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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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修道会実働開始なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 馬車は帰そうと思っておったのじゃが、マードが馬車停めを教えてくれたゆえ帰りも馬車となったのじゃ。神殿の前が中央広場であった頃は競争率が高く停めることは難しかったそうなのじゃが今は楽勝とのことなのじゃ。

 神殿では前回会わなかったもう一人のマードを紹介されたのじゃ。世俗の話は多少神殿のマナー違反なのじゃが話をしてみるとなんと昨日行った仕立屋のお姑さんだったのじゃ。偶然よの。

 土産の茶菓子でお茶をしつつ尋ねてみたところ、衣裳なぞの流行も中央や西方域から入ってくるものであったゆえ中央から来た商人や職人が主流を立てたそうなのじゃ。あの仕立屋さんもこうやってお姑さんが神殿に奉仕活動に来ておることから解る通り中央から来た縫製職人の裔で、偶然と言うよりは一番いい仕立屋に連れて行ってくれた結果の必然と言うべきなのじゃ。


 茶を喫しながら話しておる食堂には先に来ておったベルゾもおるのじゃ。昨日神殿は休みと言うに尋ねて来て暫しリーディンと話をしていったそうなのじゃ。今はベルゾも法服を街着の上から着込んでおり、なにやら見慣れぬゆえ面白いのじゃ。

 ガントとほか数名の冒険者はここに入り切れぬゆえ閉鎖しておった元孤児院の建物を開けて使えるように片づけながら待機しておるとのことなのじゃ。ベルゾと老リーディンはそう言った手順を昨日のうちに話しておいたのじゃな。

「そう言えば法服の数は足りるのかえ。わらわは己の分を注文したのじゃが」

「ご注文ありがとうございます」

 注文先はこちらのマードのお家であったのじゃ。


「正直、昔聖職者が多かった頃の名残で持て余すほどございます。ものが法服ですのでバラして布地として再利用するのも憚られまして、時折<洗浄>したりアイロンをかけたり陰干ししたりと手をかけておりますよ」

 なるほどなのじゃ。ついでに話が出たついでに朝の疑問をぶつけてみるのじゃ。

「ああ、アイロンのような魔法具はですね、火事を起こした事例があるので多くの城市で禁止されています」

「自分で<加熱>を使う分には構わんじゃろうがな」

「なるほどなのじゃ。得心するほかあらぬのじゃ」

 便利そうなのじゃがな。しかし、おそらくは単純に火事と言うよりは時限式発火の放火装置に使えるという意味ゆえ仕方あらぬのじゃ。

 そして<加熱>を習得するためにバラした魔法具の名が保温板で<加熱>と<保温>の二つの魔法陣を組み込んでおった上に出力が弱かったのは「<加熱>の魔法具ではない」と言う言い訳を立てるためであったのじゃな。

 無駄な納得が得られたのじゃ。


「話は変わるのじゃが、修道会の総長としての印章を作ったゆえ神殿の書類にも登録しておくのじゃ。あと冒険者協会と商業組合からも書類が回ってくるはずなのじゃ」

「ふむ、変わった文様じゃな。なんだこれは?」

 花杏葉はなぎょうようがやはり何か解らぬ文様扱いなのじゃ。いや前世の世界の人も家紋の一種とは解るであろうが、花杏葉はなぎょうようが何かと訊かれても困ると思うのじゃ。

「馬具や馬車につける装飾なのじゃ。旅の加護を祈るものゆえ冒険者にとっても交易商の娘であったわらわにとっても相応しき文様なのじゃ」

 ギルマスにもした適当な説明を述べるのじゃ。そしてわらわはこれに関しては用意して置いたのじゃ。


「ここに実物があるのじゃ。この部分に飾り釘を打って留めるのじゃが、元孤児院の建物を主に使わせて貰うのであらば入り口の扉の上にでも打ち付けるのがよいと思うて持ってきたのじゃ」

 無論、チュロスの口金やクッキーの型抜きと同じで収納空間の空間範囲指定で銅塊から切り抜いたものなのじゃ。己のことながらよくもまあ器用に空間の範囲を弄れるようになったものなのじゃ。

「ほう、なるほど。装飾として馬具や馬車につけるものなのですね。とりあえずお預かりしましょう」

 すぐに付けるのかと思っておったのにベルゾに預かられたのじゃ。


「えーっと、金か銀どちらでしょうか」

「金じゃな。国内唯一と言うことは国内最上位ということじゃ」

 ベルゾと老リーディンのやり取りの意味が分からず尋ねたのじゃ。

「なんなのじゃ?」

「看板と同じですね。鍍金メッキですが金にしなければ格があいません」

「そう言うものなのかえ」

「そう言うもんじゃ」

 面倒なのじゃがそう言うものであれば仕方あらぬのじゃ。


「卵形の枠も作って印章と同じ紋章のものも頼んでおきますね」

「使う機会があるかどうかは解らんが威儀を示すならはたや紋章旗もあった方がいいの」

 はたは儀式、祭事において飾られる縦長の流し旗で、紋章旗は個人や集団の紋章とモットーなぞを刺繍した旗なのじゃ。どちらもがっつり刺繍するものゆえ高価、と言うより騎士団やら修道会やらの本部でなければ置かれないようなものなのじゃ。そうか、修道会の本部であったのじゃ。

