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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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仕立て屋なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 馬車、交易の時の荷馬車ではなく箱馬車なのじゃ。エインさんのお店の馬車に乗って仕立屋さんに向かうのじゃ。

「モリエ、どうしたのじゃ?」

「街中の巡回してる乗り合い馬車じゃなくてこう言った馬車に乗るの初めてなだけ」

「城市が広くなって馬車の需要は増していますが、馬を養うのはそう簡単ではないですからね」

 エッツェさんの言葉でひらめいたのじゃ! <回転>の魔法具を駆動機関に据えた自動、いやさ魔動車とかどうであろうの。……。魔漿石の消費を考えると馬を養うより燃費が悪い気がするゆえこのアイディアは埋めておくのじゃ。


 アイディアを自己解決しておるとあっという間に仕立屋に着いたのじゃ。歩いても何ら問題のあらぬ距離だったのじゃが、馬車で乗り付けて店のものに迎えられて馬車から降りる、と言うシークエンスが必要とされるのであろうの。無駄に見えて案外無駄にあらぬゆえ、わらわもそれなりの場に出るときは宿で馬車を呼んで貰うべきやも知れぬのじゃ。

 品のいいお仕着せを着た若い男の手を借りて馬車を降りるのじゃ。なかなかに見場の良い男ゆえかモリエがまた少し緊張しておるのじゃ。


 丁寧な挨拶を受けながら若い男が開ける扉をくぐって入店なのじゃ。奥の仕立て室はサイズを測ったり試着も行う女の城ゆえ若い男とはここでお別れなのじゃ。本当に案内人程度の役割なのじゃ。

 お金持ちの奥方様に気に入ってもらえる店であることはこの時点で了解されたのじゃが、肝心の仕立ての腕前はどうかの。少し楽しみなのじゃ。

 案内されて入った部屋は美しい布地が大量に飾られておったのじゃ。作業のために広げられたものの他、巻いたり畳まれたりしたものが見やすいように棚に飾られておるのじゃ。なかなかに圧巻なのじゃが、貴族の館やそこそこの商会の蓄えておった高級な布地を収納空間に納めておるわらわには威圧感を受けるほどのことではないのじゃ。


 作業をしておったお針子さんも手を止めて立ち上がり、上品そうなおばさまの女店主と十人ばかりのお針子さんが並んで挨拶をしてくるのじゃ。

 モリエがわらわの服の裾を掴むのはともかくセイジェさんもなのは解せぬのじゃ。

「ようこそ、ニウストラ商会の若奥様。今日はかわいらしいお客様もご一緒ですね」

「よろしく頼みますね。今日お連れしたのはとても大切なお客様ですので重ねてよろしくお願いします」

「勿論でございます。大奥様からもきつく言われておりますので」

 先ずはお茶からつかまつる、と言う作法でもあるのか仕立て部屋に丸テーブルを据えたお茶スペースがあり、そこでお茶なのじゃ。


 入店して直ぐのところも応接スペースがあったのじゃが、おそらくあそこは連れの男を待たせるところなのじゃ。そしてここでは茶を楽しみながら布や衣裳の見本を品評するのじゃろう。

「ね、ねえ。私たち場違いじゃない?」

 そう小声で訊くセイジェさんとこくこくと頷くモリエなのじゃが大丈夫なのじゃ。良い店であれば、の。

「モリエは兎も角なのじゃ、セイジェさんはD級になれば騎士に準じる扱いを受ける名士だと聞いたのじゃ。むしろ扱いが足りぬほどなのじゃ」

 わらわも小声で返しておくのじゃ。

「そんなあ。聞くのと実際は心構えから違うのよ」

 泣き言を言うセイジェさんを見てむしろ自分のペースを取り戻しておるモリエが面白いのじゃ。


 茶はまあ普通なのじゃ。茶葉はまずまず上等なのじゃがの。やはり淹れる人間の腕前はあるものなのじゃ。

「どうかなさいました?」

「い、いやなんでもないのじゃ」

 おっと、微妙な顔を女店主に気取られたのじゃ。

「なんでもないというお顔ではありませんでしたわ。何かお気づきのことがあればお教えして欲しいものです」

 ふむ、軽く扱うわけにいかぬ前提の上とは言え子ども相手に丁寧な対応なのじゃ。ならば応えるべきかの。

「そう言われれば応えるのじゃが、考えてみればわらわ自身の問題である気がするのじゃ。淹れ方で、もう少し美味しくなると感じたのじゃが、この城市で頂いたお茶がお茶問屋のズークさんの御内儀が淹れたものや茶を淹れる専属の職人をおいておるという商業組合の組合長が出してきたものであったゆえそれを基準と考えたのじゃ。しかし、考えてみればそれはわらわが驕っておるの。『鳥籠と熊』亭の茶もなかなか良かったのじゃが」


