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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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港湾協会の祈祷治療会なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 神殿のこともやって貰おうということで依頼の形式なぞをすりあわせた結果、立場としては臨時のリーダ見習い、レイデはマード見習いと言うことになったのじゃ。祈祷師や祝祷師の方が実際的な神殿内の位階は軽いのじゃが実力主義的に使える祈祷によってその位が決まるゆえ現状では名乗れぬのじゃ。祈祷を修得したならば順次切り替えなのじゃ。

「祈祷とは神への祈りであり感謝なのじゃ。ゆえに魔法が使いたい、と言うだけでは伝授できぬのじゃ。しかし、生活魔法の伝授はそこに至る入口となるとわらわは思っておるのじゃ」

 と言うことで主な仕事となる生活魔法の伝授について教えるのじゃ。ベルゾの連れて来た二人と若い冒険者のうち一人はまだ生活魔法を習得しておらぬとのことゆえ礼拝所に移動して実演なのじゃ。


 わらわが伝授したパードとレイデ以外はざっとしたやり方であったはずゆえしっかり学んで貰うのじゃ。

 ちなみに費用は報酬から天引き、しかし修道会割引でお安くなるのじゃ。このお安くなる分はすでに学んでおる皆には報酬の上乗せで還元なのじゃ。神殿の人手不足を補う修道会の人員確保のための手なのじゃ。

 祭文の意味を伝え、意味を押さえながら復誦する、と言うだけなのじゃがリーディンやマードたちは深く頷いておるのじゃ。そして習得したら神への感謝の祈りを捧げる、までをきちんと習得コースに含めるのじゃ。


「礼拝所が基本としても修道会本部でも出来るよう神像など祭壇を作るものを配しましょうか。そうすれば祈祷治療と生活魔法伝授を同時に出来ますし」

「以前はマインキョルトにも後二つほどの小神殿があったのじゃわい。わしの赴任前の話で直接は知らんが。倉庫にそこにあった神像が保管されておるはずじゃ。ただそうするならやはり幡や紋章旗が必要じゃな」

 ベルゾの思案に老リーディンが応えるのじゃ。この二人に任せておったら形がすぐに出来あがるゆえ楽に見えて、わらわの仕事や立場がいろいろと大変なものになってしまう可能性を秘めておるのじゃ。油断できぬ者共なのじゃ。


 それはともかく生活魔法に注釈を入れておくのじゃ。

「冒険者であり魔法を使うことに長けておる其方等はより深く理解すればより巧みに行使できうるのじゃ。とりあえず<早足>で説明するのじゃ」

 祭文と魔法陣の対応と魔力操作による効果の変化、そう双子等に教えた内容なのじゃ。

「マーセが祭文を丸暗記しておったゆえ教えた内容なのじゃが、モリエとサーデも今では出来るのじゃ。兄としての立場を維持するためには出来るようになることが必須なのじゃ」

 ガントが書き写した控えを必死に読み込んでおるのじゃ。

 双子等のことを知っておるらしい若い冒険者等は皆それを見て笑っておるのじゃ。まあ双子等は目立つゆえの。


「これは魔力の使い方を理解している人向けの応用ですね。双子たちがそれをちゃんと出来ることは驚きですが」

「そこは兄の薫陶のたまものゆえなのじゃ。まあ其方等の中にも祭文に興味が出てきたものがおるのではないかの。リーダも勉強中のはずゆえ、興味があらば一緒にリーディンから学ぶとよいのじゃ」

 皆真剣に頷いておるのじゃ。仕事を押しつけられた老リーディンも満足げなのじゃ。この老人はやはり教えることが好きなのじゃな。そしてリーダは人柄はともかく教え子としてはもの足りぬであろうことも納得なのじゃ。


「そろそろー、港湾協会の方々がいらっしゃいますー」

 そう思うたらそのリーダが相変わらず間延びしたゆっくりとした口調でそう告げたのじゃ。

「今日は二人掛かりでさっさと終わらせるとするわい」

「マード等のやることを見て、覚えておくのじゃ。あ、前回わらわが言うた様に治療後に祈りの詞と祈り方を教えて祭壇へ通すのじゃぞ」

 次から働いて貰う新メンバーに指示を出しつつ、わらわのやり方をマード等に強いるのじゃ。

「港湾協会は警邏隊ほど怪我人は多くないんじゃが、大怪我は多い。大怪我は治療の日を待たずに連れて来いと言うとるんじゃがなあ」

「悪化しおったら余計な手間なのじゃがの」


「おう、今日も世話になりに来たぞ。って、こちらは?」

 警邏隊も汗くさい筋肉どもの群だったのじゃが港湾協会とやらも港で働く人足たちで構成されておって負けず劣らず汗くさい集団なのじゃ。いや、後ろの方に子どものような連中もおるのじゃ。

