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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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甜菜、所謂砂糖大根なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


「茶を入れておらぬものも試して欲しいのじゃ。まあ、茶入りのものは悪くないのじゃが同じ茶と合わせると楽しみが減ずるゆえ茶菓子としては多少微妙かと思うのじゃ」

「いや、画期的な茶葉の使い方ですな。それに美味しいですぞ」

「流石はマーティエですね」

 褒め過ぎなのじゃ。ただ、これまでのこの世界あるいはこの地域でのお菓子の受け様を考えるとお菓子とお茶の店、まあカフェの類じゃの、をやれば成功する気もするのじゃ。

 作り置きの出来るクッキーやパウンドケーキを主にしてじゃの、テイクアウト用の揚げドーナツを店頭で揚げるのもよいのじゃ。


 わらわはやりたいことはやってしまおうという派閥に属すゆえ、商業組合と調理師匠合との話し合い如何ではやってしまおうかの。まあわらわ自身の負担が少ない形で、なのじゃ。

「茶の味のお菓子がおいしいのと同じ理屈で、それ以外の菓子と茶との組み合わせもよいですな」

「うむ、そうであろう。えっへんなのじゃ」

 自慢するわらわにマードやお嫁さんが笑っておるのじゃ。いろいろと考えておる間にクッキーやチュロスを摘まんで二人とも満ち足りた顔をしておるのじゃ。少し疑問を感じたゆえこれまでの甘味について訊くのじゃ。


 ふむ、適当な生地に蜂蜜かジャムがかかったもの、まあ微妙にクレープのようなものなのかの、そんなものが主で他には飴の類が子どもに人気だそうなのじゃ。飴ちゃん? と思ったのじゃが、トフィーアップルっぽいものがあったように水飴状のものがあるのじゃ。その発展なのじゃの。おそらく麦芽糖を甘味に使っておった流れなのじゃ。

「料理でも感じたのじゃが、城市の発展具合と豊かさに比べて料理や菓子と言った文化が追いついておらぬのじゃな」

「左様ですな。城市の発展は目覚ましいものですが中身は追いついておりません。ですのでマーティエのもたらす新奇なものをこの城市のものは喜び重用するかと思いますぞ」


「この茶を入れた菓子を沢山作ることとなったり、店を出して茶が必要になったりしおったらズークさんにお頼みするのじゃ」

「それはもちろん喜んで」

 ズークさんは商人の顔で笑んだのじゃ。

「その礼の先渡しというわけでもないのじゃが、茶のことで二つばかり伝えたいことがあるのじゃ。とは言えわらわのような小娘に商売ものの茶について口を挟まれるのはどうかと思うのであれば」

「是非お聞かせください!」

 食い気味に賛意が得られたのじゃ。まずは熊さんのところで振る舞った焙じ茶についてなのじゃ。


「ふむ、確かに飲みやすいですね。食事をしながら喫するのに向いているというのも納得です」

「茶葉の質を上げるのに葉軸を外しておるならそれを焙じて茎茶にしてもよいのじゃ」

「ほう。なるほど」

 焙じ茶は早速実際に焙じて味見しつつの話なのじゃ。無論重量が見た目より軽いことや味が抜けるゆえ一番煎じだけで終わることなども説明したのじゃ。

「己で焙じることもできるゆえ商売としてはどうかとも思うのじゃが、緑茶自体がその分出るとよいのう」

「その紙を使って少量を焙じるやり方を目の前で行うのはよい趣向になりそうですな。それ以外であればきっと出来合いの焙じ茶があればそちらを買って使うかと。どちらにせよいろんな茶を楽しむ様な人等に広めねばなりませんが」