「ま、そのあたりは修道会運営が回り出して資金運用もちゃんと回るようなら、で良いのじゃ」

「ミチカの収入の五分が上納される時点でその程度は回ると思います」

 ちょっとだけ否定がしにくいのじゃ。


 そのようなやり取りもしつつ、旧孤児院、いやさもう修道会本部と呼ぶのじゃ。修道会本部へ向かうのじゃ。

 今回は顔通しのほか神殿内のルールについても話すやも知れぬ、と言うことで老リーディン以下神殿メンバーも揃い踏みで向かうのじゃ。

 リーダとベルゾが先触れとして先に向かったのがなにやら興深いのじゃ。リーダは老リーディンの、ベルゾはわらわの先触れなのじゃの。

 何というか、それが礼儀なのであろうが不思議な気分なのじゃ。

 長らく使っておらぬ建物であったようなのじゃが、ガタは来ておっても奇麗なものなのじゃ。そこは<洗浄>様々なのじゃ。


 先触れがあったゆえガント以下集められた冒険者等も皆入り口の小ホールに集合しておるのじゃ。パードとあのときも一緒におったレイデ、ガント等と同じ年頃の若い冒険者が後二人、そして少し年の行ったあまり冒険者に見えない男が二人、結構な人数なのじゃ。

「今日、其方等との出会いにえにしを結ぶ神への感謝を。そして海の神の加護を祈り奉る」

「リーディンの祈りと諸神に感謝と祈りを。そして冬の大神の恩寵を祈り奉る」

 老リーディンとベルゾが神殿風の挨拶を交わすのじゃ。昨日のうちに訊いておったのであろうが、ベルゾめは如才なさすぎるのじゃ。

 ガント以下七名も慌て気味になのじゃがベルゾに併せて挨拶しておるゆえ事前に話は通してあるのじゃろう。


「ガントよ、よく集めて連れて来てくれたものじゃな。感謝するのじゃ」

「いえ、私が連れて来たのはご指名のパード以下こちらの四名ですよ。そちらのお二人はベルゾさんが」

 あまり冒険者風ではない年嵩の二人が前に出て挨拶してくるのじゃ。

「初めまして、マーティエ。我々二人はベルゾの師兄弟です。一応冒険者ですが二人とも錆札持ち、と言う奴ですね」

「よろしく頼むのじゃ」

 錆札持ちとはなんなのじゃ? と言う視線をベルゾに向ければすぐ回答があるのじゃ。まあ便利なのじゃ。

「鉄や青銅の札で昇級せずに暮らす冒険者のことですが、この場合は城市内の昇級査定に関わらないような依頼を主にこなす者を指しますね」


「ベルゾと一緒の師に学びましたが魔術師を名乗るほどの魔力もなければ兼業の戦士として戦うほどの腕もないので城市内で簡単な魔術を使ったり魔漿石や魔法具に魔力を充填したりして暮らしているわけです」

「なので城市内で便利そうな生活魔法にも興味があったので渡りに船という奴ですね」

 なるほど、ある意味堅実な生き方なのじゃ。魔漿石に充填する程度の魔力は必要と言えど需要も尽きず危険もない仕事と言えるのじゃ。

「この二人はそれだけでなく、事務仕事が出来ます。繁忙期には雇われの文官仕事や帳簿係のような仕事をしているのですよ」

「ふむ、それは得難い人材なのじゃ」

 わらわとベルゾはニヤリと笑みを交わすのじゃ。老リーディンも頷いておるの。

 当にわらわ等が欲しかった人材なのじゃ。


 とりあえず軽く説明は受けておったようなのじゃが神殿のルールなぞをリーダに説明して貰うのじゃ。

「えー、私がですかー」

「うむ。其方が規範となるのじゃ。マードもよろしく頼むのじゃ」

 母親の方にも頼んでおくのじゃ。こちらは深く頷いておるのじゃ。

 依頼としての内容や報酬についても話しておくのじゃ。こちらの担当はベルゾなのじゃ。

 生活魔法の伝授は曜日を決めてその日にしかせず、他の日に来た場合は予約を入れて帰す、と言う提案には老リーディン初め神殿組皆がほっとした顔をしておったのじゃ。大分負担じゃったのじゃな。

お読みいただきありがとうございました。

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