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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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冬の話なのじゃ

こんにちは。

VD? 知らない子ですねえ。


今日もよろしくお願いします。


「しかし、よい店であったの」

「おなかいっぱいー」

「いっぱい食べたー」

「こら! 道ばたで踊り出すな」

 双子等がおなかいっぱいの踊りを舞いだしたのをガントが止めておるのじゃ。平和な午後なのじゃ。

「そう言えば思うた程雪は降らぬのじゃな」

 わらわは旅の最初あたりではマインキョルトに着いた頃には冬に入っておるゆえ冬籠もりモードになる覚悟をしておったのじゃ。

 途中でそこまで雪が降ったりしないことを知りはしたのじゃがの。


「風の向きが冬の半ばで変わって後半は積もるよ。海からの風になると雪が降る。その風が吹くようになると沖にはたまに流氷が流れてくる」

「それで船も冬の半ばからはあまり港に出入りしなくなるぞ」

「まあ雪が降らなくても充分寒いけどね」

 今は腹がくちくなっておるゆえそこまでは感じぬがの。などとオルンやモリエと話しながら歩くのじゃ。

「店の類は雪が本格的になる前に閉めちまうところも多いな」

 酒が入って上機嫌なジーダルが先頭を歩いておるのじゃが、そのジーダルが頭だけ振り向きながらそう言っておるのじゃ。確かにそれは気をつけておくべきなのじゃ。


「人の動きが減るし、街道も雪が積もったらまともには動けなくなるから冒険者への依頼も減る。駆け出しはちゃんと冬越しの金を貯めてないなら雪下ろしとかで日銭を稼ぐことになるんだ」

 オルンは去年は雪下ろしなんかをしたけど今年は大丈夫、と言っておるのじゃ。

「ここら辺の話だな。ダンジョンが近くにある場所なら冬の間はダンジョン、と言う冒険者が多いようだぜ。羨ましい話だ」

「ダンジョンはなくても南部だと四腕熊の討伐などの依頼が結構あるようですね。雪の中の討伐はなかなか厳しいですが」

 ジーダルとベルゾはマインキョルト以外の土地の情報をくれたのじゃ。


 四腕熊は冒険者協会の資料室で読んだ資料にあったのじゃが、魔漿石を取り込んで魔物化した熊なのじゃ。ヤーガトウム山脈の麓の深暗の森でよく確認されるらしいのじゃ。イセンキョーの方では聞かなかった魔物ゆえ地域分布の違いがあるのじゃの。

 そしてこの四腕熊は魔物化の影響で冬眠せず徘徊する場合が多いのじゃそうな。確かにそれは討伐依頼が出るのじゃ。

 小鬼ゴブリン豚鬼オークは冬籠もりをするらしいのじゃが、充分な物資を蓄えることが出来ておらず冬に襲撃してくることもあるのでこれも警戒対象なのじゃ。ただ、自滅して凍死した小鬼ゴブリンの死骸が春の雪解けとともに現れることも多いそうなのじゃ。


「雪の中は怖いね。討伐じゃなくて狩りにはたまに行くけど空模様にすごく気を使う。吹雪くと方向を見失うからね」

「けど去年はモリエの獲物がなければ残念な食生活で間違いなかった」

「モリエありがとー」

 双子等がひしっとモリエに抱きついておるのじゃ。

 駆け出し冒険者の生活も大変なのじゃな。いざと言うときあの冒険者酒場で安い食べ物や寝床があることは助けになっておるのじゃろうの。


 そして盤上遊戯なぞの冬の過ごし方の話をしておると、そうか人狼ゲームをしたのはジーダル等とは別れた後じゃったな。今度する約束をしておくのじゃ。エインさんは売るつもりがあるようじゃったし、普及宣伝をしておくのじゃ。

 この辺りではチェスタイプの盤上遊戯が主流、と言うよりそれと子ども向けに駒を落としたものしか知らぬのじゃがコミュニケーションゲームである人狼ゲームが受け入れられたように遊びの土壌は広い気がするのじゃ。

 取り敢えずの準備が簡単で目先の変わるゲームを前世の記憶から幾つか借りてくるとしようかのう。ちょっとばかりやることが詰まりすぎゆえ優先度は低めなのじゃがの。


「商業組合の近くまで行くのじゃったら済まぬがちょっと寄らせて欲しいのじゃ。わざわざ回り道してまで寄る必要はないゆえ近くを通る場合のみじゃの」

 何となく風景から商業組合の近くな気がするのじゃ。

「ああ、目的の店は商業組合の裏手の方になるから近くだぜ」

 うむ、わらわの方向感覚は案外正しいのじゃ。自画自賛なのじゃ。

 市政庁舎の尖塔が近くに建っておるゆえ間違いにくいだけではあるのじゃがの。

「酒も抜けてきて寒くなってきたな。少し急ぐか」

 ジーダルが皮の外套の前を閉じながらそう言うておるのじゃ。皆元気は有り余っておるし良いのではないかの。


「冒険者と兵隊は走るのが仕事って言われてるからかあんまり使わないけど、マインキョルト中の移動には乗り合い馬車が便利よ」

「なるほどのう」

「主要な乗り合い馬車の経路は雪が積もりだしても除雪されます。積雪の度合いがひどいと無理ですけどね」

「乗り合い馬車に付いてるはたの色と馬車停の看板の色が一緒だから乗る場所はそれでわかる。色と行き先を覚えるといい」

 小走りになりながら、街路を走る馬車の種別を教えて貰うのじゃ。御者の鑑札を持っておるオルンは流石に詳しいのじゃ。

「御者の鑑札を持ってんのか。たいしたもんだな」


「それこそ冬を越すのに街中で安全に稼ぐ道を考えた結果です」

 少し照れたようにオルンは言っておるのじゃ。

「そう言う心掛けは重要だわ。無駄なところで危険を冒すような冒険者には重要な仕事は任せられないもの」

「サーデとマーセが私たちの後を追って村から出てきたのがそれこそ見習いの見習いの年齢だったので連れて討伐に行くわけにも行かずオルンに大分負担をかけてしまいました」

「流石は双子の兄貴分なのじゃ。立派な行いよの」

「いや、変に持ち上げるなよ。それに兄貴分って本物の兄貴がそこにいるだろ」

 照れるオルンに皆の笑い声があがったのじゃ。


 しかし、モリエだけは真顔で言い足したのじゃ。

「私は直接知らないんだけど、双子たちが出てきて討伐とかの冒険者らしい仕事ができなかった間にそれまでちょっと仲良くなりかけてた女性の冒険者と自然消滅しちゃったって聞いてる。それ以来そう言う噂がないから妹としては心配」

「そ、それはゆゆしき問題じゃの」

「ほっといてくれ!」

 更なる笑い声があがったのじゃが、わらわは少し気になることがあったゆえモリエに聞いてみたのじゃ。

「直接知らないとは妹には秘密にでもしておったのかえ?」


「違うよ。私は双子たちより後にマインキョルトに出てきたんだよ。だから冒険者としてはサーデとマーセの方が先輩」

 ほう、聞かねば分からぬものじゃの。五人一緒に出てきたと思っておったが年齢差を考えればそうではないのじゃな。

「いえーい、あたしたち先輩」

「モリエは狩人としての見習いをちゃんと終えてるので狩人の正式な鑑札を持ってるんですよ」

「なるほどなのじゃ」

 おっと、いろいろ話しておる間に商業組合に到着なのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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