではないかと言う疑いがあるのじゃ。子ども等に非道な扱いをする冒険者の一派、此奴らも外部からの誘導があるゆえ同一の根かと思うのじゃがまだ疑惑の粋じゃの。しかしなのじゃ、この問題は二次的な問題にすぎぬのじゃ」

 愚か者どもを片づけたところで孤児はむしろ増えるのじゃからの。

「城市なり王国なりがどうにかすべき問題ですな。特に奴隷の禁止に関しては王国が北方諸国群で主導的立場なのですから」

 タンクトップおじさんが腕を組みながら唸るのじゃ。

「教室を開き読み書きと計算を教えて働き先を増やすのは対症療法に過ぎぬのじゃが、人や金を出しやすくする狙いもあるのじゃ」

「なるほど。確かに読み書きや計算が出来る子どもなら港湾協会うちで引き受けることも出来ます。おそらく商業組合も。であれば人材を得るための投資と見ることも出来なくはないですな」


 手を打つタンクトップおじさんから視線を老リーディンに移し一つ頼みごとをしておくのじゃ。

「奴隷制の禁令が行き渡っておる国での神殿の孤児院の状況、出来れば過渡期の状況も解るとなお良いのじゃが、その報告書的なものが手に入らぬかの。それがあらば総督府なぞへ働きかける上で説得力を持つはずなのじゃ」

「ふむ、フォ・マイセのリーディンが儂よりは他のリーディンとの付き合いがあるはずじゃから彼奴に頼むわい」

 メーセルキョーのロリコン疑惑のリーディンのことなのじゃ。しかし少しだけ問題があるのじゃ。

「うーむ、街道が封鎖されておるやも知れんのじゃ。まあ書状を書いておいてくれると助かりはするのじゃ」

 豚鬼オークの大襲撃の原因がダンジョンであろうと言う一件なのじゃ。無論、別のルートもあるのじゃが、大分遠回りになるはずなのじゃ。


 なんにせよ実際に動くのはギルマスか商業組合の組合長なのじゃ。わらわはアーネとして孤児院育ちの身の上でもあるゆえなんとなく孤児問題が放っておけずにくちばしをつっこんでおるのじゃが、少しつっこみ過ぎやも知れぬとは思っておるのじゃ。適切なつっこみ度合いが分からぬゆえ如何ともし難いのじゃがの。

 まあ、教材や教える人材やらの話を軽くしておくのじゃ。運営が上手く回り成果が認められたら規模が拡大するやも知れぬからの。その場合神殿教室の開催も視野に納めておくのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