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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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エインさんのところでスイーツを作るのじゃ

こんにちは。

二月は過ぎるのがあっという間ですね。


コメントでご指摘の通り、複数の話の筋を同時進行で詰め込んだため混線して展開が遅くなりまくっています。申し訳ありません。自分でもこの章がこんなに長くなるとは、とぐったりしています(街についてこの話で五日目!?)。

申し訳ありませんが、この調子でもうしばらくお付き合い願った後、拠点を構えたあたりで一旦章を閉じて、出来事を一つずつ締めていくスタイルに切り替えたいと考えています。まあ出来る範囲で、ですが。

前書きが長くてこれも申し訳ありません。

ではよろしくお願いします。


「今日は世話になったのじゃ。感謝するのじゃ、エッツェさん」

「ありがとうございました」

「お世話をかけたわー」

「いいえ、こちらこそ。私も楽しかったですよ」

 戻ってきたらまたお茶なのじゃ。エインさんとリーエさんもおってエッツェさんから報告を受けておるのじゃ。

「型紙についての商業組合とのやり取りはそのまま任せてよいのかえ?」

「はい、大丈夫ですよ」

「新しい魔法具工房のことで商業組合とは大分やり取りをしておるところだからの」

 世話をかけておる気もしたのじゃが、魔法具工房はエインさんがやりたがってやっておることなのじゃ。恩に着るほどのこともないの。うむ。


 そう言えば思い出したのじゃ。すっかり忘れておったのじゃが人狼ゲームを売るという話もあったのじゃ。

「ああ、もう作り始めておるぞ。試作品を渡しておこう」

 仕事が速いことなのじゃ。エインさんが持ってきた木の箱を受け取るのじゃ。

「ミチカちゃんの助言を容れて箱に凝ったんだが、出来上がりを見るとそれで良かったと思うだの」

 箱には見事な筆致で『汝は人狼なりや?』のタイトルが入り、人狼をイメージしたシンボルイラストの焼き印も入っておるのじゃ。焼き印は役割決めの札に押すものをそのままこちらにも使っておるのじゃ。


 内容物はルールが木版で印刷された冊子と役割決めのクジに使う札と言うシンプルなものゆえ箱に付加価値を持たせるパッケージ商法は重要なのじゃ。

 それ以前に内容が周知されていない以上外側で勝負なのじゃが。

「うん、格好いい箱。これが人狼なのね」

「あら、話をしていた遊戯ね。面白そうだわ」

 モリエとセイジェさんにも好感触なのじゃ。エインさんと視線を交わし頷き合うのじゃ。

「マインキョルトまで同道した冒険者たちとは遊んだのじゃが、其方等とも遊ぶ日を作らねばの」

 ジーダルパーティは発信力が高そうであるゆえ逃す手はないのじゃ。

「あら、たのしみだわ」


「他に遊ぶものも作りたいのじゃが、なかなか時間が取れぬのじゃ。仮縫いの日にセイジェさんとは会うのじゃからその日にオルン等を伴ってジーダルの部屋をおとなう約束にしておくかの?」

「それでいいわよ。ジーダルとベルには言っておくわ」

「うん、兄さんとガンに言っておけばいいのね」

 ちゃんと日を決めておかねばの。こう言ったあたりで前世のスマホのある生活が如何に恵まれておったかわかるものなのじゃ。

「他、とは何か考えがあるのかの?」

 エインさんはそこが気になるのじゃな。まあ当然かの。


「遊戯の種類をもう二つ三つ増やしたくは思っておるのじゃ。盤上遊戯は盛んであるゆえ種類を増やしても遊ぶものはおろうし、視野を広げてやればわらわ発信ではない新しい遊戯を生み出すものも出てこよう。さすればわらわも新しい遊戯を楽しむことができるのじゃ」

