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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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給仕のお姉さんがすごい勢いなのじゃ

アニバーサリーな回をなんとなく過ぎて通常営業です。

今日もよろしくお願いします。


「お待たせしたのじゃ! さて、ベルゾよ。心して食べるがよいのじゃ」

 焼けたチーズの下でぐつぐつと言っておるベシャメルソースが全力で自分が美味しいことを主張しておるのじゃ。うむうむ、今すぐに美味しく食べてやろうほどに、待っておるがよいのじゃ。

 熱々の蟹グラタン上にパセリを散らせて、各自の前に配膳なのじゃ。

「これは……、先ほどの蟹のチーズ焼き、とはまた違った香りがしますね」

 似た見た目ながら随分と違うゆえ驚くがよいのじゃ。

「これは蟹グラタンなのじゃ! 食べてみるが良い、と言いたいところなのじゃがソースが熱いゆえ火傷に気をつけて食べるのじゃ」


 さて、わらわも食べるのじゃ。あっとその前になのじゃ。

「こちらは給仕をしてくれておるお姉さんの分なのじゃ。よければ食べて欲しいのじゃが」

「まあ、私にもですか。ありがとうございます」

 このお姉さん、熊さんがわらわに厨房を貸すと言ったとき一瞬凄い目で熊さんを睨んでおったのじゃ。ゆえにおそらく、通常と違う時間でも給仕のために出勤してきたただの給仕の人ではなく調理か経営に関わる人なのじゃ。紹介はされなかったのじゃが奥さんかも知れぬの。

 わらわではなく熊さんを睨んでおったゆえ放っておいても良かったのじゃがまあ熊さん共々このひと皿で納得せしめてみせるのじゃ。


「では早速」

 熊さんの声が合図となって皆食べ始めたのじゃ。

「あふっ!」

「あひっ!」

 双子等は人の話を聞かぬゆえ困ったものなのじゃ。ほれ、水なのじゃ。

「熱いけど美味しいよ!」

「美味しいけど熱いよ、ミチカちゃん!」

「其方等はもう少し落ち着いて食べるのじゃ」

 双子等以外は皆黙々と食べておるのじゃ。

 わらわもふうふうと息を吹きかけ食べるとするのじゃ。うむ、色々と足りぬが蟹グラタンなのじゃ。幸せじゃの。

 マカロニではなくラザニアっぽいパスタなのじゃがこれもなめらかで美味しいのじゃ。この店の厨房にあったものなのじゃが、質がよいようじゃの。


「もうちょっと準備して作ればもう少し完成度が上げられるのじゃが、まあ今日はこの程度なのじゃ」

「驚くほど美味かったがもう少し量が欲しいな」

 ジーダルには蟹の甲羅の器では小さかったようじゃの。

「あれだけ食べておってまだそんな感想が出てくるとはあきれ果てるのじゃ。まあ器は大きくも出来たのじゃが今回は蟹のチーズ焼きに似せておるのも調理のうちゆえの」

「ひどいです、ミチカ」

「どうしたのじゃ」

「私は今まであの蟹のチーズ焼きが最高の美味と思ってきたのにこれからいったいどうしたら。嗚呼っ!」


 お、大仰なのじゃ。

「して、賭けの結果はどうじゃの」

「聞く必要があるとは思えませんが私の負けですよ。はあ」

 ベルゾは美味しいものを食べて落ち込んでいるという不思議な状態で面白いのじゃ。

「俺も負けた気分だ。あれだ、その、いや」

 熊さんはなにやら悩んでおるのじゃが、おそらく訊きたいがプロとして他人のルセットを軽々しくは訊けぬとかそう言うことなのじゃ。


「商業組合の組合長とはルセットを売る話なぞを少ししておるのじゃが、別段他に売らぬなぞとは約しておらぬのじゃ。が、これに関してはそれ以前の話なのじゃ」

「それ以前、とは?」

 突っ伏しておったベルゾが顔だけ上げて訊くのじゃ。なにやら面白いのじゃ。

「この料理をベルゾの報酬とする、と言うた筈なのじゃが? 熊さんがもし店でこの蟹グラタン、まあ蟹以外にも応用はいくらでも利くゆえグラタンと言うべきかの、これを出したいと思うならベルゾと交渉すればよいのじゃ」


