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地回りどもを蹴散らすのじゃ

こんばんは。

本日一回目の更新です(1/2)。



 さっと行こうとするラーリの背中を見て慌てて襟首を掴んだのじゃ。

「さっき渡した短剣じゃがこの場は預かるのじゃ」

「えっ」

「上着の裾を被せておっても短剣を持っておるのが丸わかりなのじゃ」

 腰の後ろに刺していた短剣が吃驚するほど目立っておったのじゃ。

 それに持っておったらそれを使おうとするやも知れぬ。無茶をさせぬよう預かっておいて方がよいのじゃ。先に渡しておったのが判断ミスなのじゃがそこは気にせぬ方向なのじゃ。

「お、おう。じゃあ改めて行ってくるぜ」

 モロバレなのは自分でもよくわかったのか素直に短剣をこちらに寄越して改めて根城に向かう。


 わらわは暗くなっておるので気楽に角から覗くのじゃ。明るいうちも閑散としておると思っておったが、今は明かりが漏れておる建物がクードンの根城しかないと言う理想的状況なのじゃ。

 ラーリが歩哨に話しかけ片方の歩哨とともに中に入る。わらわは息を潜め壁沿いに近づく。考えてみたら対象指定の距離は未検証なのじゃ。試しても良いのじゃが、ここは単純に近づいておくのじゃ。


 危惧した怒声や争いの物音はせず、ラーリを中に残し歩哨だけ戻ってきおったのじゃ。ここでサクサクッと収納なのじゃ。

 歩哨がいなければ根城の直ぐそばで出てくるのを待っておればよいのじゃ。と歩きながら確認するが、歩哨と呼んでみておったがセンチネルではなく当然のようにチンピラ(2)と言うスタックになっておったのじゃ。残念。


「だからゲックさんがクードンさんにすぐ来てくれって行ってたんだ」

 近づいたことで中の物音も少し聞こえる。相手の声までは聞こえぬがあまり上手く行ってないようなのじゃ。ラーリ、演技は下手なのじゃな。

「あーもー! とにかく来てくれって!」

 そうキレ気味に言ってラーリが飛び出して来た。中で捕まる前に出て来たので充分上出来なのじゃ。


「おう、とっ捕まえろ!」

 根城の中からそんな野太い声が飛び、ラーリを追いかけて二人ほどチンピラが飛び出してくる。わらわは手を鳴らしてラーリにこちらへ来るよう合図したのじゃ。

 チンピラは外に歩哨二人もおるつもりだったのであろうがおらぬことに意識が回らぬようでそのままラーリを追いかけてくる。その間抜けどもを収納なのじゃ。

 出て直ぐ収納でないのは建物の中から消えるところが見えぬようにするためなのじゃ。警戒されて裏口とかから逃げられた日にはわらわはどう探せばよいのか判らぬゆえそこら辺は慎重であるべきなのじゃ。


 ラーリはわらわのそばまで走り寄ってから振り向き、追いかけて来た二人がいなくなっておることに何とも言えない顔をしておるのじゃ。そのラーリに預かっておった短剣を渡す。手を鳴らして合図したとき邪魔だったのじゃ。収納しておけば良かったのじゃな、未だ色々慣れておらぬのじゃ。


「なんだ、ガキ一人に逃げられやがったのか?」

 怒鳴り声とともに大柄な男がチンピラを引き連れて出てくる。男はチンピラ達に比べて身なりがよいのじゃ。飾り襟の付いた上着にクラヴァットを締め、詰め物で膨らんだ脛までのズボンにそれと繋がった靴下。細部は違うのじゃが前世の歴史の教科書で見たような服装なのじゃ。

 アーネもこういう金持ちの衣装を見たことはほぼないゆえ興味深いのじゃ。ではなくじゃ。

「ラーリ、これがクードンかえ」

「ああ、そうだ」

 確認は大事なのじゃ。そして確認したので他は気にせず収納で良いのじゃ。


ー三階建て店舗建築を取得。収納空間に収納。三階建て店舗建築|(1)

ーチンピラ三体を取得。収納空間に収納。チンピラ(7)


「おう、なんだ嬢ちゃん。ラーリの仲間の孤児か」

 背後で何が起きておるのか全く気づかぬまま自信満々の態度でクードンが口を開く。四十前くらいであろうか。体つきは昔は確かに冒険者であったのであろうと思わせるしっかりした土台を持っておるのじゃが、その後の生活で大分弛んでおるようなのじゃ。

 金持ちらしい服装をしておるのじゃが身に馴染んだ感がなく、その上近くで見ると刺繍もほつれておったりでなんと言うか下品と言うより物悲しい雰囲気さえするのじゃ。これでチンピラたちやあるいはラーリのような純粋な子どもからはあこがれられる存在なのであろうか。


「ラーリの奴も女にカッコつけたいって年頃だと考えるべきだったのか。グハハ」

 わらわがつい状況に関係ないことを考えておるとクードンが下品な笑い声で笑いはじめ、しかし直ぐにその笑いを引っ込めた。

「女のガキか。コイツがご所望の品かも知れんな。そうなら手間が省ける、殺さずに捕まえろ」

「誰に命じておるのじゃ。能無しを曝す前にまずおのれの状況を把握するがよい」

 もはや存在せぬ手下にそう命じたクードンにわらわは冷笑を浴びせたのじゃ。

 クードンは左右に素早く首を振り手下のチンピラがおらぬことを確認し、焦った表情を一瞬見せるが素早くそれを怒りに染め変える。が、一瞬後何かに気づいたように再度振り返ったのじゃ。二度見、と言うやつなのじゃ。そしてその視線の先にあるのは更地、そう更地なのじゃ。

 己の根城としておった店が、まさに三十秒前までその中におったはずの建物がないのじゃ。呆然としてしまっても仕方がないと同情はするのじゃが、容赦をする気はさらさらないのじゃ。


 呆けた面をしておるクードンとの距離を一気に詰め、踏み込んで下腹部に左のショートアッパー。感触が気持ち悪いのは我慢なのじゃ。潰れた蛙のような声を出してクードンは下腹部を両手で押さえる。つまり頭が下がる。

 わらわは半歩バックステップし、手の届く範囲へと降りてきた顎を右のストレートで打ち抜く。顎を力点としてテコの原理で頭蓋を揺らされたクードンはそのままぶっ倒れたのじゃ。

 ここまでキレイに決まるとは流石に思っておらんかったゆえ、わらわも吃驚なのじゃ。わらわ、強いのじゃ!

 わらわは握り込んでおった丸い小石、そう収納の検証に使った奴じゃ、をポイ捨てしようとして思い直して再度収納しておく。何個もあるのじゃが、まあ投げるのにも使えるしの。


 そして唖然とした表情のラーリに声をかけて気絶したクードンを根城のあった空き地へと引きずったのじゃ。収納空間へ意識を向ければチンピラを解体した時に出た革帯があったゆえ、革帯を展開し念のため後ろ手に縛っておくことにするのじゃ。


 さてと、準備万端で尋問のターンと参るのじゃ。



読んでいただきありがとうございます。

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