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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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お茶の時間なのじゃ

こんにちは。

今日もよろしくお願いします。


 うむ、焙じ茶の香ばしさもまた良いものなのじゃ。わらわは焙じ茶を楽しみながら皆を眺めておるのじゃが、なんと言うか優雅な食後のお茶と言うにはちょっと皆食べることに真剣過ぎるのじゃ。

「このお茶も変わってますね。厨房にあったものではないですよね?」

 給仕のハトコさん、リリエレさんという名前は聞いたのじゃがまあ直接は紹介されておらぬゆえ呼びにくいのじゃ、がそう聞いて来たのじゃ。

 蟹グラタンの時は給仕の立場を守り、下がって控えの間で食べて出てきたのじゃがベルゾと商談しておった状況からそのまま座ってお茶をしておるのじゃ。


「緑茶を自分で焙じて焙じ茶にしたものなのじゃ。緑茶はそのクッキーやチュロスの緑茶風味のものを作るのに使ったものと同じなのじゃ」

「そうなのですね」

 そういって緑茶風味のクッキーを手にとって一頻り眺めて、そしてサクリと食べると表情を崩し、慌ててそれを手で隠しておるのじゃ。多少薹が立っておるのじゃが、いやそんな言い方をしたら恐らく同世代のセイジェさんが怖いのじゃ、かわいい美人なのじゃ。

「緑茶はズークさんのところのものじゃな。屋号を確かめておらぬのじゃが。緑茶をこの辺りの名産にしたいようであったのじゃが、道はまだまだ遠そうなのじゃ」


「茶問屋のズーク氏なら商業組合の参議もしている名士で本業は茶問屋だが他にも幅広く手を広げているやり手だぞ」

 熊さんが知っておったらしくそう言ったのじゃ。確かに大した人物ではあるようであったのじゃ。

「先祖がこの辺りに茶の製法を伝えた、なぞと言っておったゆえ老舗の主であることに間違いはないのじゃ。そういった伝統を守りながらさほど評価の高くないこの辺りの茶を新しい緑茶という形で世に出そうという革新的な志もある、なかなかの人物なのじゃ」

 だがのう、と続けたのじゃ。

「緑茶は悪くないのじゃが、今のところ悪くない止まりなのじゃ。製法上の問題に心当たりがあるゆえ今度助言してみるかの」

 よく分からぬ小娘の助言を聞いてくれるかどうかは兎も角としてわらわは美味しいお茶を欲するのじゃ。


「やっぱり単に茶葉を買った店の店主と客と言うだけではないのですね。マインキョルトに来てまだ四日でしたか」

「なにやら忙しすぎるのはわらわだけの所為ではないと思うのじゃ。ズークさんは中央から来たというその先祖の伝統を守っておるゆえ神殿の信徒さんなのじゃ。その繋がりじゃの」

 ベルゾに取り敢えずは反論するのじゃが、ちと忙しすぎる感は自分でも否めぬのじゃ。

「この、茶の風味のちゅろすとくっきーは西方茶も緑茶もどっちも気に入った。美味いな。それは兎も角ギルマスとなんぞ話したりとかで俺たちにも手伝えることやら聞いてた方がいいことはちゃんと言うんだぞ」


「試行錯誤をする暇はなかったゆえ甘みや風味の深さは調整できておらぬのじゃが、茶の風味のクッキーは甘みを抑えた方が男性諸氏の受けはよいかと思っておるのじゃがの」

 ジーダルとベルゾは茶の風味のものが気に入ったようなのじゃ。そしてわらわの言葉に賛意を示しておるのじゃ。熊さんはチーズのクッキーを注意深く食べておるがあれは気に入っておると言うよりチーズの使い方が気になっておるのじゃろう。

「で、思い出したのじゃがギルマスはジーダル等にも声を掛けると言っておったゆえ先にざっくり話をしておくのじゃ」


「なるほど見習いと見習いの見習い、あー長いですね。子どもたち相手の読み書きなどの教室ですか。いい考えだと思いますよ」

「わらわは資料室の資料を自分で読めて依頼票も読めるようになった方が本人等も頼む協会の方も便利であろうと言う程度の考えじゃったのじゃがの。ギルマスは子ども等の扱いを胡散臭い連中から引き剥がす一手にしたいようなのじゃ」