「ええっ、そんな話聞いて、いや確かに聞きましたがそんな話だとは」

 ベルゾが流石に完全に起きあがってアタフタしておるのじゃが、そこに給仕のお姉さんが凄い勢いで駆け込みベルゾの手を握ったのじゃ。

「そう言うことはともかく、条件面の摺り合わせをしましょう。オ、ベアルも店で出したいんでしょう」

「お、おう」

 お姉さんは控え室に下がって食べて出てきたのじゃが凄く気に入っていたようなのじゃ。しかしむしろイニシアチヴをもっておるのがお姉さんなのじゃな。

「えっとね、彼女はベアの親族で、大伯父の孫ってハトコでいいのかしら。それよ。その大伯父さんは調理人匠合の匠合長をやっているわ」

 セイジェさんがわらわの疑問を察して説明してくれたのじゃ。なるほどなのじゃ。


「ベアルは鑑札を更新するときにベアルで出したから本名というのも変だけど、元の名前はオルンなのよ」

 オルンを見ながらくすくすと笑うのじゃ。まあよくある名前だからの。

「で、彼女の名前はリリエレなの」

 感想は口に出さぬことにするのじゃ。オルンとリリエレは『オルンと氷の魔竜』と言うこの辺りでは人気のある英雄譚の主人公とその恋人の名前なのじゃ。人気ゆえどちらもよくある名前なのじゃが、この場合は許嫁のようなものであったと見るべきじゃろうの。

 ベアルが家を飛び出して冒険者になった理由や今店を一緒にやっておる関係性なぞいろいろあるのじゃろうの。


 子どもがくちばしを突っ込むようなことでもないゆえ心の中の野次馬さんは厩舎に戻すのじゃ。野次馬はくちばしをもっておるのじゃな、グリフォンとかの類であるのじゃ。

 どうでもいいゆえ取り扱いのわらわに関する部分だけ終わらせておくのじゃ。

「では後でルセットを書いてベルゾに渡すのじゃ。但し、じゃ、もう少し準備すればより美味しくなると言うた部分は書かぬのじゃ。其方にも楽しみを残してやらねばならぬゆえの」

「おう。工夫は自分でやるさ。さてベル、お前もこの店で食えるようになった方がありがたいだろ」

「一族で経営しているお店で出せる契約で」


 二方向から攻め立てられるベルゾは放っておいてもう一品の完成とスイーツ作りと行くのじゃ。

「では話がまだあるであろうゆえもう少し厨房を使わせてもらうぞえ。油も少々使わせてもらうのじゃ。あ、すまぬのじゃが小麦粉と砂糖はジーダルではなくわらわに請求するよう頼むのじゃ」

「ん、どういうことだ?」

「この前のチュロスのような菓子を作るつもりなのじゃが、ギルマスと執務室におった秘書や事務員に差し入れしたゆえおそらくまた必要となるのじゃ。そのために取り分けて持って帰るつもりがあるゆえこれは自分で出すのじゃ」


「それなら私たちが持ち帰る分も作ってくれるなら私が出すわー」

「小麦粉と砂糖、蜂蜜を相当に使うことになるのじゃが熊さんが構わぬのならわらわに異存はないのじゃ」

「構わないぞ。俺たちにも食べさせてくれるんだろ」

「それは当然なのじゃ。オルン等は買い物に行くのが多少遅くなるが構わぬかの?」

「チュロスがあるなら大歓迎ー!」

「チュロスの踊りを踊るよー!」

 構わぬ様なのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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