「なるほどのう。確かに雪が積もってきたら家の中で盤上遊戯をしながら過ごすものだからのう。種類があった方が飽きは来んかもだの」

 まあチェスっぽいもの一種で長い間満足しておったのだしの。種類を増やすことに疑問があっても仕方ないのじゃ。しかし遊戯人口は間違いなく多いゆえ後続他社が伸してくる前に充分に売り抜いておくべきなのじゃ。

「この人狼ゲームを作ってもらっておる木工細工師の工房を後で紹介しておくかの?」

「腕はよいのであろうな」

「勿論だの」

 と言うわけで後ほどエインさんに同道してもらい細工師に会いに行くことになったのじゃ。


 細工、で思い出したゆえチュロスの口金やクッキーの型抜きを取り出して同様のものが注文できぬか訊いたのじゃ。

「さっきお土産に持ってきておったチュロスやクッキーを作るときの道具なのじゃ。わらわが使う分はこうしてあるのじゃがの、ギルマスやら商業組合の組合長やらへの差し入れにも使つこうたゆえモリエ用の他にも需要があると思うのじゃ」

「それは数を作れるようにしておくよう言っておいた方が無難だの」

 しかし細かい細工だ、などと見ておるのじゃがとりあえず預けておくのじゃ。<回転>用の刃物などを頼んだときに思い出せば良かったのじゃが二度手間になったと怒っておる風もなく型抜きを見ておるので一安心なのじゃ。


「あのお菓子は大変美味しかったですねえ」

「料理人が感動してましたよ」

 いや、そんな難しい菓子ではないのじゃ。料理人は感動せずにまず模倣、そこから発展させて欲しいのじゃ。

「今日は世話をかけたエッツェさんのために何か甘いものでも作らせてもらおうかの? まあここの卵や砂糖を使わせてもらうのじゃが」

「まあ! 是非お願いしたいわ」

 エッツェさんではなく姑のリーエさんが先んじて反応したのじゃ。

「セイジェさんやモリエも採寸されるのに結構疲れたであろ」

「あはは。そうだね」

「そうね。甘いものが食べたくなるわ」

「無論、卵や砂糖は好きに使ってもらって構わんよ」

 エインさんの許しも出たことだしさっと作るのじゃ。


「そう難しいものは作らぬのじゃ」

 厨房にはいつもの助手のモリエだけでなくリーエさんとエッツェさんも着いてきたのじゃ。そして取り残されるのはいやだと思ったのかセイジェさんもなのじゃ。

 料理人と助手もおるゆえ狭いのじゃ。まあ良いのじゃが。

 では早速、なのじゃ。卵をパカパカと六つぐらい割って卵白卵黄に分けるのじゃ。料理人が卵の量を見て息を飲んだのじゃが、なんだかんだで六人分に料理人たちに味見させる分が必要ゆえ分量は多いのじゃ。