 子ども等相手の教室の話なのじゃ。準備部会を開くときはジーダル等に声を掛けると言っておったゆえの。と言うより発案はわらわとは言え、公式に教室を開くような話であればわらわは抜きでいい気がするのじゃがのう。


「悪くねえが、邪魔をしたがる奴らもいるかも知れねえな。いや、それも踏まえて悪くねえのか。ミチカは悪賢いな、偉いぞ」

「それは褒めておるのかや」

「良いことだとは思うけど、バッジたちを泣かせて改心させたことと言いミチカちゃんちょっと派手に動きすぎじゃないかしら」

 オルン等がセイジェさんの言に賛同するように首をぶんぶん振っておるのじゃ。しかし、やらかすことは大事なのじゃ。

「うーむ、ある程度はやらかしておかねばならぬのじゃ」

「えっ」

 オルンは分からず声を上げたのじゃが、ガントとモリエは何となく分かったようなのじゃ。


「熊さんも途中まではわらわという存在にちょっと困っておったであろう。どう扱えばよいか分からぬゆえ」

「ああ、そうだな」

「わらわがどう言った存在で、なにをやらかすのかを少しぐらい分かっておった方が互いに楽なのじゃ」

 納得しておるものと頭を抱えておるものがおるのじゃが、わらわが快適に過ごしたいと思う以上言葉だけの自重なぞ無為に過ぎぬのじゃ。

「わらわが他の子ども等に混じって船底の蠣殻取りなぞしておってもそれはそれでなにをしでかすか怖いであろ」

「ああそれは絶対にやめてくれ」

 納得が得られて何よりなのじゃ。ああ焙じ茶が、む、全部飲んでしまっておるのじゃ。


「焙じ茶をもう一服喫そうと思うのじゃが、皆もいるかえ?」

「あのっ、焙じ茶の作り方や淹れ方を教えてもらえないかしら」

 ハトコさんがぎゅっと手を握ってわらわの前に来たのじゃ。

「構わぬのじゃ。これはグラタンのルセットなぞとは違うゆえ好きに覚えておくがよいのじゃ」

 緑茶の普及にもなるしの。

「少量であれば紙の上に茶葉を広げて揺すりながら火で炙ればよいのじゃ。燃やさぬように気をつけねばならぬがの。今回のように十人分以上であれば鍋なぞで焙じるのじゃが、底が分厚いものや陶器のものがよいの」

 ハトコさんは真剣に聞いておるのじゃ。まあ難しいことはないゆえ大丈夫なのじゃ。

「しかしにおい移りを考えると専用の焙烙を磁器で誂えるのがお勧めなのじゃ」


 説明しつつ厨房へ移動して実演なのじゃ。

「さて、どれくらい焙じればいいのかは今からやるのを見ておいて出来上がりを覚えておくのじゃ」

「はい、先生」

「私もよく見ておく」

 モリエも見に来ておるのじゃ。

「焙じ茶についてもズークさんと話しておくかの。焙じ茶は焙じ茶の状態で保存しても別段劣化はせぬゆえ売り物にもなるはずなのじゃ。無論、他の茶葉と同様の管理は必要じゃがの」

 よし、これぐらいでいいのじゃ。


「焙じ茶は見た目より軽いゆえ他の茶葉より多い目で淹れるのじゃ。あと風味は抜けやすいゆえ何番も煎じるのには向いておらぬのじゃ。大量に淹れる場合は一気に薬罐や鍋で煮出してもよいと思うがの」

 今回は練習をするゆえ個別で出すのじゃがの。

「確かに二番煎じは味がすごく落ちますね」

 うむ、そう言う実験はしておくべきなのじゃ。

「焙じ茶は香ばしさはあるのじゃが、元の茶葉に比べて渋みや苦みが少ないすっきりとした飲み口なのじゃ。ゆえに茶に慣れておらぬものに出すのにもよく、食事をしながら飲むのにも適しておるのじゃ」


「確かに飲みやすいね」

「お酒を嗜まれないお客様に出すのによいですね。昼に営業している店では特に」

「まあ、これも甘くして飲みたいならそれもよいとは思うのじゃ」

 前世では焙じ茶ラテなぞもありはしたゆえの。うむ。そう言えばティーラテもよいのじゃがコーヒーはないのかのう。コーヒー豆も捜し物リストに加えておくのじゃ。

「渋みがないので甘くなり過ぎる気がしますね。調節次第でしょうけど」

「そうじゃの」

 ハトコさんはなかなか鋭いのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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