「私たちが奥様連中に広めて、この人や息子が会合なんかで出すことで商売仲間に広めるのですよ。これならきっと広まります」

「このお茶菓子もそう言うときに使えたらいいんですけど、売り物にはなさらないんですか?」

「それは多少思案しておるのじゃ。売り物とすることがあったらよろしく頼むのじゃ」

 ただのう、うまく行く気もするのじゃが同時に砂糖、卵、バターと言うこの地では高価な素材をふんだんに用いるゆえ価格帯と需要が噛み合わぬ可能性もあるのじゃ。

「その時は協力させて頂きたいですな。砂糖に関しては流通の経路を押さえておりますので是非私どもに」


 ふむ、茶の栽培なぞの生産部門から行っておるズークさんの砂糖とはもしやあれかの、と思いついたゆえ訊いてみるのじゃ。

「甜菜、砂糖大根の栽培でも行っておるのかや?」

 ズークさんが目を見開き驚愕の表情で固まったのじゃ。ああ、これはあれ、またわらわ何かやらかしてしまったかえ? とか言うアレなのじゃ。

「マ、マーティエ。まだ作付面積も狭く、それで誰にも気づかれていないのです。どうか、どうかご内密に」

 わらわの手を取り縋るように言ってきたのじゃ。

「無論、他言する気はないのじゃ。しかし北方諸国群で砂糖の自給ができるなぞ偉業と言ってもよいのではないかえ」

「ええ、それはそう自負しています」


 話を聞くと、西方域との海洋交易では種苗の類は全く扱われぬのじゃそうなのじゃ。後進地である北方諸国群に対する輸出品目を厳しく絞ることで長く利益を得ようと言うまあ納得のいく話ではあるのじゃ。北方諸国群側が不満や反発の感情を持つのも当然であるのじゃがの。

 中央との交易にも同様の禁輸措置が含まれておるのじゃが、中央との陸路交易はもう手仕舞いが見えておるゆえ最後の即金稼ぎに抜け荷に手を出す交易商もおってそう言うルートからいくつかの作物の種や苗、種芋を仕入れたのじゃそうな。今や無用の長物と化しかけておる中央商人との繋がりをズークさんの方も最後に有効活用したと言うわけなのじゃな。

「国が西方域からの圧力で作付け禁止などと言うことがないよう、既成事実として広い規模での栽培と砂糖の精製を始めておきたいのです。無論、要路に事前工作をしておくことも始めておりますが」


「ふむ、そう言う工作で饗応することがあるのであらばその国産糖を使った菓子を準備するのは悪くなく思うのじゃ」

 どちらかと言えば応援したい事業なのじゃ。そして砂糖が潤沢に使えるのであらばわらわの利益も大きいのじゃ。

「確かにマーティエのお菓子はおいしゅうございました。これはどの程度日持ちいたしますかね。むろん、商品として見た場合に、ですが」

「うむ、クッキーの方はかなり持つのじゃ。作る方もそう手間にあらぬし商品として売り出すのは悪くないと思うのじゃ」

 ここから話を多少詰めて合資で菓子の工房を作ろうという方向で話はまとまったのじゃ。

 まずは小規模の工房で職人を育てるのじゃ。これは郊外の農地に甜菜の畑と隣接した砂糖の精製工場があるそうなのじゃは、これに併設する形となったのじゃ。砂糖の増産にあわせて工房も拡大する予定なのじゃが、それまでに新しい職人を教育できる水準まで最初の職人を育てねばならぬと言うことなのじゃ。

 ちなみに姿を見ておらぬ長男さんはそちらの工場の方で情報が漏れぬよう泊まり込みで運営をしておるそうなのじゃ。


「商業組合には菓子の試作をする工房として登録しておきます。ただマーティエの名が入ってる時点で組合長の興味を引きそうですね。組合長の協力もまずは取り付けたいとは思ってますが」

「うむ。合資と言ったのじゃが、いっそ組合長にも出資させれば潰される虞は減じるのではないかの。まあ将来的な損益がわらわには読めぬゆえズークさんに任せるのじゃ」

「そうですね。はい、任せてもらいましょう」

 菓子工房は砂糖精製工場を突貫で増築し、後には工場も工房も大きなものに移設するそうなのじゃ。秘匿性を維持するため職人は甜菜栽培に従事しておる人間やその家族から選んで最初から育てることと相成ったのじゃ。

 これは工房の準備が出来てからゆえわらわの抱える懸案の中では余裕がある部類なのじゃ。


「そろそろ神殿に向かわれるお時間ですよ、マーティエ」

 いつの間にかマードが法服に着替えておるのじゃ。

「もうそんな時間かえ。お茶の話が終わっておらぬゆえ神殿での聖務ののち、また顔を出してもよいかの」

「はい、お待ちしておりますね」

 ズークさんとお嫁さんの見送りを受けて馬車で神殿に向かうのじゃ。歩いてもすぐなのじゃがの。

 そう言えばエインさんの魔法具工房に続いての出資になるのじゃ。まだ口座の預け金はあるとは思うのじゃが一応今度貴族の館や商会の建物から回収した資金の一部も口座に移しておくとしようかの。

 まあそれはよいのじゃ。さて神殿でのお仕事なのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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