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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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衣裳をつくるのじゃ

こんにちは。

いつもありがとうございます。少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


「ああ! 先ほど質問した部分がやっと分かりましたわ。体の曲線に合わせて襞を付けるのですね」

「余り体の曲線を気にせぬ筒状の服であらば完全に平面から作っても問題ないのじゃがの」

 型紙を起こしておると女店主から納得の声が挙がったのじゃ。お針子の面々も群がってきておって大変なのじゃ。

 そんな中作業をしておるとエッツェさんが女店主を人の輪から連れ出したのじゃ。


「ミチカさんはですね、いろんな知識を持たれていて商業組合と取り決めを交わしている方なんです。本人は余りご自分の知識の価値を認識しておられないのですが」

「はい、それは分かりますわ」

 ああ、型紙の技術に関して取り決めを交わした方がいいのじゃな。

「商業組合と縫製師匠合を交えて取り扱いを協議することになると思いますので、知識技術の流出がないようお願いします」

「ええ、勿論ですわ」

 二人はお針子さんたちを見回しながらそう言うたのじゃ。


「ここで型紙の有用性が証明されたらの話なのじゃ」

 ゆえにここで型紙の運用試験をしてもらうのじゃ。

「聞くだけで有用性は納得できましたわ」

「しかしまだ一着も作っておらぬ以上証明されておらぬのじゃ」

 余り調子に乗ってはならぬのじゃ。わらわの型紙、とりあえず間違ってはおらぬと思うのじゃが自信があるわけではないのじゃ。

「わらわは己で繕う方ではないゆえ思い違いや間違いがあらぬとは言えぬのじゃ。実際に繕う其方等がやってみて改善すべきところや修正すべきところを探すのじゃ」


「そうね、採寸をしてしまいましょう。どのような御衣裳にするか話をしながらね」

 わらわたち三人にお針子さんが三、四人ずつついて採寸なのじゃ。エッツェさんは座ってお茶を喫しながらわらわたちの様子を見ておるのじゃ。

 わらわの担当には女店主自らが付いたのじゃが、衣裳の話より型紙の話になるのじゃ。まあ已むを得ぬのじゃ。

「基本の型紙を置いておいて、そこから各人に寸法を調整した型紙を起こすことで似た意匠のものを多々作るときの手間は減らせるのじゃ」

「そうなのですね」

「先ほどの双子用の型紙を元にわらわとモリエのものを型紙に起こしてまた別に注文するゆえそれで得心が行くと思うのじゃ」


「えっ?」

 モリエが採寸されながら自分の名が出たことに疑問を投げてきたのじゃ。

「一着は己で考えてお店の人と相談して注文するがよいのじゃ。もう一着はわらわが注文するのじゃ」

「えーっと」

「双子等に服を誂えてやると言うたのにモリエには誂えぬなどとはいかぬのじゃ。うむ、セイジェさんにも一着考えるのじゃ。但しわらわの考えで頼むゆえ己で注文するものをしっかり頼むのじゃぞ」

「まあ、ありがとう。ほら、モリエちゃん。こう言うときはお礼を言っておけばいいのよ」

 クスクス笑いながらセイジェさんがそう言ってくれたのじゃ。まあこんなことで押し問答は不毛じゃからの。流石大人なのじゃ。

「えーっと、うん、ありがと。ミチカ」

「うむ、それでよいのじゃ。任せておくのじゃ」


 対照を取るために普段通りに一着ずつ誂えてもらい、わらわの注文分が型紙を使ったものにする、ということで話はまとまったのじゃ。

 あ、わらわは法服も一着お願いするのじゃ。修道会の紋章の意匠を刺繍してもらうゆえ一度別の工房へ仕事が回り時間が掛かるそうなのじゃ。仕立ての方は大して手間の掛からぬものなのじゃがの。まあ仕方のないことなのじゃ。

 普通に誂えてもらう分に関しては流行と防寒の両面を考えてふんわりしたブラウスと襞の多いロングスカート、かわいらしい胴衣と言う揃いの上に毛皮のショートコート風の上着を付けたのじゃ。レースの飾り襟や刺繍の入ったリボンのような飾り帯なぞもついておってかわいらしい出来になるはずなのじゃ。