 卵黄、牛乳、砂糖、ひとつまみの塩を<回転>を利用して混ぜるのじゃ。<回転>に関するプレゼンじゃの。

 これには料理人も嫁姑コンビも感心しておるのじゃ。料理人は砂糖の量ごときでため息をつくものではないのじゃ。

 よく混ざったらその卵黄ベースの液を小麦粉に少しずつ入れては混ぜていくのじゃ。


 うむ、よく混ぜたその生地の材料その一は置いておいて、次は卵白に砂糖を加えながらまたも<回転>を駆使してしっかりとしたメレンゲにしてしまうのじゃ。

 本来ならどちらかはモリエにまぜまぜしてもらうところなのじゃが、今回はリーエさんとエッツェさんに<回転>を見せておく為両方ともわらわがやったのじゃ。

 出来上がったメレンゲに生地の材料その一を注ぎながらまた混ぜていくのじゃが、注ぐ役をモリエに頼むのじゃ。

「ミチカは小麦粉にいろんなものをいろんな手順で混ぜるけど、順番とかにも意味があるんだよね?」

「うむ、味だけではのうて食感も大事じゃからの」

 よし、生地ができたゆえフライパンを温めるのじゃ。実際にはと言うか普通は揚げ物をそう行わぬものゆえフライパンではなく単に石窯につっこむ用の厚手の鍋なのじゃがの。


 温めておるうちにドライフルーツの類を刻み、ジャムと合わせて鍋で温めるのじゃ。生の果実があればコンポートにしたのじゃがの。

「折角作って直ぐ食すゆえ温製のものにするのじゃ」

 フライパンが温まってきたゆえバターを投じるのじゃ。

 バターでも料理人が息を飲むのじゃ。貧乏性すぎるのじゃ。

 ベーキングパウダーを使わない薄いパンケーキのようなものが焼き上がる、の寸前にザクザクと細かく裂くのじゃ。一口大に裂いたパンケーキを皿に盛り、砂糖を振って化粧した後ジャムソースを添えて完成なのじゃ。

 生地が多い分二枚目からはモリエに任せるのじゃ。

「添えるのではのうてソースやコンポートを先に上からかけておいて出しても良いのじゃ。その場合は最後の砂糖をもう少し減らしても良いのじゃ、綺麗に見せるためにふっておるものゆえの」

「私が自分で食べる分はそうする」


「高価な砂糖や卵を無駄にすることを恐れるのはわかるのじゃ。しかしやらぬことには成長もしようがないぞえ」

 そう言い添えて真剣に頷く料理人と助手にも取り分けておいた分を渡し、他は自分で皿を持ってテーブルに戻るのじゃ。

 わらわの分をモリエが、エインさんの分をエッツェさんが持ったゆえわらわは手ぶらなのじゃがの。

「おいしそうね。これはなんて呼べばいいのかしら」

 カイザーシュマーレンのようなもの、なのじゃ。わらわも意味なぞよく知らぬゆえ翻訳も出来ぬのじゃ。

 細切りパンケーキの果物のソース添え? 長いのじゃ。

「カイザーシュマーレンというのじゃがこの辺りでは聞き慣れぬ音であろうゆえ好きに呼ぶと良いのじゃ」


「カイザーって冒険者協会の魔物分類で出てくるわね。最上級のものに付いてるわ。それに相応しい美味しさね」

 豚鬼オークの上位種どもの名前はスペイン語っぽさがあったのじゃが、その場合はエンペラドールではないのかの。あれは軍隊ぽい名前だったゆえ貴族っぽい名前は別系列なのかも知れぬのじゃ。

 なんにせよ転移者か転生者の悪戯なのじゃ。

「なるほどそれは中央風なんだの」

「干した果実は酒で戻して生地の方に混ぜるのもよいのじゃ。今回はジャムを使ったのじゃが、生の果実をジャムより緩く煮て添えるのもよいの。まあ、いろいろ試すがよいのじゃ」

 心の中ではシナモンパウダーがあればふる砂糖に混ぜるのじゃが、と付け加えておるのじゃ。


 しゃべってばかりおらぬで食べるのじゃ。お味に関してはパンケーキを砂糖とジャムにまぶして食べているようなものゆえ美味しくないわけがないのじゃ。

 うむ、パンケーキ部分も上出来なのじゃ。一瞬悩んだのじゃがバターを使って良かったのじゃ。パンケーキにはやはりバターなのじゃ。クリームの類を用意して普通のパンケーキも良さそうじゃの。

 ベーキングパウダーがないゆえふんわり厚いのを作るのは難しいであろうがの。

「これは温かいうちに食すものゆえ扱いが少し難しいのじゃが、冬場のおやつとしてはよいと思うのじゃ」

「温かい状態で保存するなら停時箱という魔法具があるだの。魔力消費が大きく一般的じゃないが、対になる効果の魔法陣は相性がいいから経時箱と合わせることが出来るやも、と工房のものが言うとったの」

 ほう、それはバラして祈祷として修得したいものなのじゃ。工房に行った折りには忘れず見せてもらうのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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