 老リーディンに声を掛けてきたのは恰幅のいい筋肉質の中年で、冬だというのにタンクトップで、その上に上着を羽織っておるのじゃ。しかし、頭には巻き毛のかつらを乗せておるし首には絹のスカーフを巻いておるのじゃ。上着も金糸の刺繍の入った高級品ゆえ冬に上半身タンクトップという変態でありながら上流階級のドレスコードを突破できる装いなのじゃ。おそらくこれが港湾協会の偉いおじさんなのじゃ。


「わらわのことはマーティエと呼ぶがよいのじゃ」

「神殿も人手不足でな。こうやってマーティエ等に手伝って貰うことにしたんじゃ」

「おう、忙しくなったと嘆いておったしいいこったな。マーティエにはご挨拶をよろしいでしょうか」

 タンクトップおじさんがリーディンに親しげに声を交わした後威儀を正してわらわに挨拶に来たのじゃ。

「うむ。そなたが港湾協会の責任者なのじゃな」

「港湾協会の理事の一席を占めるアントバ=メルギと申します。海の日に神のお導きあってこの出会いがあることに感謝と祈りを。リーディンがおひとりで大変そうでしたゆえマーティエがおられることを喜んでおります。どうぞよしなに」

「其方に海の神の恩寵あらんことを。そして諸神に祈りを。こちらこそよろしく頼むのじゃ」


 老リーディンとは親しげな口調であったのじゃが、わらわには折り目正しい対応なのじゃ。きちんと切り替えが出来うるのはよいことなのじゃ。

「港湾協会の怪我人は少ないと聞いておったのじゃが、今日は多いの。子どもが多いように見受けられるのじゃが、うむ、冒険者の見習いやそのまた見習いの子等ではないかの」

 子ども等のうち幾名かには何となく見覚えがあるのじゃ。

「船底の整備の手伝いの子等ですな。冒険者協会からの仕事の子だけというのが本当ですが、街の子どもが混じって手伝いに来ても受け入れて炊き出しの飯を食わせてやっておるのです」

 街の子ども、は孤児等のことじゃの。なかなかに良いところがあるのじゃ。


「子どもには危なくない、荷物運びやなんかの手伝いしかさせておらんのですが、牡蠣が食べられると聞いてみんなして牡蠣殻に手を出しましてね。大した怪我じゃないのですが牡蠣殻で出来た怪我は傷口が汚くて治りが遅いので一応連れて来たんです」

「牡蠣は美味であるし栄養もあるのじゃ。気持ちは分かるの。しかし怪我には気を付けねばならぬのじゃ」

 冒険者協会の子ども等は、あれミチカさんだ、本物だ、なぞと騒いでおるのじゃがまあ良いのじゃ。

 しかし冒険者協会の子どもの方が少しはましなのじゃがおおよそ汚れた服を着て手の怪我に汚れた布を巻いておるのじゃ。あまりそれは良くはあらぬのじゃ。


「怪我人を待たせるのはなんじゃ、始めるぞい」

「そうじゃの。失礼したのじゃ」

 まあどうせ後の方で癒すゆえおいておいて、先ずはさくさく<治癒>なのじゃ。聞いておったように子ども等を除けば怪我人はそう多くはないのじゃ。確かに荷の上げ下ろしなぞでそんなに怪我人が量産されておっては港の機能が疑われるのじゃ。

「マーティエが牡蠣や他魚介類がお好きなようでしたら次参るときは新鮮なものをお持ちしましょう」

「ほう、それは嬉しいのじゃ。しかし港湾協会とは仕事の幅が広いものなのじゃな」

 <治癒>をしながらもタンクトップおじさんと少々会話もするのじゃ。怪我人等は偉い上司であるタンクトップおじさんがおるゆえ大して喋らぬからの。


「港に関わることにならなんでも首を突っ込むやくざのような奴ばらじゃわい」

 老リーディンの言いようにあまり喋らないと言った怪我人たちが笑いをこぼすのじゃ。

 タンクトップおじさん曰く、積み荷の上げ下ろしや倉庫の管理を行う部門と港湾の設備の整備維持を行う部門が直属で、他に船主組合、造船匠合、修船所管理組合、河川協会、漁業組合と言った組合や匠合を取りまとめておるのじゃそうな。そして王国海軍や総督府、交易商匠合、商業組合と言った相手との折衝仲介取引と確かに港に関わるすべてをその業務としておるとのことなのじゃ。


「まあそのなんでもする協会の理事なんて貧乏籤のようなもんですよ。理事なんて格好を付けていますが元々は親方ですからね」

 初めに港を作るにあたって中心的な存在であった四家系が親方株を持ち運営しておったそうなのじゃ。途中で一家が没落し、港が栄えておることにあわせて新たに三家加え、その際に名前も理事などと格好を付けて、今では六人の理事が運営しておると言うわけなのじゃそうな。

「港を開いた、なぞと言うとそれはマインキョルトを拓いた、と言っても良いのではないのかの」

「そうですね。この城市でもっとも古い家系の一つになります。家の祖は中央からきた船大工で神殿が盛んであった頃はうちの家が信徒総代を務めていたと聞きます」

 タンクトップ姿の変態であるのに立派な由来の旧家の出であるのじゃな。ちょっと嘆息たんそくなのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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