 セイジェさんは色使いについて諭されておるのじゃ。まあ清楚系の色使いは似合わぬのじゃ。淡い色合いを使いたければまあ藤色かの。そうコメントしたらその方向で固まったのじゃ。

 リボンや飾りの部分には濃い紫も配されておるのじゃ。悪くない色気のあるお姉さん風になる予定なのじゃ。

 モリエの注文はシンプルに過ぎたゆえリボンや飾りボタンを追加してもらい、袖や裾にレースや刺繍したリボン帯を縫いつけてもらうことにしたのじゃ。

 ついでに靴のことを訊いてみたら直ぐに職人を呼んでくれると言うことになったのじゃ。行くのではなく来るのかえ。まあ便利なのじゃ。


 靴職人が来るまでお針子さんたちに見られながら型紙起こしの作業なのじゃ。双子等、モリエ、そしてわらわ用の衣裳はディアンドル風にしようと思っておるのじゃ。この手の民族衣裳的なものの方が受け入れられやすい気がしたのじゃ。

 ブラウスはディアンドルらしく襟刳りが深いものと首まで詰めたものとの二着ずつ注文するのじゃ。寒いゆえの。

 どちらとも膨らんだバルーンスリーブで袖口をリボンで止めるのじゃ。

 胴衣はコルセットタイプの丈の短いボディスなのじゃがコルセットタイプの真価はモリエしか発揮できぬであろうの。

 わらわとモリエは長いスカートにレースと刺繍で縁飾りをしたエプロンで一揃いなのじゃ。双子等はショートパンツはおそらく破廉恥扱いゆえキュロットタイプにして素足を丸出しにせぬようリボンを付けた長靴下を準備するのじゃ。

 一応エプロンも付けるがこれも当然キュロットに合わせて短めなのじゃ。

 色の基本はわらわが薄い緑、モリエは水色、双子等は黄色なのじゃ。


 そして問題はセイジェさんの衣裳なのじゃ。

「セイジェさんは格好いいのが似合うと思うのじゃ。ゆえにちょっと男性風の意匠を取り入れてしかしちゃんと女性らしさも前面に出したじゃな、そう言うのを目指してみたいのじゃが」

「よくわからないから好きにしていいわよ。想像できないけど楽しみにしてるから」

「うむ、任せておくのじゃ」

 まあ言質は取ったのじゃ。ギルマスの着ておったようなジュストコール的衣裳にするのじゃ。しかし胴衣はしっかりしたコルセット風にしてお胸を強調すれば立派なものをお持ちのセイジェさんなら女性の武器も前面に出るのじゃ。


「天鵞絨や緞子はあるのかや?」

「そのあたりの布は中央のものが入ってこないと難しいのです」

「ふーむ、仕方ないのじゃ」

 布地から派手にすることは一旦諦めて飾り紐や刺繍による装飾を増量するのじゃ。ジュストコールの前は閉めぬことを前提にベルばら風、あるいは宝塚風に装飾をしっかり付けるとするのじゃ。

 クラヴァットも注文しておかねばの。

 そしてスカートのバージョンとパンツルックのバージョンを作るのじゃが、パンツの方はそう難しくない、と言うか正統なのじゃ。キュロットに膝までの白い絹靴下でいいのじゃが、長靴でもいいであろうの。スカートは装飾を付けたロングスカートで良いとするのじゃ。

 うむ、仮縫いが楽しみなのじゃ。


 すぐにやって来た靴職人に今度は足の採寸をされつつ仮縫いのことなどを話すのじゃ。

 法服以外は三日後に、と言われて少し吃驚なのじゃ。他の仕事を後回しにしてでも直ぐにやりたいんです、と熱弁されては仕方ないのじゃ。

「仮縫いにはサーデとマーセも連れてこないとね」

「うむ。わらわの頼んだ分はおそらく手直しが大分必要なのじゃ。それも踏まえて仮縫いが楽しみなのじゃ」

「ふふ、その型紙では私には分からないからどんな風なのか楽しみにしてるわね」

「楽しみにしておくとよいのじゃ」

 女店主やお針子さん等に挨拶をして、イケメン店員に見送られながら馬車に乗り込んで辞去するのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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