「ベアのとこも会員制の高級店だからね。そう言う感じではなかったでしょうけど」

 セイジェさんのツッコミなのじゃ。少しは場に慣れてきたのじゃろう。

「確かにそれを基準に比べられますと厳しいですわね」

 まあどうしましょう、と言う風に手を頬に当てて女店主は嘆息したのじゃ。

「充分美味しくあるゆえ問題ないのじゃ。どうしても気になるならば美しい茶を実際に喫したことなく美しい茶を淹れることは難しかろうの」

「そうですわね。お茶を入れる稽古に出すことを考えますわ」

 良い考えなのじゃ。にっこりと女店主と笑顔を交わしこの話はおしまいなのじゃ。


 切り替えて来店した用件である衣裳の誂えの話なのじゃ。先ずは直接的な話ではなく最近のモードの話なぞから悠長に始まるのはこういうお店の決まり事のようなものなのじゃ。

 そう言う買い物に慣れておらぬモリエに緊張が戻り、お洒落に興味はあるセイジェさんはいろいろと学ぼうと話を聞いておるのじゃ。

 わらわも興味深く話を聞くのじゃ。西方域では南方の色鮮やかな鳥の尾羽根を飾った帽子が流行しておるそうなのじゃが、西方域で止まってしまって北方諸国群まで届かないと言った嘆きなぞはわらわ等に直接関係はないのじゃが、交易商の商売には関わる部分らしくエッツェさんは真剣な目をして聞いておったのじゃ。

 そう言えば収納空間に貴族の館から回収した衣裳類もあるのじゃが、そう言う羽根付き帽子もあった気がするのじゃ。こちらまで入らないとは言うものの貴紳の間では先取りしておるものもおるのじゃろうの。


「今日一緒に来なかった者等にも誂えて欲しくての、型紙を起こしてきたのじゃ。頼まれてくれるかの?」

「型紙? とはなんでございましょう?」

 なんと! この地では型紙を使わぬのかや、紙はあるというに。型紙について深く説明するほどの見識は持たぬのじゃが、口に出したものは戻らぬゆえ出してみせるしかないのじゃ。

 がさがさと、これは収納せず定規と共に鞄につっこんでおった型紙を広げるのじゃ。あ、作業台に広げるには踏み台が要るのじゃ。うむ。

「衣裳の設計図なのじゃ。測った寸法から起こしておるゆえこの通りに布を裁断して縫えばできあがるのじゃ。あ、ぴったりで書いておるゆえ縫い代を付ける必要はあるのじゃ」


「衣裳を作るために必要なものが全て書かれているように見えますわね。すばらしいですわ。しかしこの辺りの細かな三角形はいったい?」

 一瞬固まったのじゃが女店主は広げた型紙の線を指でなぞりつつ確かめておるのじゃ。適応力が高いのじゃ。そして好奇心も強いのであろうの。

 服飾業界で生きる者らしい話なのじゃ。

「立体を平面に落としておるゆえひずむ部分なのじゃ。簡単に言えば体の曲線にあわせてギャザーやタックを作る三角なのじゃ」

「この型紙は穴を空けても?」

「切り離しても構わぬのじゃ。双子ゆえ二着頼むことになるのを気を付けてくりゃれなのじゃ」

「これをちゃんと保管しておけば同じ寸法の同じ意匠のものをいくらでも作れるわけですね」


「そう言うことに向いておるのじゃ。出来合いの服を並べるような服屋が商売として成り立つなら役に立つのじゃがの。しかし、普段型紙を用いぬとはのう、立体裁断で作る折りにも紙を使わぬのかえ?」

「立体? いえ、紙は使いませんね」

 よし、モリエで実演なのじゃ。

「モリエよ、こちらに来るのじゃ。モリエの採寸をしながら少し説明するのじゃ」

 普通に採寸もしつつ、紙を押し当てて鋏で切って衣裳のパーツの原型にしていくのじゃ。チョキチョキなのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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